心頭滅却すれば火もまたスズシ

わるあがきはじめました。

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すごくなんとなくで一時的なものかもしれないけど、よく寝て、ほどよく食べて、ちょうどよく疲れている今夜、どこかわくわくしている。予感、期待、心構え、心が前を向いている。

川上未映子さんの文体がすごい好きで、たまに広告コピーを書いてくれるのがうれしい。何度でも言うけどアディダスのコンセプトショップが東京にオープンするときのマニフェストのような言葉たち、いつ読んでも心がわくわくして熱くなる。これを読んで「本気」以外に「夢中」というがんばりの基準を持つことができた。最近、本気出してますか?今、何に夢中ですか?

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目を留め心惹く、今だと”親指を止める”表現の数々。理念や、存在意義や、そこで働く人の想いを一言で表す企業コピーが好きで法人営業をやりはじめて5年、役に立ちたい会社さんが増え、企業のいい話を聞く機会も増えた。

知ってますか?業績右肩上がりの自動車メーカーマツダさんの「Zoom-Zoom」ってあれ、日本で言うところの子どもがブーブーと車を表すあの走行音の英語版らしいです。”子供の時に感じた動くことへの感動を愛し続ける皆様のために、心ときめくドライビング体験を提供する商品造りを目指すマツダブランドを表現したものです。”と公式サイトにもある。誰もが幼いころに描いた夢、憧れ、原体験を思い出させ突き動かすシンプルで力強い言葉だ。

もう一つ、幼い頃の夢を力に変え、100年の時を経てそれを実現させた企業がホンダだ。時は1917年、静岡浜松で開かれたアクロバット飛行ショーを見て、航空の夢を抱いたのが当時10歳の本田宗一郎。財閥三菱ですら撤退が報じられて止まない航空産業に、自動車メーカーホンダが挑み続け、ついに2015年、アメリカ航空連邦航空局の安全型式証明を取得した。つまり強度、性能、安全性、機能および信頼性などに関する厳格な基準を満たしたというわけだ。創業者のものづくりへの想い、空への憧れが脈々と受け継がれ、体現し続けた結果、ブランドができあがる。そのとき僕らは「The Power of Dreams」の言葉の意味を知る。

 

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企業ブランドや、社内コミュニケーション活性。副業時代の働き方改革。モチベーションアップもエンプロイーサティスファイもカスタマーエクスペリエンスも。目指すところは収斂されていく気がする。どんな企業になりたいのか、それすなわち、どんな人でありたいのか。

 

小さい頃から芸人になりたいとしか卒業文集には書いてこなかったけど、大学でお笑いサークルに入ってわりとすぐに夢は諦めた。ここらへんの折り合いをあまり立ち止まって考えてこなかったんだけど、きっと本気ではなかったんだと思う。本気で食っていける自信がなかった。それだけだ。というか正確には中3の自分が卒アルに「福を運ぶ話術で福話術師になる」とちんぷんかんぷんなことを書いてくれてて、これ”福を運ぶ話術で”の部分いらなくね?と友人に突っ込まれたりもしたけど、職業ではなく価値提供に目を向けて書いたのだとしたら15の僕はなかなかやる。

芸人という職業は早々に諦めてもミーハーな部分は変わらず、いろんな面白い人に会えて、人生が豊かになるようないい話を聞けて、人があまりできないような経験がしたいとだけは考えてた気がする。なんとなく面白そうだなぁという直感を信じて周辺を広げていった結果、今の会社に拾ってもらった。当時はそんな分析なんかできてなかったし、やる意味もないだろうなと今じゃ思うけど、お笑いを作る以上に言葉とか言い回しとか表現が好きだったし、いまいち何をやっている会社か分かってなかったけどかなりグッドチョイスをしたと思ってる。

こないだ部署の飲み会で、直属の上司が締めの挨拶で僕ら若手を前にして「皆さん、この会社に入ったということは、経験を積みたいということですよね?若くして新しいことができる、その可能性を信じて入ってきましたよね」と話し始めたの、心の中でそうだそうだの大賛成。僕みたいな浅瀬の前向きはたぶんどの会社に入ってもこりゃ大正解でいい出会いであったなと思うたちなんだけど、この仕事で役に立ったら嬉しいだろうなという想いはたしかにある。あまり書くと口ばっかになるけどさ。

 

仲のいい3つ年上のいとこがいて、彼は大学を中退して今料理人をやっている。大学4年の就活が始まるタイミングで、このまま社会に出てもなと思ったそうで、手に職をつけるため資格を取ろうと料理学校に通い始めたらしい。結果、厳しい銀座の料亭で修行してた時はおやっさんに殴られて鼓膜を破ったりしてたけど、懐石料理への夢は持ち続けて今では中目黒の超人気店で料理人をしている。さらなるステップアップのため2月いっぱいで辞めちゃうらしく、先日食べに行ってきた。手際よくカウンター越しに料理を振舞ういとこに「辞めようと思わなかったんですか?」なんてベタに質問したところ「料理やってるときが一番楽しい。料理しかできないからね」と笑って答えてくれた。腹をくくるってきっとこういうことだと思う。

会社の仲いい先輩に「自分の得意不得意が思いのほかはっきりしているなって気づいた5年目でした」なんて強がり半分、甘え半分でガス抜きしてみたら「はっきりしてるのが悪いことじゃないってことも大事よ!」と言ってくれて救われた。たしかにそうだ、何なんでもできますみたいな感じ出してんだよ調子のんなよと思えてきた。なんでもできますって抱え込んでゆっくり沈没してく最近だったから、できるできないがはっきりしてること自体は悪いことではないっていう言葉は事実は、今の僕にとって明るい。同じく「得意に没頭する覚悟は大事よ!」とも言ってくれて、その発破にも元気をもらった。人生がマルチタスクなのは別に今に始まったことじゃない。一つ一つしかも丁寧にやるだけです。上手く行かないときは一に自分中心になりすぎていること、二にインプットが少なすぎること、三に浮わっついていることがある。逆に言うと最低でもこの3点に気をつけておけばしばらくは迷わない。

 

で、なんでこんな話をしているかと言うと、大好きだった小学校の先生から嬉しいご相談。今5年生の担任をしてて、来年度6年生に持ち上がったときキャリア教育の一環でいろんな職業の人の話を聞くことがあって、もしお暇があればゲストティーチャーできてくれないかとのこと。12歳を前にして、せっかくなら働く喜びとコピーの面白さを伝えたいから、夢中を文字にしておこう。

すごくなんとなくで一時的なものかもしれないけど、よく寝て、ほどよく食べて、ちょうどよく疲れている今夜、どこかわくわくしている。外は雨でも、雨が降るたびあったかくなることを知っているこの季節は、ちょっとした気苦労もいずれ溶けていくと思ってる。