『毛先だけ定期的に整えにくる客の女性・陶子と交際することになった美容師の「僕」。しかしどこにでもある顛末、すれ違いや口論、「僕」がふられる形で別れてしまう。
それなのに別れて1ヵ月後いつものように陶子は髪を切りに来るようになる。正直毛先を整えるだけなんて誰が切っても違いはない、なのに。驚きのあまり言葉が出ない。質問は敬語になり、陶子も敬語で答える。
その翌月も、その次の月も。いったいどういうつもりなのかと腹を立てたこともある。それでも。
束の間あずけられる髪を切りながら、僕は何をやっているんだろうと思う。何かを問い質すことも、もう来ないでほしいと言って彼女の気持ちを試すことも、自分の感情を打ち明けることもできず、ただ過ぎた時間の分伸びた毛先を切ることしかできない。
切り終わった後、いつも少しだけ鏡越しに見つめ合う時間がある。そのどうしようもない距離にうちのめされながら、僕たちは裸で抱きあったことさえあったのに、と思う。』
いつかの正月、ふと新聞の別紙に、嵐の5人をモチーフにした短編小説。
その中の松本さんのお話をたしか、いや、調べたところ川上未映子さんが書いていた。
あらすじはこんな、それはそれは美しいお話。失敬、他の4人のは覚えていないほど。
距離とか温度とか空気とか。シンパシーとかテレパシーとか。
よく言う「2人にしか分からないもの」って
いや、もしかしたら2人にも分からないものなのではないか、と思うのです。少なくとも「僕」は。
ドウソウカイのドウソウセイ。
たしか、いや数えたところ1年半ぶりに、昔お付き合いしていた方に会いました。会えました。
振られて以来。
久しぶりのその月日の何倍一緒にいたんだっけ。近頃モノ忘れモノがひどくて。
思い出せないな。
思い出さないよ。
そうしてるのさ。
結論から言うと、
「良かった~まだ毛がふさふさしてて!」と、
「あたし今度タイ行くよ、あなたの故郷の」をいただきました。
相変わらずふざけた人でした。話しかけてくれて嬉しかったです。おもしろいんだ、ほんと。大好きだったなーって胸が熱くなりました。
会自体大盛況。
おじいおばあが母校を讃え、
おじさんおばさんが笑みを湛える姿は、
日が経てば経つほど戻りたくなる反比例の法則。
いやいや僕は戻ったところでカーストの中ではぎりぎりヴァイシャ。
バラモン・クシャトリヤの皆々様を必死で笑わせ居場所を得てきたような青春でした。
でもよかと、恋しとったけん、初夏の風。
(showkakeru心の俳句)
会ったら何話そうかとか、仕事大変そうだから小ネタ仕込んでいこうかとか、どんな顔しようかとか。
そんなこと必要なかったみたいです。すぐいじられました。
それが僕らの距離、温度、空気。
誕生日おめでとうくらいの関係になるのかしら。facebookは友だち申請してみてでも、やっぱり10秒で取り下げました。
それが僕らのシンパシー、テレパシー。
たまのたまにさ、ここだけの話だよ
「仕事で失敗して凹んでるから最近のついてない話聞かせて」って急角度のLINE。
いやもう「僕」にはさっぱり分からないよ。
職場の東大の後輩がどうも俺の話だけあんまりメモを取らない、って2秒で返信したけどさ。
共通の友人に送るからって、2ショットを撮られました。
俺にも送ってって言うと、いやって言われました。
いやもう「僕」にはむずかしいすぎるよ。
「気まずくないの?」って同級生のお綺麗ガールズ、お心遣いありがとう。
気まずくはないよ。気まずくなかったよという発見も。
ただ願わくばこの気持ちに名前を付けてほしいな。
居場所がなくてぐるぐるしてて、何も手に付かないのです。
振ったんだから、シアワセになれよコノヤロウ。
いつでも阿保みたい、笑わせるぞコノヤロウ。
あなたにカスタマイズされた「陶子」を壊すのもまた作るのも
一に苦労で、二に苦労、三四がなくて、五にもうケッコンしません?
『ずっと好きだった』も少し違うから、はー、もう自分で曲書きますか。謡い出しはこれかな。
でもよかと。恋しとったけん。初夏の風。