心頭滅却すれば火もまたスズシ

わるあがきはじめました。

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のっけから好きなAV女優さんの話をしました。まいどおなじみ流浪の番組タモリ倶楽部です。違います。のっけからウソをついてしまいました。お詫びします。ところでBy the way、のっけからの「のっけ」の語源って知ってます?ヒントのっけ丼とは違います。仰け反るの「仰」からきてるそうです古代は中国の伝来。漢和大字典によると、上級から下級に命じる公文書の最初の部分につける言葉らしく、のっけから汚い話だなとか、のっけからウソじゃねぇかとかやや口汚い感じで使われるのも納得。「のっけから美味しそうな前菜が出てまいりました」とか「のっけから麗しいお召し物ですね」なんてのは確かに言わないわけです納得。つまるところ、僕は語源とかが好きらしい。他の人より少しちょっぴり若干。

昔、僕らが中学の頃に放送されてたナイナイサイズというバラエティをよく見てた土曜の夜のお風呂上り、ストレッチしてるのんびり空気。内容はナイナイのどちらかがロケに行く番組で、岡村さんロケ回の一言目を毎回楽しみにしていた。例えば体動かすタイプのロケには「どうも!よしもとのケインコスギ岡村隆史です!」って挨拶。M-1審査員博多大吉先生で言うところの"つかみの早さ"。「まいどおなじみ流浪の番組」もそう。僕は前口上も好きらしい。他の人より少しちょっぴり若干。いや、だいぶ。

 

「どうも〇〇」「まいど〇〇」に憧れる社会人。つかみの早さで年収が変わるわけではないけれど、自分を受け入れてもらうフィールド作りになるのかも「毎度」「お馴染み」の有難さ。要は社内でも社外でも「このことはこの人に聞くとよい」「〇〇については彼の右に出るものはいないな」みたいなポジションを取れるとめっちゃ楽になるんです。昨年サッカーW杯を見てて「サッカーって実は、陣取りゲームなんですよ」って面白い見方を教えてくれた後輩に目から鱗だったんだけど、実社会もわりと領土争いのていでフィットすることがある。領土争いとか陣地争いは少し野蛮ね、言い換えたい。これも少し前にある武道家の人が話してた「挨拶」をなんでするのかっていう理由、もちろん礼儀とかマナーを目上の人へってのが原則にあるんだけど、「あなたの人間性を受け入れる体勢がこちらはできていますよ」ということを相手にいち早く知らせる構えにもなるらしい。おはよう1つで、相手を受け入れる姿勢ができていることが伝わる。あなたが仮にどんな人間でも、どんな技を仕掛けてきてもこちらは受け入れる度量がありますよ、という想いが含まれた少女漫画でよくある下駄箱の「おはよ~!」ってなんだろうと思いつつ、後輩が増えてきた立場で年齢年次関係なく受け入れるためにも、こちらから挨拶を繰り出すようにしようと思う。「おはよ~!まいど!」を心的に翻訳すると「私はあなたを受け入れようとしています。私はこのポジションで生きてます。ご存知ですよね?」である。

だとしたら、自分を何で知ってもらうかって話なのかもしれない転校生の自己紹介なりマッチングアプリのプロフィールなり。それって広告コピーの話にも通じる、言うなれば言葉リテラシー。いくら積まれても「マヂ」とか「こんにちわ」は使わないわけです。冒頭、戸田真琴さんがおっしゃった「性感帯は心です」っていうのがここに効いてくる。僕で言うと言葉リテラシーが高い人が好きで、見た目の美醜の数億倍、心で感じてる。LINEしてるだけで楽しくなるし、逆もまた。どうも、書けるネタの多い人生を。ホシカワカケルです。

前口上にもいくつかあって大好きな教育テレビのアニメ「おでんくん」のイントロは「何でも知ってるつもりでも、本当は知らないことがた~くさんあるんだよ」ってやつ。ロングバージョンだと「世界の不思議や色んな奇跡。 もしかしたらそれはみんなおでんたちのしわざなのかもしれないのです。おでんくん!(タイトルコール)」と続くわけです。そろそろ自分も見つけて作って使っていこうかな。世界の真理と個人の心理を入れたりしながら。こんにちは、干からびないで星になれ、ホシカワカケルです。言葉に誠実な人がずっと好きだ。

 

さて。「きっかけを探しているのだ、人はいつも」なんてことを3,4年前に思っていて、たしかこのブログにも書き散らかしたことがある。うだつも頭も調子も上がらない日々、汗水垂らして音(ね)だけを上げていっちょ前に分かったふりして、それが何のかもわからない“きっかけ”をただ待っていた。ところが最近思うのは、きっかけなんぞ特に意味はないんでは?ということ。元々の僕がウェッティに考えすぎるきらいがあるせいで、何かこの縁に意味があるんじゃないかとか、このタイミングは何かしらの神のお告げだとか考えがちなんだけど、じゃあ君が無視したあの信号や、吐き捨てたあのガムがその後の自分を何か変えてくれたかい?ごみ箱にきちんと入ってくれなかった丸めた紙くずに縁パワーメントを感じて持ち帰ったことはあるかい?愛にできることはまだあるかい?

実際は多分意地悪なぐらい逆説的で、ほとんどの出会いに意味などないからこそあなた1人との出会いが何より大事だったり、腐るほどある言葉の海だからこそ光を差し込んでくれたあの言葉ひとつが救いになったりする。現実はかなりドライ。いい悪いじゃなくスーパードライスーパードライだからこそ水曜日のネコ本絞り乾杯をもっと美味しくこれ何の話?人間の持つ個体差にそんなに大きな差なんてなくて、だからこそ同じ環境同じ条件同じ土俵で少しでも秀でたところを伸ばしてあげるだけで、現場のマネジメントに勝利の女神が微笑んだりする。きっかけ自体は大事ではない。

 

昨年のM-1グランプリが自分の中でひとつ顕著だった。自分が考えた、わりと挑戦的なネタが1回戦を通った時はこれ俺もしやLike a Pro面白いんじゃないかと思ったけど、結局2回戦は一笑いも起きず惨敗した。そしてまた何も変わらない日常が続いていった。別にきっかけなんてないじゃんってそんときアタシ思ったワケ。運命の人とも肌を重ねちゃえば1回は1回。抱かれたって今さら何が減るってのお年頃。今だからわかるけど「きっかけを探しているのだ、人はいつも」なんて分かった風な口を聞いてた僕は「それをきっかけに変える力もなかった」んじゃないかな。

 

だとしたら最近思うのは、きっかけより気づきの方が何倍も貴重。例えば受験期の「きっと勝つと」でキットカットの売り上げを伸ばしまくったマーケティング界の偉人、ネスレ日本の高岡社長のご趣味はガーデニングだそうで、休日祝日、土をいじっていると意外とビジネスのアイデアが浮かんでくると言う。ファミマの澤田社長はサーフィンに挑戦し、新しいやりがいを得たらしい。日曜日の日経新聞は、そんな風に経営者の意外な一面を伝えてくれるから面白い。このように皆さん、ビジネスと何かを掛け合わせてらっしゃってるけど、きっとそれ自体に意味はない。掛け合わせるものはなんでもいい。ガーデニングきっかけでビジネスに閃きが生まれる!ではなく、何からでも気づきを得られる人がガーデニングをきっかけの一つにしている、に過ぎない。野球、お笑い、アイドル、広告コピーなど僕の好きなものそれぞれから、何を気づいてどうきっかけに変えられるか。仕事と人生の両輪を回していくためのヒントは山ほどある。ウェッティな意味でなく。


ガーデニングで思い出す話。「雨の後の方が雑草が抜けやすい。ほらチャンスだよ!」って小学生の頃の夏休み、ズボラな母親が普段は全く庭いじりをしないくせに、通り雨があがるといつも勇んで庭へ飛び出してて僕もよく巻き込まれた。キレイキレイでいくら洗っても落ちないドクダミのクサイクサイが教えてくれた「雨の後は草が抜けやすい」っていう手ざわりの原体験が気づきになっている。社宅の清掃当番の日にそんなことを思い出す。きっかけを生むのは気づきで、気づきは体験が連れてくる。そんなことを思って、社宅の草を抜いている。「きっかけを探しているのだ、人はいつも」なんてことを言ってた3,4年前の自分に言いたいのは、気づきが先。きっかけは後。体験は気づきを助けてくれて、きっかけなんてなんでもいいんだよということ。

ホットペッパービューティーなどを運営するリクルートライフスタイルさんが今年の春、こんなコピーで展開していた。「きっかけなんて春でいい。」

「あ、春だ」って気づけたらそれがもうきっかけ。「ねね、髪切ろうかな?そのままがいいかな?」って質問はほとんどが切りたいと思ってて(でなきゃ言わない)、余計な意見なんて求めちゃないから、そっと背中を押して上げたらいいらしい。「あー、いいんじゃない。春だし。」とか言っておこう。あと多分聞いてくれたその子、君のこと好きだよ。

 

「きっかけなんて春でいい」

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夏の終わり。ピークが去った。天気予報士がテレビで言ってた。「音楽はずるい。お笑いは勝てない。」バカリズム星野源との対談で言ってた。音楽は記憶に残るがお笑いは残らないじゃないかと。言の端に乗る、言の葉。話しててふっと口をついて出るワンフレーズワンメロディの刺す力。『若者のすべて』の歌いだしとか毎年の夏思い出してしまうなー。花火見に行ったらやっぱり最後のー花火にーって声に出しちゃうな。同じぐらい最近やられたなってのは「愛にできることはまだあるかい?」これすごい。すぐ使いたい。友達から悩みを聞いた時とかに言いたい。どう?愛にできることはまだあるかい?飲み会終わりに使いたい。飲んだね~どうする?終電まだある?2軒目行く?愛にできることはまだあるかい?

 

 

ここでアメリカンジョークを1つ。

「この夏はホント最低だったわ!」ナンシーは言う。

ジョージは聞き返した。「何かあったのかい?」

するとナンシーはこう言ったのさ

「違うの。何もなかったのよ!」ってね。

 

台風でいつもより20分遅い電車。いつもより20分遅い世界の住人。春夏秋冬春夏秋冬繰り返して繰り返して上手くなっていくんだ。解像度を高めていくんだ。3,4年前の自分がただ待っていたきっかけなんてたかが知れてる。気づきだよ。きっかけなんてださいぐらいだ。気づいていくよ。視力を上げていくよ。感じる心を高めていくよ。去年の自分がなかった、これとこれとこれを兼ね備えて今年の秋を待ち望んでいるよ。