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心頭滅却すれば火もまたスズシ

わるあがきはじめました。

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2013-05-14 23:35:40 

 

その夜とてもキレイな三日月だった。

 

僕は助手席から夜の首都高とやらを眺めていた。

 

「ひゃっほーレインボーブリッジ」

「見て見て東京タワーきれい」

 

なんて友だちの声。

僕もなんだかわくわくしていた。

 

それを見てしまうまでは。

 

一度そう見えるともうそれにしか見えないもので。

 

 

僕はすぐに言った。

あれ(ら)が、今にも、動き出しそうだと。

 

当然、いや、僕としては意外なのだが、信じてもらえなかった。

あぁ、平和ボケも来る所まで来たらしい。

 

あれは

ただのキラキラした夜景ではない。

無数のビルが成す東京の夜ではない。

 

この狭い東京にひっそりと身を潜める、

それはそれはおびただしい数の、

化け物だった。

 

夜景で片付けるなかれ。

建物だと油断するなかれ。

建物(だと君らが信じている化け物)の1つ1つ、

 

その、1つ1つ

目が(ちゃんと)光っているのだ。

表情も変える。

もちろん歯もある。

鼻の穴があるのは、ちと意外だったが。

 

どうしようもない巨大な化け物たちが

東京の闇で蠢いていた。

 

狙いは分からない。

侵略か、征服か、東京とプロレスごっこか、

はたまた、

友好か、外交か、東京とだるまさんが転んだか。

 

なぜ信じない。

信じようともしてくれない。

 

仮に建物だとしよう。

したら説明してくれ

人間というちっぽけな存在が

あんな巨大な建物を

あんな無数に作れる

マカフシギを。

奴らは日々巨大化し増殖さえしているというのに。

 

化け物の中には

もう食べられてしまった人間がたくさんいる。

食べられたことに気づかず、内としての安心を得ながら。

 

屋上の赤く点滅する光が、違和感のそもそもだった。

「ヘリコプターがぶつからないようにするためだお」

んなアホな。

実際の化け物を見てしまってからは、子供だましにしか聞こえない。

 

あれは連絡機だ。

いつ動き出すか、化け物どうしで作戦を立てているのだ

 

「決行は2週間後だ、いいな」

「分かった、まずは俺がレインボーブリッジに倒れ掛かろう」

「そんなチャイチーことしないで一思いに暴れれば」

「しっ、あそこの人間がこっちを見ているぞ。」

 

それは、ちょうどレインボーブリッジを渡り終える時

化け物の一頭が、こちらに笑いかけてきた。

 

 

その夜とてもキレイな三日月だった