読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

心頭滅却すれば火もまたスズシ

わるあがきはじめました。

240

つづきをつづる、肺気胸

交通事故なんかで肋骨がぶっささるわけでなく、自然に穴が開く自然気胸、原因不明。

なぜか細身で長身の20代前後の男性に多いらしく。成長期に飛行機に乗った数が多いからって仮説、なんてこったい。テンキン族のテンテキ族。

思春期の縦の成長に肺が追いつけなかったからっていう仮説、なんてこったい。思春期の激しい運動が心肺を鍛えるって、中学野球、入部説明会の上野先生が嘘をついていたとでも。

ググるとイケメン病って、芸能人の罹患歴。いやいや、ほんとのイケメンは入院して10日もシゴトに穴、あけないんだぜって、むだに夜景の綺麗な呼吸器系の病棟。

 

することないからセックスしようは森山直太朗の歌ですが、

することないからSNS開こうでしょうかポケットからどこでもスマホ

facebookでは、身内知り合いの肺気胸のシェアが続々。

くしゃみで再発ってそれまじで、から慣れてくると、あ、空いたって言うらしい。いやお腹の赤ちゃんの、動いたのそれじゃないよ。右がなって左がなって、もういっかい右がなるなんて丁寧な幼稚園児の横断歩道もいいところ。

そもそも聞けば、肺気胸の再発率は30~50。加えて2回目なった人が3回目なる確率が80らしく。50、80、喜べない。手術をすると3~5%だって。

再発率って日本語、やさしくない。

 

管を繋がれ、寝がえり打てず。お手洗いはコロコロコロがして移動。ドレーンって言うらしい変な箱にも、決して倒してはなりませんよって肺の恩返し。

シャワーもダメで、ボディシートの発明者に深く感謝。なんでかってまだ20代。海のように青々い「恥」という感情を看護師さんに浸して。ガクセイでなく、社会人になってからでよかったと思うのは、医療従事者の医療に従事する姿を見て感動したことでしょうか。

カーテンで仕切られたプライベートに、マナーモードはなく音声ノーボーダー。

初日はもう不安と違和感と、ニュウインっていう変な高揚感。傍耳そばだてオムカイサンはガイジンサン。カップルなんだろうか、面会時間を過ぎてもときどきちゅっちゅ聞えたから、欲望に素直な人たちだ、きっと。お隣さんは聞けばひ孫が高校生。直接聞いたわけじゃないけど。屁をこいたり鼾をかいたりにぎやかな病室で思うのは、世間体って邪魔で、大切だ。

 

おタバコは吸いますかに対して、2週間前にただ一度だけ「もらい煙草」童貞を捨てたのですがそれはその吸ったに入りますか?入りますか。小児喘息にはじまり、煙草とは縁のない人生を生きている。あなたが気づけば、マナーが変わる。

僕は別に怖い話も怖くなくて、僕がいるとどんな怖い話も怖くなくなるっていう、これはこれでニーズがありそうな人間なのですが、麻酔の説明はそれこそ怖い話で。万に一つはマヒどくこんらんねむり。ポケモンセンターでも一生治らないんだって。てぃんてぃんてぃりりん(効果音)

説明係のおばちゃんは、説明するのがお仕事だから。あとはペンを渡してこちらのサインを待つのみ。結果、手術はしなかったんだけど、健康第一の意味を知る。それに、若い医師が多い病院は、症例数のノルマを奨励してるらしく、悪く言えば練習台になるらしい。再発しやすいんでくしゃみに気をつけはっ、はっくしょい!

 

古畑任三郎の好きなお話で真田広之演じる忙しすぎる殺人者が最後「いい休暇になりそうだ」っていうめちゃカッコ良い台詞があるのですが、入院2日目そんな気分。年度末だし小企業は死ぬほど忙しいの分かってて恐縮なんだけど、それでもね。

 

・「カリフラワーの酢漬け」の病院食たるや入院3日目。川上未映子『乳と卵』とよつばと!を読む。大森靖子『愛してる.com』を聞く。頻繁に放屁するじいさんが越してきた。思うに、肺気胸って手術すべきなんでしょうか。再発率っていう言葉は優しくないね。aikoじゃないけど大丈夫になりたいね。

 

・そんなことどうでもいいのに、音楽番組に母校が映るらしくテレビカードの残額を減らし続ける入院6日目。毎日レントゲンで被爆している。入院してても風邪は引く。雪だと分かっていても東京の交通網は脆弱だ。卒業と分かっていても特に何もできず、晴れ着のあの子が見れたらそれでいいのだ。刺身食いたい。

 

そんな呟きを繰り返しながら季節がら、びっくりするくらいたくさんの人にオミマイに来てもらう。オミマイしてやるぜって、嬉しい言葉なのね。

「何か感じるものがあると思って」とデコポンをくれた後輩よ。では聞くが、兵庫出身の君はタコをもらって何か感じるかい?北海道出身の同期が持ってきてくれたバターサンドを、手ぶらでやってきてかっさらってく直属の上司のジャイアンism。千疋屋はとっても美味しかったし、電話で話したあの子の声はとってもかわいかった。親戚のフットワークの軽さも痛感し、持つべきものは遠くの親戚より、近くの他人より、フットワークの軽い親戚だ。ただ従兄弟のけん君は笑かしてくるからちょっと来ないでほしかった。あはは、アイテテテ。

あとサークルの後輩は、れんこんやらドーナツやらぼこぼこに穴のあいたものをくれた。一緒に『アメリカン・スナイパー』という洋画も入っていて、聞けば「これは人に穴があく映画です」とのことで、しばらく頭を使ったボケに対応しておらず、スムーズにつっこめなかったから、穴があったら入りたい。

 

・良くも悪くも、特に立ち止まって考えてこなかった人生なので、ちゃんと書いておきたいと思うんだけど長文はムズカシイ入院7日目。明け方39.3出て院内感染やらインフルやら疑われたけど原因は分からずビロビロに広がったきんたまをぢっと見つめる。

 

・右乳首横にぶっ刺さってた管も取れて退院が見えた入院9日目。この期間、何人もの看護師さんたちに全身を見られてきたわけだがついに意を決した1人の若い女性が声をかけてきて「あの、誰かに似てるって言われません?」「あー、言われますよ」「平井ケンさんですよね」「えぇ、はい」「えへへ」「えへへ」

 

そんなこんなで10日ぶりシャバ。一点、退院って言葉は一転、やさしい。9泊10日手術なしゴハン付き風呂なしクダ付き。シャバの空気は美味かった、ほんとだ。

これからは人にやさしく。自分にもちょっとやさしく。

10日ぶりの我が家は入りきれなかった新聞がドアポストからはみ出し、普通に地べたに落ちていて、あぁまた忙しくなるなと思った。

あっちへ行ったりこっちへ行ったりすることを、僕らは春と呼ぶのです。