心頭滅却すれば火もまたスズシ

わるあがきはじめました。

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ブログを書くようになってから1か月以上更新が空いたのはかなり久々で、元々腹の底から言いたい何かがある人間ではないと再確認する。自らの主義主張はないけど、こんな話Aとこんな話Bがあって、いつかそれらが重なって自分の支えになるかもなって書いておく。

こんな話Aとこんな話Bは別のところからやってくる全然別の価値観と出自。例えば学生時代バレーボールサークルとお笑いサークルに所属していたんだけどそれぞれでよろしわろしがあるわけです。ものすごい居心地が良い反面、両方にハマってない感覚もちょっとあって、陽キャっちゃ陽キャなんだけど、陽キャの中では陰な部分があって押したり引いたり冷めたりハッタリ、人対人の際(きわ)で気後れすることがある。何度でも思い出すけど新卒採用博報堂の3次試験グループディスカッションでこんだけお喋り人間が何一つ自分の意見を言えなかったのです赤坂サカス。

その一方、根っこは陽なので陰にも染まらずハマらず。お笑いサークル員のバイブル松本人志『遺書』で書かれてる面白いやつの三大条件の一つ「根暗」を見るに、あれあれれ。自分が“面白い”と思ってたものは“楽しい”でしかなく、明るく社交的なやつは内容は薄く飽きられやすいと書いてあって、あれあれれ。「お前みたいなやつはどこにもハマらない」って声のでかい先輩に言われて、いやめちゃくちゃ言葉のナイフ!と思ったけど言い切ってもらった方が楽なこともある。なに、よくある10代後半から20代にかけてのようこそ絶望こんにちは赤ちゃんで、そのジメジメジュクジュクをまんま見せるのはダサいことに20代後半で気づいて生きやすくなるための通過儀礼よ、人生100年長い目で見たらまだ夏真っ盛り。

この夏、トキワ荘ミュージアムに行った時のこと。親父の書斎の分厚い分厚い『まんが道』を読み漁ってた子ども時代だったので、「ウワァこれが本物のラーメン松葉だ!」「そうそう、テラさんがみんなを繋げるんだよなァ!」みたいに1人時代背景を呟いてはしゃいでたら、同行者の友人に「ホントそういうのよく知ってるよな」と感心された。お笑いサークルの人たちの中ではむしろカルチャーに疎い人種なんだけど、コミュニティが変われば詳しい側になれるらしい。「人生の中で持っているバックグラウンドこそが一番の差別化要因」って瀧本哲史先生も仰っている。体育会系=陽でもなければ文化系=隠でもないし、狭い2択に当てはめて楽観も悲観も意味がないのよ私は私、私以外私じゃないの。バックグラウンドを多めに持っとこうと思う、種族として生き延びるために。

自分からこんな話Xを作り出すことはできなくても、Aから仕入れたこんな話AをBの人たちにBから仕入れたこんな話BをAの人たちに。そういう意味で、色んないい話を仕入れられる出版社で勤めてるのは単純に機会が多くて幸い。腹を抱える面白さはそれが得意な誰かに任せるとして、誰かにとって新しく、発見があって、役に立つ話になれば幸い。早速、こんな話Aを引用するところから始める。

 

テレビ好きの人でテレビウォッチャー飲用さんをフォローしてない人のほうが少ないと思うけど、こんな記事を書かれていてとても興味深かった。

ナイツ・塙が語る“テクノ漫才”と、その効用「途中でなんで笑ってるのかわかんなくなってくるっていう」|日刊サイゾー

とある番組、ナイツ塙とラッパーBozeの対談にて、以下飲用さんツイッターより引用。

ナイツ・塙「2007年ぐらいにPerfumeが『ポリリズム』って曲で出てきたときに、やっぱりテクノいいなって思って、もう1回YMOを聴きてぇなと思って、2007年ぐらいにもう1回YMOを毎日聴いてたときあって。そのときにやっぱ俺YMO大好きだなと思って。YMOが一番好きだから、YMOを漫才にできないかなと思ったんですよ。YMOって要するに、機械でピコピコピコピコピコピコ…」 

Bose「一定のリズムでね」

塙「途中で不協和音みたいな、トゥントゥンとか跳ねたりするじゃないですか。このイメージで今やってるヤホー漫才っていう小ボケをずっと重ねていく、あれをやっていくと、普通の漫才だったら4つぐらいボケたときにツッコミが『お前小ボケ多すぎだろ』って止めちゃうんですよ。だけどそれを止めないことで、ループすることで、聴いてる人が…」

Bose「グルーヴなんですよね。どんどん気持ちよくなってきて、途中でなんで笑ってるのかわかんなくなってくるっていう」

塙「そこが狙い。うねりを起こすというか。そのイメージで作ってそれで初めてM-1の決勝に出たら、思いっきりテクノカットの(オードリーの)春日に負けた。」

塙さん曰くバイキングの小峠さんはパンク好きでよくカラオケでシャウトしてるらしい。バイキングのネタを思い浮かべたら納得である。聞いてきた音楽をベースにネタを作ったらいいネタができるかもと話されていた。

人が、かけてきた時間と経験とその時々の感情でできているとしたら、自分が耳に入れてきた音楽も大いに影響しているわけである。なかなか気づかないし気づきにくいけど。コンビ組んでるミサワ君にたまたまその話をしたとき、彼は戦隊モノやアニソンを聞いて育ったらしく、アーティストで言えばポルノグラフィティが一番好きだと言っていた。「俺みたいな陰キャはポルノが好きなのよ、ポルノは陰キャたちの星」と言ってて、いや、陽キャもポルノ聞くけどなと思った。大統領の名前なんてさ、覚えてなくてもねいいけれど せめて自分の信じてた夢くらいはどうにか覚えていて。by『アポロ』

 

「小学五年生、中学二年生、高校二年生のときにハマったジャンルは一度熱が冷めても再燃しやすい」って昔ツイッターで流れてきた。音楽に限らずお笑いに限らずだけど、当時の自分は何を取り入れていたんだろうか、音楽好きからすると幾分浅瀬で波打ち際のパシャパシャではあるけど書いてみる。

何よりJ-popで出来ていて小5で平井堅を知りミスチルを聞いて中学でバンプを通るこのノンポリ具合。高校はRIP SLYMEMONKEY MAJIKを聞くことがかっこいいと思ってたし、今じゃ恥ずかしいけど田舎の高校生にゃEXILEは避けては通れなかったス俺なんてKAKEって呼ばれてたからねマジで、親からだけど。youtubeを覚えてポケモンのサントラ、デジモンのサントラで歌詞を消して受験を終えて、バンドやってる従兄弟にチャットモンチーを教わり、大学で奥田民生を知ってPUFFYに気づいて何よりカラオケで色んな人の曲を浴びるように聞いた。そいや、当時の彼女に振られた時は前述の声のでかいロン毛の先輩がカラオケで「元祖高木ブー伝説」を歌ってくれた。なんだこの歌は。お世話になってる人なので告知しておく宇多田ヒカルやアニソン、ハロプロのリミックスがこちらから無料で聞けます。消費者金融に借金してDJ機器一式を揃える声のでかい人です。

https://m.mixcloud.com/negumakoasa/

 

これは僕の1つの特技なんだけどおよそカラオケの履歴を見ると、ジュークボックス的にサビを空で繰り出すことができる名付けてヒューマンジュークボックス。あとドにはミを重ねる相対音感、出しゃばり過ぎないように気を付けつつ大体ハモれる。じゃ俺King Gnu 井口さんバージョンやるからお前aikoのカブトムシお願いします。分かりましたウィン(自動ドア)、いやコンビニ店員じゃねぇよ。

根っこはJ-popの王道のメロディとかジャニーズの頭軽くなるような歌詞とかでできているんだけど、その一方でただ情報が並べられた無機質な歌詞の羅列も好きで、この辺りからコピーライターみたいな職種に興味を持ち始めてる。

斉藤和義の『幸福な朝食 退屈な夕食』の意味ない文字情報を積み上げた先の読後感や、トータス松本『涙をとどけて』で語られる部屋の景色それら情報が伝える切なさ無常それでもって心意気とか。書いてみるから聞いてみて。

“積み上げた雑誌と 将来の夢
「泣けるよ」と言われて借りたDVD
買ったっきり一回しか履いてない靴
ポタポタと落ちる蛇口の水
やけくそのカラオケ 笑えないテレビ
そんな日々をただ僕は泳ぐ
だけど希望もそれ以上の意地も
ここにちゃんとある この胸に”

 

今年、まだ若くして亡くなられた広告クリエイティブのパイオニア岡康道さんが手がけたJ-PhoneのCM、最初はなんとも思わなかったんだけどこの自粛期間、好きな人たちに会えなくなって当たり前が当たり前じゃなくなって初めてその愛おしさが冷たく肌に触れる感覚ってあったじゃないですか。なんでこれがケータイのCMなんだろうって初見はなる。なるんだけど受け取り手のリテラシーを全面に信じてる、寂しさと愚かさとくだらなさひっくるめた人間愛。読後感の設計がえぐいCMです字コンテを添えて。貼っておくから聞いてみて。

www.youtube.com

(bgm エーデルワイスが流れてる♪)

届かない言葉。零れない涙。笑わないテレビ。本当の君。意味のないそれを、僕は死ぬ程、愛している。

とあるコピーライターの先生が言っていた「言葉は刺激物、読後感こそ作品」と「言葉はすべてのクリエイティブの最小単位」という考え方がとても好きで、僕ごときでも言葉に真摯でありたいなぁと紳士に思う。

 

最近はあまり見かけなくなったけど、巷で「おもしろきこともなき世をおもしろく」って言ってる人に面白い人はいない。“趣味「人間観察」”とかって言っちゃってる時点で、他人からどう思われているか観察できていない人もいる。「秋っぽいことしたーい!」って言う人は他の季節でも言っているし、誘われ待ちで行動には移さない。言うだけ言ってみるといい、落ち葉を踏みしめに行きませんか?って。難しかったら紅葉の効用を見に行こうようでもいいから。春は桜を枕にしたことありますか?って。夏はくるぶしを海水に浸しませんか?って。冬が寒くって本当に良かった 君の冷えた左手を僕の右ポケットにお招きするためのこの上ないほどの理由になるから。って。by『スノースマイル

 

自分の人間としての底の浅さを突き付けられたお笑いサークルは、飲み会ではただ笑わせてもらうしかできず、なんならネタをやらないスタッフさんのほうが笑いを取ってることもあって歯がゆい思い出も多いのだけど、ぶっ飛んだ才能を間近で見られたことは自慢で誇り。並外れた発想力と豊かな言葉の引き出し(と形容するのが才能の割に普通すぎて申し訳ないくらい)で大喜利チャンピオンになった先輩片野さんは、ショートショート大賞でも受賞されて作家デビュー。天才奇才のペンネーム洛田二十日さんの受賞作はこちらから読めます。貼っておくから読んでみて。

[試し読み] 第2回大賞「桂子ちゃん」洛田二十日|第3回 ショートショート大賞 | KINOBOOKS(キノブックス)

出版社員の出番とばかりに早速寄稿を依頼できたのもちょっとした嬉しいお仕事。弊社の企画よ、見てみてみ。

今夜も窓に灯りがついている。 | ブレーン | 雑誌・書籍を読む | 宣伝会議オンライン

 

まじで知らん登場人物のわけわからんエピソードに困惑すると思うけど、自分たちで面白いことやってやろうってあの頃のヨセケンの空気感を時々思い出す。自分は新しい何かをやれているのか。前例のないチャレンジができているのか。ワケわからん仕事ができているのかってたまに問いかける。こうしたい、ああしたいがないくせに油断するとすぐ「秋っぽいことしたーい!」って言っちゃう側なので、何か提供する側にいられるように。お笑いサークル時代の忘れられない伝説のイベント、その名も「牧の机を作る会」を書いておきます。

2012年の7月、ある1通のメーリスが届く。4年になってサークルを引退して暇でしゃあない例の声のでかい先輩から。

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夏だ!海だ!机だ!
ということで今年もこの季節がやってきました。
夏と言えば勿論、毎年恒例の「牧の机を作る会」の季節です。
牧の机を作る会とは、 この時期になると毎年机を欲する牧のために、 机をみんなで作るという会です。
ちなみにこれが去年の牧の机を作る会の様子です。

(ってここで表示されてるURLを押すとおじさんと木材の写真が出てくる。なんやそれ)
7/31(火)午後13時からやります。来週です!
場所は理工学部のものづくり工房という道具が何でも揃っているテ ンションがいくらでも上がる場所でやります。
以下のような人は是非お越しください。


・ 内に秘めたるクリエイティビティを発揮する場がなく歯がゆい思い をしている人
・日ごろから机を作りたいなあと思ってた人
・気づいたら机のことばかり考えてしまっている人
・机の角で女があれをあれしてるあれを見ている人
・日頃余った材料でちゃちゃっと机を作っている人
・変な机を作って牧に微妙な顔させたい人
・片野


以上、きたい人はこちらのアドレスまで

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当然そんな恒例のイベントなどない。当時僕代表やってたんだけどOBからの突然のワケわからんメールに腹抱えて笑った。この牧さんはスタッフさんとして入ったのに、演者の先輩の前でも臆せずハーマイオニーの物まねを披露する陽気な人で、ご実家の学習机を処分せざるを得なくなり、ちょうどいい机を探している時期だったらしい。なかなかいいのがなくてお母さんに相談したところ「ヨセケンのあの声のでかい人に机作ってもらえば?」って言われたらしい。母娘揃って変だ。とにかくロン毛の声のでかい先輩はたしか藝大を受けたかなんかで彼なら出来るんじゃないかって、話してみたところ企画が形に。実は早稲田の理工キャンパスにそういったモノづくりが誰でもできるスペースがあるという。それでさっきのメーリスが届いたってわけ。僕は行けなかったんだけど10人以上参加表明したんじゃないかな。行けてないからメーリスを見るしかない僕らに当日続報が届く。

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2012年7月31日(火)12時53分
牧の机を作る会は中止となりました。

机を作りたかった人、申し訳ありません。


そして新たに牧の椅子を作る会が発足しました。
机を作りたかった人、来なくても大丈夫です。
椅子を作りたいという方だけ、 理工学部61号館1fモノづくり工房へあつまれ!

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多分なんかトラブルが起きとる。机から椅子に方向性が変わっとる。

その後のメールにまた腹抱えて笑う。

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2012年7月31日(火)14時22分
今から花やしき移動します。

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どうやら早稲田の工房みたいなところに結構な人数で行ったんだけど、まぁふざけた趣旨の、ふざけた会の、ただでさえふざけ倒したメンバーなので「そんな服装ではできません」と門前払いをされて、急遽十数人で暇だなどうするよってなった結果、花やしきに行くことになったらしい。 以上が「牧の机を作る会」である。この話が本当に好きで今でも思い出しちゃう。

ワケわからん無邪気な言い出しっぺの願いを叶えてあげようと、無いなら俺らが作ってやるぞって立ち上がった男たちが、トラブルを乗り越えた結果、遊園地に行く話。示唆に満ちてそうで何の意味もないただの思い出話。

なんで今更こんなこと書いてるかって理由は1つ。

片野さん、牧さんご結婚おめでとうございます。お付き合いして10年。サンボマスターのライブに一緒に行って帰りに付き合うことになった話、とても素敵で好きです。お二人に色々とお世話になったので、いけ好かねぇでしょうけど残しておきました。おめざいます。末永くお幸せに。