心頭滅却すれば火もまたスズシ

わるあがきはじめました。

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本当は違う言葉が正しいのかもしれないけど、心と体が時速に追いつかない日々を勝手に「怒濤」と呼んでいる。過酷とか忙殺とかネガティブな文字面はぐっと飲みこみ、変化とか激動とかその辺の感情をぐっと込めて怒濤を使う。ちなみに社会人のメールマナーの本曰く「忙」という字は心を亡くすと書くから縁起が悪くNGで代わりに「ご多用」を用いるらしい、言葉遊び好きとして覚えておかなくちゃ。ちなみに怒濤を使う理由は高校1年の頃、選択科目で書道を選んだ僕らの学年の神様ナカシマさんが、何でも好きな文字を毛筆で自由に書いていいですよという時間に「怒濤の快進撃」と書き上げた話が好きで、そこから拝借している。怒“涛”じゃ弱い。怒“濤”を選ぶ。なんでそれ書いたの?と尋ねると「なんかかっこいいから」と言われて、当時はその訳の分からなさゆえに神格化していたんだけど、今思えばただの厨二病の可能性すらあるな。ちなみにナカシマさんは自分のことを自分と呼ぶんだけど、これは「僕」から「俺」への転換期を慎重に見極めようとする余り、適切な時期を逃したからである。

 

さて、大学4年の2014年2、3月の話から始めよう。怒濤の話。

当時の予定帳を開くと、どうやったって待ち受ける社会人の前に、最後の最後の悪あがき。赤青緑に予定を塗り分け結局真っ黒カレンダー。名古屋、卒論、家探し、カンボジア、鍋、引っ越し、デート(付き合う前)、グアム、内定者研修、モノマネ番組オーディション、バルセロナ、パリ、追いコン、鎌倉、デート(付き合った後)、卒業式とひっきりなし。30時間ぐらい起きてることがままあった。計画性は度外視で体力のまま連れてってもらうことがままあった。自分の性格診断テストなんかをやると思うんだけど、どちらかと言うと保守的で、例えばお笑いをやるにしても絶対ウケる過去ネタがあれば新ネタを作らずに済ませたい人間だ。フットワークもそこまで軽くないと分かってて、考えれば考えるほど動けなくなるから、それならば考えないうちに自分をその環境に置こうというソリューション。時間があると不安になるなら、できれば忙しくしていたい。あ、間違えたご多用でいたい。AとBとCの書類を上から順番に重ねてDの封筒に入れる、いわゆるアッセンブリ作業が実は好きだったりする。

おかげで上司にも恵まれ、よちよち歩きの社会人をスタートできた。慌ただしくやってたその幸か不幸か、あまり記憶がない。卒業式前に付き合うことになった同級生は1年ちょっとで別れちゃったんだけど、こないだその子のLINEの名字が変わっているのを見て、おお、おめでとう!と思った。

 

この2019年4月、5月も引けをとらないほどの怒濤。高校の友人に誘われたり、採用説明会を任されたり、名古屋で仕事し、大阪で仕事し、仙台で結婚式の余興をやった。その間に5年住んだ家を離れて引っ越しを挟んで、史上最大の10連休はダムに沈む前の八ッ場でバンジーをして、寂れた釧路の町を歩き、知床で雨に降られ、弘前公園は桜を逃し、小岩井農場は閉館時間で入れず、わんこそばも食べ損ね、数年ぶりの夜行バスで体バキバキになりながら戻って今ブログを書いている。マイナスだけ書くとそんな感じだけどそれ以上に楽しい体験、経験ができた。創造できない僕は、経験するしかない。

休みの度に旅行に行くからって、職場の後輩から「OL」と呼ばれはじめてる。体が2つあればいいのにと思ったりするけれど、今のスキルセットのままの僕が2人いても使えない気がする無用の長物コピーロボット

 

チラシの裏紙に〇日棚、〇日キッチン、〇日粗大ごみと計画だけは一人前なんだけど何一つ手を付けてないから呆れて笑われて引っ越しは大変だ。埃を吸いすぎる。咳と鼻水が止まらない。告白しなかった恋はどこへ行くんだろう。ほじらなかった鼻くそはどこへ行くんだろう。願いましては97点の本、漫画、雑誌を中古で売って3510円ナリ。105円と108円が混じるBook-offに時代を感じる。
その合間にも名古屋へ行って働いて、大阪行って働いた。新幹線でPCをいじるとなかなかに酔う。「明太子マヨネーズ明太子マヨネーズ明太子マヨネーズ明太子」って大阪の後輩がメッセージくれるやめてくれ。新宿の地下より大阪駅の地下の方が迷宮だと思うのですが、これってトリビアになりませんか?日帰り大阪、帰りの新幹線では結婚式 名言をググるよ。0時過ぎに家に着いて7時間後には仙台へ向けて出発する怒濤。怒濤は繰り返される。お願いです、出発前の飛行機とスタバとPCをSNSにあげて「エアポートおじさん」を僕がやってたらどうか気兼ねなく戒めてください。それと、クリスマスの24日深夜に子どもの寝顔とプレゼントを撮って「任務完了」ってあげてたらどうかボコボコにしてください。「平成生まれ 自己顕示欲 消化?昇華?」で検索する。

 

久しぶりのこの感じ、時間と体力の原資を意識するも体がついていかない感じ。仙台の彼に久しぶりに会う。18から知っている彼よ、結婚おめでとう。そして零れる笑顔が素敵な新婦さん、余興を頼んでくれてありがとう。そして何より平井堅さん、今回もまたウケましたありがとうございました。

 

大阪樟蔭女子大名誉教授の夏目先生がライフイベントのストレスを数値化していて、それによると結婚のストレスは50点。引っ越しは47点らしくけっこう高いな。この1年のストレスが300点を超える人は気を付けた方がいいらしいんだけど、なにも警鐘を鳴らしたいわけじゃなくてさ、今のストレスを客観視することがとても大事。アンハッピーだけじゃなく、ハッピーすらも時にはストレスになるんだから。無事でやってる?ちゃんと寝てる?なにもなかった退屈な1日たちが、有事の際に踏ん張ってくれる力強い1日になるって信じてる。

https://www.nhk.or.jp/special/stress/01.html

 

上京し損ねた埼玉は小手指の6畳一間の2年間。畑に囲まれた熊本より田舎の暮らし。

都内に憧れて2年で所沢の科目を取り終え飛び出してきた下落合の2年。

そして一人暮らし3軒目。干川が千川に住んだらうけるかななんて企みは「え、干川が千川に住んでるの!?」って言われても返しの正解を最後まで見つけられず、ことごとく変な空気にしちゃったんだけど、社会人よちよちの頃を支えてもらったいい街といい部屋でした。30㎡以上の広さで風呂トイレ別に6万台で住めた千川は素晴らしいよほんと。星の綺麗な千川で、季節関係なく見上げたオリオン座。下に住む大家の子どものドタドタ。10年近い一人暮らしは思い出だけでなくモノも増やしてて、結局引っ越しの日は40時間ぐらい起きていた。怒濤。やれやれ、怒濤。

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A地点からB地点へ。B地点からC地点へ。万物は流転する。流転する事実だけが、流転しない真実。サンセットサンライズサンセットサンライズ、「百年はもう来ていたんだな。」っていう夏目漱石夢十夜。気づいたら元号も変わってた。

元号とは、見えない時の流れに名前を付ける行為。怒濤に置いて行かれそうな時こそ、怒濤を書いておかないと。いつか思い出す平成も令和も、昔住んでた家も、可愛がっていた後輩も、あちこち行った話も。