心頭滅却すれば火もまたスズシ

わるあがきはじめました。

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四半世紀連れてきた面の皮を眺めていると、もう間違いない確信する。近づいていくのかくるのか、彼の存在。

そう。年々、平井堅に似ていく。

 

気づいたのは14。それ以前から似てるかもなとは思っていたが、小学生にとっての彼はそこまでヒーローではないのでそっとして。母姉の前でだけ、たまに『瞳をとじて』いた。

 

気づかせてくれたのは中3クラスの美人ヤンキー。思春期真っ只中のヤキューブボーズは、女の子の目を見て話せるなんてまぁなく、加えて先方不良少女。ご近所の席で勝手に恐れていた僕に「ほっしーって平井堅に似てるよね」と話しかけてくれた。イノベーターである。横で取り巻きも「たしかに」って続いてくれてこちらはアーリーアダプター

我が家ではすでに感づいていたことでも、そこで「あぁ、知ってる」なんて冷めて返したら僕の学園生活はそこで一瞬でtheEND。諦めなくても試合終了です。さも初めて聞いたかのようなド新鮮なリアクションで「おお?平井堅!?まじか!いや、まじですか!え、こう?こんな感じ?こんな感じでしょうか?」って表情を寄せた。ウケた。That's命拾い。

 

それからの日々はおれがあいつで、あいつがおれで。給食の時間に『POP STAR』が流れると数人が僕を見る。初めのうちはいや、違う違う俺じゃないよ!で成立していたが、だんだん飽きがくる。これは、、、踊れなければならない。恋ダンス以上にマストで覚えなければならない。あのサングラスしたアフロの男性のステップを。なんかクマの着ぐるみとか出てくるあのMVを。そうなったらもう、めちゃくちゃCDを聞く。MVを見る。フリを覚える。骨格が似てるのか、実は声も似てるぞと気づいたのはこの頃で。

 

芸は身を助く。

ガクセイでもシャカイ人でも、カラオケに行くといつの間にか『POP STAR』が入れられていて、全力で応えることで僕はいつもコミュニティに受け入れられてきた。たまに本当にファンの人がいて「もうちょい肺活量鍛えるといいよ」とガチでアドバイスをくれたりした。引き続き精進いたします。

実はここだけの話、ホントは僕は『君の好きなとこ』という、恋に落ちた盲目っぷりがチャーミングな一曲が好きなのだ。でも「え、まだモノマネやんの?もういいよ。」という空気感が怖くて、泣く泣くデンモクを手放したことも少なくない。

 

恋愛において単純接触は大きな効果をもたらす。

僕にとっての平井堅もまさにそうで次第にファンになっていった。僕が大学1年の頃には、なんと平井堅がクマモトに来るぞということで、何の気を利かせたのか母がチケットを取り、友人といざ、ご本人!

会場に着くとさすが堅様、年齢層の高いおばちゃま人気が高い。レストランでカレーを食べていたら、周りおばちゃまばかり、僕らのようなガクセイはいないなーと思っていたら、どうもむこうの方のおばちゃま数人がざわざわしている。明らかに僕を指さしたりもしている。これは給食時間に平井堅の曲が流れてきたときの視線と全く同じだ。そのうち意を決した一人の勇敢なおばちゃまが近づいてきて、写真を撮ってくれと声をかけられた。イノベーターである。本物のファンに認められた瞬間、光栄なこと極まりない。いざ隣に並んで、僕も僕で少しでもそれっぽく表情を寄せてみたら「いやそういうのはいいから」と制された。鬼くそ恥ずかしかった。「息子に送っとくわ~」と言って去っていたおばちゃまを見て、息子も困るだろうなと思った。それに続くおばちゃまはいなかった。

 

参考までに彼の卒アルも載せておくが、もうこれを見て察してほしいところである。

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40を越えて、果たして様々なお噂は本当なのだろうか。

これからも彼が新曲を出す度に真っ先に覚えて、いつでも応えられるようにしてゆく。

 

さて、似ているフシギ。

その他、言われて嬉しかったのは、速水もこみち氏だったり元KAT-TUNの田口氏だったり。いずれも本物のファンが止めて二度と言わないで口に布地詰めるよと言いだしそうなレベルなので、えぇ!?それほら多分恋じゃない?盲目って言うし。そうそう平井堅にもちょうどそういう盲目の曲があってね。ってなんとか話を戻す。

 

もう一人、どうしようもなく似ている人物がいる。母親だ。

魔女みたいな鼻の形をはじめ、授業参観での親当て神経衰弱はレベル1初級編。加えて性格もまぁこんなんで、僕が二十歳の誕生日には、家族からメールが届いて姉「がんばれよ」親父「がんばりすぎるなよ」母「あんたが生まれるとき、うんこかと思った」といった具合にエピソードトークには事欠かない。

 

ところが一昨年くらい、前橋の叔母の家。親父のガクセイ時代の写真を見て驚愕した。僕とあまりに瓜二つだった。今でこそMax90キロに迫るような大男が、学生時代はひょろっひょろで笑った顔まんま僕。彼もまた平井堅のそっくりさんだったのだ。いや、時系列的には親父←(似ている)平井堅←(似ている)僕なのかもしれないが。

昔っから群馬の親戚なりが「お父さんにそっくりだな」と声をかけてきたワケがようやく分かった。物静かで、本の虫で、真面目で、我慢強いという彼の特徴は、見事に僕が持ち合わせてないものばかりなのだけど、僕みたいな親父が写っていて、親父を見てこうなっていくのかと思いながら、血の繋がりを確かに感じる。

 

親父もまた子どもの頃は体が弱くて、そこもまた似ている。聞けば中学の時に大手術をしたらしい。そういや赤ずきんの狼のようにお腹を真っ二つに開いた跡があったっけ。今年、肺気胸をやってみて、親子そろってメスの入った体か、やれやれだよって、ヘンに安心する。ちなみに親父、その中学の入院時代にアタマが良すぎて、通っていた院内学級でハブられていたらしい。そんなことあんのって笑っちゃうんだけど、病人が嫉妬するくらいの地頭の良さと彼のマジメさがよく表れた、好きなエピソードの一つである。

 

運命の実話・家族の絆特番みたいなので「タカシ。今まで黙っていたが実はお前は父さんと母さんの子じゃないんだ」「いや、僕の本当の父さんは父さんだけさ!」っていう感動再現シーンが流れる度、いつも母は決まって「よかったね~あんたは母さんたち以外に親いないって一発で分かるもんね~」って言ってた。

はいはい、うるさいよだからなんだよ。なんて雑に返していたけれど、すげぇとんでもなく有難いことだなって、言葉じゃなくて理解している。

 

おかげ様で25歳。

男は40になったら自分の顔に責任を持て。なんて言うけれど、25なりにその覚悟の端っこは持っていたい。

できるだけ目尻が下がって、口角が上がるような日々を。どうかこれ以上オモナガにはならないことを願って。

そっくりさんである親父、母、そして平井堅に恥じないように。

25歳、何卒よろしくお願い申し上げます。