心頭滅却すれば火もまたスズシ

わるあがきはじめました。

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2013-08-20 19:44:34 

 

個性は

レッテルだ。はっつけろ。

サブリミナルだ。くりかえせ。

 

小4にしてありがたくも押し付けられた個性。

総合の時間のお話。

 

 

ステップ1、クラス全員に自分のいいところを書いてもらい、実際に披露。

 

最も多かった長所が、そいつの一番いいところ。

そして僕は、「おもしろい」を貼られた。

クラスでの存在意義を認められ、嬉しかったのは正直なとこだけど、

なんと、マーブーも「おもしろい」を貼られていた。

 

マーブーは別に、というかくそ静かでシャイな、なんならとんでもオモシロくない野球部の友だち。

僕とマーブーの共通項から考えるに、

どうやら、野球部に入っているがレギュラーではないやつが「おもしろい」を貼られるらしい。

レギュラーのヤツは当然「野球が上手い」。

これは当時相当にシャクだった。

おもしろいの価値観の低さに、腹が立った。

 

しかし発表は義務だったので、マーブーと当時流行っていたホリケンサイズを元にネタをした。

普段大人しいマーブーが少し腰を振るだけで、ドッとなった。

終演後「マーブーおもしろい」の声が絶えなかったが、本を書いたのは、私だ。

 

 

ステップ2、個性ごとに学年全体で集まり、全員の前で実際に披露する。

 

例えば、

各クラスの「野球が上手い」やつらは一同に会し、

みんなの前で披露するために、どう俺たちのプレーを魅せようかと、準備をする。

発表会まで2ヶ月くらいか、

それまで総合の時間で、それぞれの「個性」ごとに集まって会議をする。

 

「ピアノが上手い」子はピアノを披露するし、

「頭がいい」子はモノシリ自慢をする。

それこそ「優しい」子は一苦労だっただろう。

どんな発表だったか覚えてないけど、

生き物を可愛がったり、

うちらクラスのために頑張ってますよ優しいでしょアピールをしたり、したのだろうか。

 

余計なお世話だ。

クラスメイトが、自分をどんな風に見てくれているか、を知るのは大事だが

わざわざ寄せ集めて、振りかざさせるしんどさ。

 

そもそも押し付け貼られた「個性」

心理学で言うならばピグマリオン効果だろうか。

期待に応えようとする傾向、

そりゃ小学生「あなたは面白い」と言われちゃったら、面白い人間でいようとするもの。

 

だからレッテル、サブリミナル。

そうして今の僕がいる。

 

 

話を戻す。

各クラスから集められた「おもしろい」やつが「おもしろい」発表をする。

なんて恐ろしいイベントなのだ…。

そんでもって各クラスの「おもしろい」代表がまた、まぁサエナイ。

小4はまだ、いじるいじられるの力関係すらなかったから、小学生の「おもしろい」はつくづく当てにならない。

酷いと分かってあえて言うなら、他に目立ったトリエがないやつらに僕は絶望した。

 

クラスでの発表ならマーブーと2人で、ホリケンサイズを踊れば済む。

しかし、今度は10人ちょいの「おもしろい」とされてしまった「おもしろそうではない」人たちを抱えている。

この後の学生生活を見ても、この時ほど「総合の時間」が恐ろしかったことはない。

そもそもが、「総合の時間」て。

 

 

2ヵ月後、発表の時が来た。

「野球が上手い」連中はグラウンドで、もうめっちゃくちゃにイキってた。

それを野球部以外の学年のみんなと眺めている、野球部の僕とマーブーには地獄だった。

え、なんで君たちは今見てる側なの?という視線が痛かった。

本当に「個性」は酷だ。

 

外コマの後、体育館のステージ。

学年全員150人以上の前で、

僕ら「おもしろい」人達は、

ポケモンの長尺のコントをやった。

僕が全部、書いた。

 

黒歴史なもんでほぼ覚えていないけど、みんなからの感想ペーパーに

「おもしろかったよ~!ツルピカチュウ最高!!」

と書いてあったので、まぁそういうことだ。

僕も「おもしろい」を錯覚してたんだ。

 

途中マーブーが照れ隠しで舞台に顔真っ赤にしてニヤついて登場してきたので

「お前何ヘラヘラしてんだよ!」とアドリブを入れたが

あれが人生で最初のツッコミっぽいツッコミだったのかもしれない。

 

人生初マワシは、意外と、ウケた。

爆笑とか笑いの量とかってよりも、「おもしろい」を貼っつけた人間って強いなと思った。

先生達は、みんな違ってみんないい、ってことを伝えたかったのだろうけど、

一見サエナイ人にも話を振って活かそうとしてみることの大切さみたいなものを、僕は勝手に学んだ。

 

 

こないだ帰省して、自部屋、引き出し

みんなからの感想ペーパーが大事に保管されて残っていて、ね。

今まで僕に少しでも「おもしろい」って言ってくれた人、ありがとう。というお話。