心頭滅却すれば火もまたスズシ

わるあがきはじめました。

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かの有名なタモリさんはこんな言葉を残している。

「名言は好きです。でも、名言を言おうとする人は嫌いです。」

 

夏休みの始まりを告げる、引退の言葉だってさ。夏祭りの終わりを告げる、花火の帰り道だってさ。マイク向けられ、はいさぁ今です。人間ここでカッコイイこと言いたいナって時がある。そんな時出てくる言葉でカッコイイことなんてそうない、そうそうない。そんなもんだ、そんなもんだと思ってる。言葉なんて雑魚で無力で無意味で不足で、そういうことがあって、それはもう察する側、受け取る側との何度目かの共同作業で、愛しいじゃんか、愛しいじゃんかって思ってる。

 

小4、僕と同じタイミングでこの町に越してきたアッキーは、ワードチョイスが目新しくてすぐに仲良くなった。彼の情報ソースは塾の先生だったり、ちょっぴり大人のマンガだったり、少しマセてたのがよかった。『こないださ、家族で外食しててさ、「絶妙ですねぇ」って言おうとして間違って「微妙ですねぇ」って言っちゃったよ。』みたいな味わい深いトークで笑いを取ってくるやつ。保護者たちが指差しながら〇〇君可笑しいよね~って笑うそういうやつ。今の僕なら、そのオチ「軽妙ですねぇ」って被せたりするのかな。

当時の僕の愛読書が『ズッコケ三人組』だったのに対して、彼は『ダレン・シャン』読んでたのカッコよかったし、もっと言うと『ミッケ!』だったのもとても憧れた。あの世界的なさがしっこ絵本『ミッケ!』の出題文の温度感と距離感が僕はとても好きだった。千原ジュニア師匠もエッセイの中で「人間のコミュニケーションはすべて距離感である」的なことを仰ってる。キョリカン。命令口調なんだけど、温かみのあると言うか。

「まず ふんすいは すぐ みつかるね。

うまが 5とう。きつね。
がちょう。しまりす。
ひつじ。いぬ。
おおきな つのの へらじか。」

みたいな。んでこれ、調べたら、翻訳ナント糸井重里さんだったのかよ!鳥肌が立った。知らなかった。『ミッケ!』というタイトル訳も糸井さんで、人間のゲンタイケンの強烈さを改めてまた1つ味わう。

 

話を戻す。

僕と親友アッキーと、親友トモティ―で「キューピー」という遊びを作った。

自由帳にマス目を引いて、陣地を作って、山とか障害物を置いて、攻撃はじゃんけんでダメージを食らわせる。それぞれキャラクターがいて、1ターンに2マス進めることができる通称「2マス君」や、爆弾を仕掛けることができる「じらい君」、弓で遠隔から攻撃ができる「弓君」、障害物を飛んで超えることができる「とべる君」など。将棋のような各キャラのルール設定をアッキーが行い、キャラクターデザインは僕が担当する。そういう遊びを作るのがアッキーはとてもうまかった。知的なガキだった。仕掛ける側だった。ヒットコンテンツメーカーだった。

ちなみにこのゲームがなぜ「キューピー」かと言うと、当時親父から教えてもらった「誰かのお尻に穴あいて~♪」という、あまりに衝撃的な歌詞から始まり、最終的にキューピーの偽物みたいなのが出来上がるという絵描き歌に僕がドはまりして、教科書やノートのいたるところにそのキューピーの偽物を書きまくっていたからである。お尻に穴があくってなんだよ。もうとっくにあいてるよ。キューピーは1つの休み時間では到底終わらない、長考ゲームになった。残念ながらドッジボールに比べてものすごく地味ゆえ不人気で、ナガタとオカザキしかプレイヤーが増えなかったけど。

 

そんなこんなで、新しい友人アッキーに影響をうけまくっていた僕に11月、さぁ誕生日がやってきた。もう、ワクワクである。このアッキーという男は一体僕に何を仕掛けてきてくれるんだろう、と。我ながらやらしいガキだ。祝われる側の表情を研究しているような相変わらずやらしいガキだ。

 

誕生日カードをもらった。手作り、かつ開くと飛び出してくる立体型の、実に手の凝った誕生日カード。開くといくつか手書きのキャラクター、そうキューピーたちだ。なになに、右端に文字が書いてある。

「まずキューピー5体はすぐみつかるね。

じらいは恥ずかしがり。

あくびをしている弓はどこ?」

 

、、、最高だ。

むちゃくちゃ楽しいバースデーカードをいただいた。心がハシャグとはこのこと。夢中で謎を解き進めた。ミッケ!見つかったのはキューピーたちだけどそれだけじゃない。きっと彼が見つけたものは僕の心だったのかもしれません。いや、まぁそれは今取って付けた嘘ですごめん。

 

全問解き終えて一通り楽しんだ後、改めて立体で飛び出した90度の裏側を覗いてみる。おいおい何やら文字が見えるではないか。一旦開いてまずはミッケに夢中にさせておいて、最後にお祝いメッセージを残してるとは、いくら何でもこの子、粋すぎやしないかい。

ハヤル気持ちを押さえて、声に出して読んでみる。

 

「ブリブーめでとう。」

 

は???????

 

はい??????

 

「ブリブーめでとう。」

 

なんじゃい!である。もう、なんじゃい!である。

それホントに伝えたかったの?今じゃなきゃダメかな?強烈な肩透かし。意味のない日本語。急角度のブリブー。理解が追い付かなかった。言葉にできなかった。

「ブリブーめでとう。」

 

余談だけどアッキーはその後、いわゆるアタマが良すぎてぶっ飛んじゃって。のちに中3になって、久しぶりに近所のブックオフで再会した時には、俺こないだチャリンコで4日かけて九州を飛び出しちゃったよ、へへって言ってた。神社とかで野宿をしてたらしい。そう、彼とブックオフで再会したあの日も、今日みたいに暑い暑い夏の日だったことを思い出す。彼は今たしか、三重のほうで神主さんをしているらしい。改めて、会いたくなった。楽しませてもらったんだもの。今度はこっちがミッケ!なのかもしれない。いや、今のはいいでしょうよちょっとくらいさ。

 

「ブリブーめでとう」

「ブリブーめでとう」

そんなもんだ。そんなもんだって思ってる。

愛しいじゃんか。愛しいじゃんかって思ってる。

 

そんなこと考えながら、お昼にモメてしまったお客さんへのお詫びメールを作るのだ。言葉って難しい。上手く伝わらない。できるだけ胸の真ん中目指して丁寧にあがき続けるのだ。

 

えー、このたびは私のご説明に不足点がございまして大変失礼いたし、いや。

ブリブー失礼しました。

 

おしまい。

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