心頭滅却すれば火もまたスズシ

わるあがきはじめました。

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穏やかな日差しに春を感じる今日この頃、結婚式を挙げました(約1年前)

楽しい。知り合いと知り合いの飲み会だからそりゃ楽しい。

あったかい。生みの親と育ての仲間がいる宴会だからそりゃあったかい。

一生分の「かわいい」を浴びてほくほくしている妻と、入場の際には顔が引き攣りすぎて「やつは大丈夫なんか?」とのっけから心配させた僕による結婚式の様子をお届けしよう。前に書いたこの続きである。いや、寒の戻り~

 

そもそも結婚式を挙げるとなった時、知らんことだらけの中で最初に2人で話し合ってコンセプトを決めた。「会いに行けるアイドル」のように、プロジェクトに関わる人みなの意思決定の根拠になるのがコンセプトである。仕事で培ったスキルの1つ。

お呼びしている以上僕らが主役!に間違いはないんだけど、だとしてもうちらを見てよイケてるでしょ?ってのは性格的に実はなれなくて、おかげさまでこれまで色んな式にお招きいただいたことから、参加者も楽しんでくれたらいいねって話す。「28と30だからできる式を」がコンセプトに決まった。20代前半の華々しさだけでもなく、コロナを経たアラサーの我々の式である。みんなへの感謝を楽しさで返せたらいいね。あの式楽しかったねって思い出してもらえたら幸せなことだ。よし、そのコンセプトで行こう。

決まった矢先、式を挙げる時には「あ、29と31だね」って気づくのだけど。

 

三谷幸喜監督の『みんなのいえ』という映画が好きだ。ある夫婦が家を建てるお話で、インテリアデザイナー唐沢寿明と職人気質の田中邦衛バチバチ争いながら家を作っていく。振り回されるココリコ田中がとても笑える映画なのだけど、すべての願いを叶えようとしても叶わないわけで。

最初に結婚の挨拶に帰った時、熊本の実家の母さんは「参列者は親戚もみんな呼ぶでしょ?北海道のおじちゃんといとこの○○君と、前橋のおばちゃんといとこの○○、○○、○○、熊本組は~」と列挙し始めてちょっと待って。「それじゃ俺の友達席、親戚で埋まっちゃうよ!新婦友達メインだよ?」と笑いながら突っ込んだら「別にいいじゃん親戚と友達でも」ってマジで言っててめまいがした。「2人の式なんだから」と親父の仲裁に救われた。

とは言え、自分が人より多少面白いと言われる性格に育ったのは間違いなくこの母のおかげなので、「余興でさ、母さんと漫才がしたいんだけど」と打診したら「え、やだよ。」と秒で断られた。やなのかよ。計画通りには行かないのが、計画だ。

そもそも元々は記念日の11月頃に挙げようかと思っていたところ、姉から「実は子どもが産まれるから半年は空けてほしい」とサプライズおめでた。式場の人に伝えてイチから探し直したり。親戚の数が違うと招待客のバランスは難しい。新婦側の友人は妊娠出産もあり出席率も分からない。

こうするもんでしょ?といった当たり前の押し付けはケンカの元で、終わってみれば楽しい記憶で埋め尽くされるんだけど、最初の(楽しい)試練であることには間違いない。

式場見学に行ったとある外資の式場の、ベテラン営業担当はこう教えてくれた。

「いいですかホシカワさん、これから先たくさん喧嘩もします。そりゃ夫婦と言えど他人ですから。ただひとつだけ禁句があります。特に男性の方へ。それは“任せるよ"です。どうか他人事にしないで。“任せるよ”禁止です。」

プロポーズからの人生の転がり急加速ジェットコースター具合は見えないことだらけでも、一緒に冒険していこうという気持ちが強くなった。まだまだ任せてばかりだけど。

 

ドレスの試着も始まって、ヒイキもあるけど可愛くて、思わず「馬子にも衣装!」って言っちゃったけど「褒めてないよ」と指摘され。いやいや違くてなんと言うか、鬼に金棒!ってワードがもう全然可愛くないな。ドレスの試着、ヘアメイクリハ、エステ、髪伸ばしなど女性は本当に大変だ。お疲れさまでした。ひげ脱毛の体験に行ったけど痛すぎて涙が止まらず1回しか行かなかった僕とは大違いだ。痛みで喋れないだけなのに、なぜか聞き上手だと思われたのか、20歳くらいの施術師さんの恋バナをずっと聞かされたの何だったんだよ。

妻は妻で旅先でサバを食べて当たり、特にダイエットをしてなくても痩せていった。「アニサキスダイエット、オススメだよ」って笑ってたけど、そんなんオススメすな。

 

表参道勤務なもんで式場の場所は他がいいなぁと思った。なんとなく祝祭の場所っぽくないなぁと思う街は外した。遠方からの親戚が迷わないよう東京駅近くがいいかもと思った。そんなこんなで100周年の東京會舘も何かの縁。

挙式のド頭はだいぶ緊張していたけど、きゃわいい姪っ子2人のリングガールと、誓いのキスで全然顔をこちらに向けないから急遽唇からほっぺに変更した手違いと、極めつけは入場時は締まっているカーテンが式のフィナーレでオープンし絶景が視界に飛び込んでくるはずの全花嫁の憧れが、寒の戻りの曇天のせいで「え、絶景?何も見えなくない」という薄ら笑いになったおかげで、披露宴は全く緊張せずに楽しめた。曇天の結果、参列者との記念写真撮影も屋内に変わる。

隣に並んだ母が式後の一言目で「立派だった」とか「感動した」とかじゃなく「あんたヒゲ剃ったん?」って聞いてきたの笑った。いや剃ったよ、剃っても生えてくるんだよ。これも31ならではの式かもしれない。

一度は断られた母との漫才も「おれとの思い出を3つぐらい話してくれたら何とかなるから」と頼み込み、何とか承諾いただけた。新婦がサプライズで妹とおばあちゃまに手を引かれる感動の退席の後、我々の出番である。もちろん、一切何を話すか聞いてないアドリブスピーチが始まった。

昔から漢字とか言葉に興味があったこと。体が弱かったから小学校で野球部に入ろうとした時反対したこと。何のメモも見ず思い出をすらすら話すこの人はやはりさすがである。

ところが後半、雲行きが変わる。

「えー、こいつは小学校の頃陣内智則になりたいって卒業文集に書いてたんですね。で、当時、陣内智則藤原紀香と結婚してたんですけど」

僕「いや、あんまこういう場で言わんがいいよ!」バツイチ芸人の話をするかね?普通

母「陣内智則に憧れてるから、これはきっと将来の嫁はノリカか?と思ったんですけど」

僕「やめなさいって!」

母「連れてきた女は、ノリカじゃなくて“アヤカ”でした!」

僕「やかましいわ!!」

と見事に妻の名前も入れながら、会場を爆笑の渦に包みこんだ。

 

場内もしばらくザワザワしていたらしい。普通こんなにしゃべる母親はいない。繰り返すけど打合せもしていない。動画を回してくれていた友人から後で映像をもらって見返したけど、退場するときに一切振り返らず余韻も残さずスタスタ歩いて行った姿は仕事人そのものだった。母さん、改めてありがとう。

本当によくしゃべる母さんで、最後の最後の送賓の際には、義理の妹に「次は○○ちゃんの番だね」と、式後一発目でそんなプレッシャーかけるな、嫌われるだろ!と思いきや、妹ちゃんが好きなジェネレーションズの話も交えて「片寄くんもいきなりだったもんねぇ!」って続けてた。だからなんだよ。笑

母の職場の友人からもご祝儀をいただいて、きっと職場で僕の話をしてくれているのだなぁと嬉しくなった。あたしはあなたの子で本当に良かったよ。

 

それだけ盛り上がった母さんのスピーチより何より、1番会場が沸いたのは親父のスピーチで。おしゃべりな母に比べて真面目で寡黙でどっしりとした親父が最後、両家を代表して挨拶をする。緊張の面持ちで語り始めたんだけど、なんかおかしい。

親父「息子カケルはここに集まったソフトボール部の皆さんのおかげで」

僕「いや、おれ野球部!ソフトボールは新婦だから」ドッ

親父「これから、人生200年時代と言いますが」

僕「ながいな!100年だろ!」ドッカーン!

いや、シンプルに言い間違い強すぎる!

散々、母さんやら余興やらで笑う雰囲気が出来上がった後に最後はちゃんと聞こう、このお父さん真面目そうだし、と空気が引き締まった後で、とんでもない言い間違いを多発することで、もう会場は止められなくなって僕ら2人もアホみたいに笑っちゃった。親父もありがとう。私はあなたを誇らしく思います。

 

実は前日、緊張なのかなんなのか家に帰ったら寒気がして熱37.5の喉痛。妻を心配させぬよう寝室でこっそり体温計を脇に挟んだらピピピッが聞こえたのかキッチンから「なに?体調悪いの?なに?ねつ?」って直前まで心配かけちゃった。翌朝何もなかったように熱も下がりケロッとして、終わってみればスーパー楽しい式であったわけ。

友人代表のスピーチは高校時代毎日一緒に帰ってた2人にお願いした。間違いなく自分が出来上がるまでに影響を受けまくっている2人である。自分でも忘れていた懐かしの細かいネタを吹き出しながら聞いていた。

一方で乾杯の挨拶は野球部時代の頼れるキャプテンに頼んだけど、頼む相手を間違えたかもなと一瞬後悔したやりとりがこちら。

この人、人望も厚くて数多くの式で挨拶してきたはずなのにな

 

余談だけど、ブログも2記事仕込んでおいた。

note.com

note.com

妻が手作りしたメニュー表にこのnoteのQRコードを貼っておいて、お色直し中の退席時間に暇つぶしに読んでね、と誘導する。その後の余興コーナーで新郎新婦によるキャッチコピーのクイズを出して、実はこのnoteを読んでたら答えが分かるっていう仕掛け付き。

元々は僕が友達と夜通し飲んだ時とかに「ほしかわクイズ出してよ」って、名作コピーの虫食いクイズをよくやっていたので、自分の結婚式でできてよかった。類が友呼ぶ飲み会だもんで、考えるのが好きな僕らの友人も面白がってくれててよかった。

そいや、インスタもやってた。こちらはすぐに断念しちゃったけどフォロワーの伸びはそれなりの風速を叩き出していた。もっと僕がcanvaと仲良くなれてたら~

https://www.instagram.com/hanamuko_junbi_now

 

これらが果たして「28と30だからできる式」なのかは分からないけれど、参列者が概ね楽しそうにしてくれていたので十分の出来としよう。新婦側の友人が「あんなに笑った式は初めて」と言ってくれたそうで、KGIは達成かな。

あの日、2次会以降にみんなの飲み会に顔を出した後戻ってきたホテルの部屋で食べた深夜のチキンラーメンの美味さは一生忘れられない。

全てを終えてホテルの部屋に向かう新婦の足取りは軽い軽い。個人的にすごい好きな1枚。

 

今回このブログを書くにあたって色々調べてみたらこんな詩があることを知った。

言葉だけでこんなに心が震えたのも久しぶりで、結婚式の思い出と共に拝借して締めようと思う。

 

祝婚歌」 吉野 弘

二人が睦まじくいるためには
愚かであるほうがいい
立派すぎないほうがいい
立派すぎることは
長持ちしないことだと
気付いているほうがいい
完璧をめざさないほうがいい
完璧なんて不自然なことだと
うそぶいているほうがいい
二人のうちどちらかが
ふざけているほうがいい
ずっこけているほうがいい
互いに非難することがあっても
非難できる資格が自分にあったかどうか
あとで
疑わしくなるほうがいい
正しいことを言うときは
少しひかえめにするほうがいい
正しいことを言うときは
相手を傷つけやすいものだと
気付いているほうがいい
立派でありたいとか
正しくありたいとかいう
無理な緊張には色目を使わず
ゆったり ゆたかに
光を浴びているほうがいい
健康で風に吹かれながら
生きていることのなつかしさに
ふと 胸が熱くなる
そんな日があってもいい
そして
なぜ胸が熱くなるのか
黙っていても
二人にはわかるのであってほしい

 

来てくれた皆様、僕らの人生で出会ってくれた皆様、ありがとうございました。

これからも皆様とこそ、末永くよろしくお願いします。おしまい。