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心頭滅却すれば火もまたスズシ

わるあがきはじめました。

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死ぬようなそれでないにせよ、覚悟は決め、意は決し、腹は括る。

たくさんいただく「がんばって」のお届け先はこちらではなく執刀医さんへ。

生まれて初めて手術をしました。いや、受けました。肺気胸

 

麻酔の説明はやっぱり怖い。下手なお化け屋敷より怖いのは、それが確率論の話だからで、自分がその1/10000じゃないことを願うのみ。

今この教室に不審者が侵入したら僕はどうやって身を守りつつ好きなあの子を守れるか、あわよくばちょうどいい感じの怪我をするかって、男子なら誰でもそういうリスク的なこと考えてきたと思うんだけど、それで言うとあまりに他力本願あみだくじ運任せ。

輸血やらなんやら続く説明。最悪の場合の話に最悪かよってツッコミを入れ、納得してなくても進まないから同意書にサイン。美人の先生の「麻酔科の」って頭につける自己紹介、少し気に入る。僕も思わず「患者の」を付けそうになる。

 

翌日のゲーム(手術)に向け、ユニフォーム(オムツ)が支給される。背番号はなし。サイズはM。

さすがにビビってSNSに吐露すると、自身も手術経験のあるゼミの同期のクールボーイからリプライ貰って曰く「痛みを受け入れると楽になるよ!」って宗教的哲学的な励まし。

 

昨日は眠れましたか?ってこれマストで聞かれる手術当日の朝。案外、寝られたから、そんな執着ないかもしれない。

田舎から母が来てくれるものの、凍狂の電車に飲み込まれぎりぎりになる。ちらりと見送る姿から、多分違うけど赤紙というワードが浮かぶ。

扉の向こう側へ、小さくて大きな1マス進む。

 

「今日は何の手術ですか?」「どちらの肺ですか?」という質問も、事前の傾向と対策はバッチリで。なんならすでに右の鎖骨に☆印のカンニング

病室の貴重品の鍵やメガネを預かるおばあちゃん看護師さんがいれば、「麻酔科の」って例の美人先生もいた。「クランケの」って返しそうになって止めた。10名くらいに見送られ向かう。扉の中に8つくらい手術室があって、その中の6と書かれた部屋に入る。案外、明るい。

スピッツが流れていた。案外、明るい。ちょっと面白かった。詳しくない僕でも知ってる曲だったので多分あれベストだ。野球選手が試合前に球場に好きな音楽をかけてアップを行うみたいなもんで、そのハイパフォーマンスへのルーティーンに共感した。

痛み止めを打つために背中を丸めて差し出すこれが痛い。右乳首横にドレーンの管がつながれているまま、ベッドの上で体位を変えるこれが辛い。ソープものAVで見るようなモコついたベッドの上ではなかなかに体勢を変えられない。背中への注射は新鮮な痛みだった。そもそもずっと四六時中、右乳首横の管がむずむずしているのでこれで1本撮れそう。

 

右腕に、3分に1回膨らむ血圧測るやつ。右指先に酸素量測るやつ。左腕点滴。右乳首横にドレーンの管。頭は給食室のおばちゃんキャップと恐らく脳波的なの測るやつ。背中から痛み止め流すやつ。

これどうしたの?って僕の左肩にある痣について話しかけてくるくらいアットホームなオペ場です。7、8回右腕が膨らんだから20分ちょっと経った。整った。いざ、手術!

 

「麻酔流します」って流しそうめんみたいなプレイボールと、左腕から流れるひんやりに気付いてボーっとしてきて3秒。落ちる。前述のゼミの同期のクールボーイの言葉を借りると「ちょっとしたタイムスリップ感」を味わう。

手術自体は2時間程度で終わったらしいが、目が覚めたのは4,5時間後くらい。切り取った肺の一部を母は見たらしい。確かに白い風船みたい穴が開いてたよ、と。あぁそうですかまぁなんにせよ生きて戻りましたよ、と。

痛みに魘されると聞いていたもののそこまでひどくはなかったけれど。部位が部位、背中と肺なので、動けないし、息苦しさはどうにもこうにも。「痛みを受け入れると楽になるよ!」の真理を目の当たりにし、彼をますます崇拝する。

 

うつらうつらしたままスマホを開くと、

「昨晩の件、ふとした会話のときに「彼氏は今はほしくない」と、ぽつりと言われたので今回は告白やめました」って、愚直な後輩から恋愛相談のLINEが来ていて、あまりのアンマッチ具合にそれ術後の今じゃなきゃダメかねと笑う。

とは言え大げさな話、一度死ぬ覚悟をした手前「好きか嫌いかそれだけ聞かせてください。先のことは分からないですけど、いま僕が好きなのはあなたです。」なんて台本を返してみる。病気とか地震とか出会いとかケッコンとか、今年はいろいろアクシデントが多すぎる。せめて後悔しなさんなよと伝えるも「ロマンチストな言葉ですねぇ、、、!」と変な感じになったのでもう二度としない。こいつにはこれからLINEの初期設定のスタンプしか送らない。あれ使ってる人見たことないくらい絶望的にダサイし。

「2度目の入院だし今度こそナースを口説け!」なんて余計なアドバイスをしてくる友人がいれば、のど飴ホールズをくれた友人もいて、みんなちょっとバカにしているので、また明日からがんばろうと思う退院前日。「お見舞いいこっか?」って言ってくれるだけで嬉しかったりする。あとはもうヘロヘロになった今だから言えるけど「大丈夫?おっぱい揉む?」ってこれほんと魔法の言葉なので誰か録音でいいのでお願い申し上げたてまつりありをりはべりいますがり。

 

がんばってくれた病院の皆さまと、心配してくれた皆さまと、自分に感謝します。