心頭滅却すれば火もまたスズシ

わるあがきはじめました。

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花に嵐のたとえもあるさ

さよならだけが人生だ

 

別れの季節がいつだって春とは限らない。

会社の同期が辞めるらしい。さばさばしてなにも考えてないように見えてわりとものすごくウェッティ人間なので、日に日にとっても寂しくなっている。一期一会の後悔先に立たず。夏なら夏で、波音に合わせて、心の中に溺れようと思う。

 

そもそも同期ってのは不思議な存在だ。お金儲けを共にする人だ。共犯者。連帯責任。運命共同体。友達以上恋人未満みたいな上下にラインがあっても、同期ってどこにも収まりきらず。ある意味恋人にも見せない恥ずかしい失態を見せてるし、ある時親友にも見せないかっちょいい成功を見せてるし。

 

やれ僕が、「20代なんてよい30代を過ごすための予行演習だ」なんて達観を気取ったとしても、日々の業務で明暗は分かれ、社会人1、2年目の頃なんて雲泥の泥まみれ。何一つパッとしていなかった。その時々での楽しいを諸先輩方に提供いただいていたものの、人と比べると劣ってるとこしか目につかず鼻につく。

 

今期2000本安打を達成した青木選手が言ってたけど「これがなければ心が折れてた、というヒットもあった」ってこれ仕事でもなんでもあると思う共感する。ちょっとしたきっかけに救われ、ほんのちょっとの会話に勇気をもらう。そういうことがこの世には多い。多すぎるくらいだ。もっとドライであることを覚悟したほうがいいよなんて後輩に偉そうな口を叩くくせに、ものすごく僕ウエッティだから、わりとすぐ心がふやける。とにかく3年目の始めくらいまで何一ついいところはなく、コンプレックスを名刺入れに、劣等感をスーツの上着に丸めて過ごしていた。今もそうだけど、何も成し遂げちゃいなかった。

 

そんな時、いつも声をかけてくれるやつだった。とにかくいわゆるいいやつだった。顔暗いぞと彼女に何回か言われた。実際に飯にも連れ出してもらった。別に愚痴を吐きたいわけじゃない。僕なりにプライドだってある。そんな不安定なメンドイ君に、その人すごい明るかった。明るくしてくれた。名は体をあらわすってのはこの人のことで、まさに朝の海のような気持ちいい人だった。この一言、こやつの笑顔がなければ、僕の心はあっさりぽっきり折れていた。折れなかったから言えるけど、あの時実はもうダメで、がたくさんある。

彼女だってそれはそれは理不尽なこともあったと思う。辞める原因もなんとなく察する。僕みたいな下っ端にはどうしようもないことが多いから、サラリーマンの皆さんは上を目指すのでしょうか。

 

結局。

気にかけるって、とんでもないことだ。できない。直属の部下にだってできないことを、さらっとやってのけるのは同期の不思議。世界ふしぎ発見

大人気漫画『金色のガッシュ!』(ガッシュ・ベルはアニメ版である)で、ガッシュの双子の兄ゼオンが最後魔界に帰る時に涙を流す。その時清麿やガッシュを思い浮かべて「そうか、俺はあいつらに愛を受けていた」と言葉にする。

失って初めてってのがこの世には多すぎる。言葉に出来ない思いがこの世には多すぎる。くくっちゃうと愛さ。ひとまとめにすると愛ね。君と僕の会話を全角キー半角キー、コピーアンドペーストして名前をつけて保存して愛です。シフトとコントロールと矢印で僕らはどこへでもいける。また近いうちに会えたらと願う。

 

『愛は光』というNegiccoの新曲がむちゃくちゃいい。愛を受けて光り輝く。ファンの惜しみない愛を受けて光り輝く彼女たちもまたファンを想って歌う。こんなきれいな光はない。こんなに消えない光はない。一ファンとしてありがとうが尽きない。会えなくたってそう思う。

さて問題。新幹線、「こだま」より「ひかり」より速いのは何か?そう、「のぞみ」である。音よりも光よりも、想いは最も早く届く。愛なんて言葉で形容したら同期にはドン引かれるって目に見えているけど、離れてても、どこにいても、社会人1、2年目のうんこちんちんを救ってくれた人への恩を、僕は一生忘れない。飯誘ってくれてありがとう。顔暗いよと声かけてくれてありがとう。プライベートでやってる音楽活動、あれ何度聴いても超いい曲だから世に出てよね。友達自慢は大の得意さ。

「この世は通り過ぎるだけだから」って、いつか鬼太郎の生みの親、水木しげるサンが言っていた。会社だって社会だって際立ってそうだ。ビジネスの9割は理論で数字で効率だからこそ、1割の義理と人情と恩返しを忘れずに。

 

花に嵐のたとえもあるさ

さよならだけが人生だ

 

散々な僕のしみったれた「またね」を、きしょいな、金払え、大袈裟すぎじゃい!と笑う姿に、僕はまた少し泣いた。