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心頭滅却すれば火もまたスズシ

わるあがきはじめました。

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2013-06-19 22:22:01 

 

あぁ、我が運命よ。

からしは、天を見上げた。

そのリアクションが、わさびと、全く同じだったので、僕はレジを打ちながらひひひと笑った。

 

 

ライバルという言葉は彼らのためにあるのかもしれない。

からしとわさびは永遠のライバルであった。

例えるなら

からしは真央ちゃん、わさびはキムヨナだ。

いや待て、キムヨナは韓国だからそうするとキムチっぽいな、却下。

 

からしは佑ちゃんでわさびはマー君だ。

そう言うとからしは

「プロになってからはへなちょこじゃないか」と怒ったが。

 

絶対に負けられない戦いが、スーパー1階調味料コーナーにはあった。

からしは、からしのじいちゃんが、わさびのじいちゃんと必死に戦っていたのをぼんやりと覚えている。

それこそ、からしの父ちゃんと、わさびの父ちゃんのやりあいは

間近で、はらはらして、勝っても負けても目に涙を浮かべて、見てきた。

 

どちらが先に売れるか、どちらが人気か、

じいちゃんや父ちゃんはそう争っていた。が、

そうした一戦一戦の勝ち負けは、からしには、小さく見えた。

 

これからの、合理的、効率的な社会

ゆくゆくは売り場スペースの縮小から

どちらかが完全に消されるかもしれない。

勝った買われた負けた残ったは、たかがなのだ。

もっと革新的な挑戦をしなければ…

とからしは焦っていた。

 

付加価値。からしは閃いた。

からしがからしであるために、価値続けなきゃならない。

とからしが口ずさむ、閉店後の午前1時。

 

からしは自分の持ち場を、そっと、離れ、ある品に、そうっと、忍び込んだのだ。

 

やってくる開店時間。

やってくるおばさんという消費者が、自分の潜入した品を手に取る。勝利宣言だ。

からしは、昨晩、『冷やし中華』に潜り込んだのだった。

 

しかし、買物かごの中で勝ち誇る、からしが、落胆するのに時間はかからなかった。

これからの季節、これからのニーズを的確に読んだのは、わさびも同じだった。

 

 

「ひひひ、こちら『冷やし中華』と『とろろそば』で600円でございます。」