心頭滅却すれば火もまたスズシ

わるあがきはじめました。

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「幸せに向かってるはずなのに、その途中が不幸せだったらそれって果たして幸せって言えるんですか!?」って、こないだ年下の、同じ業界に身を置く女の子が言ってた。

「あたしは人生、ずっと、いついかなる時も、どの一瞬を切り取っても、幸せでいたいんです!」って酔っ払って言ってた。

 

仕事がうまくいかないらしい。第一声そんなこともあるよって言おうとしてやめとく。分かりやすく壁にぶつかっているその子を見て、1年前おそらく僕も分かりやすく壁にぶつかってたっけって思い返してそう言えば、肺に穴あけてたから何も言えない。どう克服したかなんて分からないし、克服したのかも分からないから何も言わない。何というか元気で笑ってくれてたら嬉しいなって、無責任に思ってる。応援してる。

「酔っ払ってぱっぱらぱーになるのは好きなんですけど、二日酔いになるのがきつくて。あ、でも知ってます?二日酔いにならない食べ物、これです!」ってカバンからラムネ取り出して食べ始めた。2件目のお洒落なバーでぽりぽり食べ始めた。「含まれてるブドウ糖の量から、森永のやつが一番いいんです!」って僕のお皿にも数粒くれた。愛(いと)しいなって思った。「あと実は、今まで黙ってたんですけど、長く付き合ってる彼氏がいるんです。」って報告してくれた。愛(かな)しいなって思った。何というか元気で笑ってくれてたら嬉しいなって、無責任に思ってる。「歌って踊れなくてもいい。誰かの明日を元気にできれば、それはもう誰かのアイドル。」ってミスiDのコピーを頭でなぞる。応援してる。

 

そろそろモテナイ君の企画に出られそうなくらい、どうしようもなくモテナイ人生だなって思いながらも後日、あの子の言葉をじゅんぐりじゅんぐり。すぐ惚れてすぐ影響される自分の心に手を当てて、今幸せかって問い質す。「一瞬も一生も美しく」っていう素晴らしい資生堂さんのコピーも参照しながら。たしかに僕の日常もパッとはしていない。言わないだけで、何も成し遂げていない1日も多い。すれ違う女子高生に「あーうちらもあんな風に社畜になんのかなー」「ちょ、やめなって聞こえるって」なんて言われたこともある。言わないだけで、それでも負けないぞって思ってる。

 

例えば、どんな発明家でも成功するまでは失敗してる。iモードの生みの親夏野さんも、ミドリムシビジネスをはじめるも500社に資金援助を断られた出雲さんも、チリンチリンに辿り着くまでのチュートリアルさんだって、やり続けたから当たったのかもしれない。「リボルバー理論」という言葉を会社の上司がよく話してくれるんだけど、要は弾は1発必ず入っていて早く出るか遅く出るかの差だと。だから出るのを信じて撃ち続ける。できる限り速度を上げて。

今一緒に仕事をさせていただいているレジェンドクリエイターの方も「3年、5年、10年ってのはやっぱあるよ。」って笑って話されるんだけど、3年、5年、10年を毎日あがいてあれこれやった結果のそれでもかそれゆえか3年、5年、10年だと思う。後から笑って振り返れるカッコヨサに憧れながら、僕ら若手の不安は尽きないモテナイ。

 

ヒントになるかなこないだの朝刊に、星新一大賞の結果が出てた。言わずと知れたSF作家星新一の圧倒的な想像力から、「理系文学」を土俵に、アイデアとその先にある物語を競うコンテスト。その贈賞式で、星新一の次女の方の挨拶の言葉があった。どうやら星新一の親父さん星一がそもそも大のSF好きで、憧れのエジソンからもらったサインの横にはこんな言葉があったらしい。

「なぜ成功しない人がたくさんいるのか。それは彼らが考えるということをしないからだ。」

 

端っこだろうが、若手だろうが、創造的産業をえらんだその子と僕。

最近個人的に思うのは、「やらない」っていう選択肢はあってもいいけど、「考えない」っていう選択肢はないのです。知識はあるけど知恵はない僕には難しいテーマでそれこそ3年、5年、10年考えようと思う。

次の瞬間には消えてなくなってるかもしれない人生で、悔しいけど幸せになる覚悟みたいなものが必要なのかもしれない。あと、考えるための数と時間も。まだまだ死ねない。ほんと頼むからもうちょっと頑張るから。

 

またしても悔しいけど「好きだ」って言えなかった僕からは以上です。飯食ってた一瞬、すごく僕幸せだったんで愛しいけどまたご飯でも。