心頭滅却すれば火もまたスズシ

わるあがきはじめました。

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3年前も2年前も、毎年この時期記憶を失っている。まったくもってスマートじゃない。

 

水辺にボールが落ちちゃったとき、まったくためらわずびちゃびちゃになって取りに行くってやつガクセイのころからよくやってて、こないだ会社のバーベキューでやってみたらスーンってダダすべったんだけど、上司のお子さんたちにはめっちゃウケました。

良かったです。

んで、スマホが亡くなりました。

 

年々何かを失うリスクは大きくなる。

ちびっこのころは雨に濡れてもつゆしらず。「雨が降ってきたからって走ることはない。走ったって先も雨だ。」って坂本龍馬の名言も、え、いや一刻も早く屋根の下行きたくない?ねぇねぇ行きたくないぜよ?

まったく電源が入らないiPhoneの何がスマートなんだ、まったく。黒い機械のかたまり、ここはどこ私は誰君の名は。びちゃびちゃのおズボン、ジュクジュクのVANSを引き摺って帰宅して、えーいすっぽんぽん、PCに打ち込む「スマホ 水没」。スマホ すの時点で予測変換に出る水没の文字、服着ることも後回す鏡の自分の姿見て、ははーん、さてはお主溺れる者だなってうるさいよ。すがるよ藁にも萱葺にも。

いくつかの解決策と言う名のデマを潜り抜けたところ、一番怪しいお米に入れるっていう今日の献立風ソリューション。なにやらお米って吸水力高いんですって奥さん。あらやだ知らなんだ。用意するものはジップロックとお米三合、そして隠し味でありメインディッシュ。何一つリアクションを取ってくれなくなった、そんなあの子の思い出もたくさん詰まったiPhoneをさっとね。んでシャカシャカ振る。あ、うそ、シャカシャカはちょっとレシピっぽくしただけ。

 

ジップロックの艶めき、スマホの通夜めき。穴と言う穴に米粒が入り込んで、ずいぶん攻めたプレイね、ジョブズもびっくりイヤホンジャック米。なんだかもうこのころにはちょっと愛しさすら覚えてきて、わしゃわしゃわしゃーって愛でてたワシゃ話者。そんなことをしてもこいつが生き返らないってのは分かっていたんだ、ほんとはさ。きれいな顔してるだろ。嘘みたいだろ。濡れてんだぜ、それで。なんて繰り出すとだいぶ破廉恥、青春の日々。何も言えねぇ。し、お米まみれのそれをひたすらワシャつく、チョー気持ちいい。

 

失って初めて気づくっていう人類がひたすら繰り返してきたベタをもう何周目か、通る。世間も2016年、色々あったみたいだけど個人的にも今年は、おばあが亡くなったり、肺に穴空いたり、姉がケッコンしたり、10年ぶりに自分にとってアイドルみたいな同級生と再会したり、言葉があまりに追いつかないくらい感情を揺さぶってきてたから、

2年分のおはようも、お疲れ様も、ありがとうも。あんま言った覚えはないけど好きですだって、あと多分言ったことないけど友達からお願いしますだってなんだって全部四次元の彼方に消えてった。あーあ。の次の言葉も出てこなかったから、きっとそれすら四次元の彼方に消えてった。あーあ。あーーーあ。

 

新人は5日後くらいに入荷して体験入店。あまりにまっさらで途方に暮れ、一から一つ一つ(アプリ)入れるもぎこちなく。電話帳すら誰一人いなくなり、ここはどこ私は誰君の名は。2回目。何かを失わなきゃ何かを得られないっていうなら、過去を見ながら後ろ歩きで進んでるような僕にとってはそれくらいのショック療法が必要ってことか。そんなこと考えながら「モノより思い出」ってコピー、偉大すぎるなって思う。

 

どんなに笑ったお写真も、心あったまるメールも、ふと気づくと向こうは1,2行なのに僕だけ3、4行で全然釣り合ってないLINEも、メアド変えましたってメーリス回ってきてアドレス見てがっつり破局してますやんって吹き出した電話帳も、形あるものはいつかなくなる。

次へ次へと持っていけないのなら、ただひたすらに心にあっためてぎゅっとして大事にするもよし、たくさん引き出すもよし。本当に好きな人なら数人だけだけど、スマホなんてなくても誕生日とか忘れないもの。一緒に過ごした時間は、写真1枚じゃはみ出すし。新しい思い出作りましょう!って、忘年会しましょう!って誘って、いや忘れる気満々やん!って笑われる。16よりも32よりも64よりも大きな脳みそで、間に合わなくなるくらい、いろんな人と思い出を作って行こうと決める。

 

最後にこれだけは憶えていてほしいんだ。たったひとつのメッセージ。

本来ちゃんとやってりゃ、バックアップってのがちゃんとあるんだけどね。