心頭滅却すれば火もまたスズシ

わるあがきはじめました。

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広告。文字通り、広く告げること。

先週、とある投資信託の会社が表参道駅をジャックしてこんな惹句で広告を出していた。曰く、「もっと、お金の話をしよう。」。つまりはお金に目を向けてね、投資してくださいねという話。南青山の感度の高いファッショナブルな女性に向けた広告であったわけだ。

勤めて5年目の表参道はそりゃたしかにファッショナブルで、特に土曜日なんかは結婚式も多く、美男美女に囲まれることもままある。タレントさんも多く歩いてて、神さまのような糸井重里さんを度々拝見することがあったし、昔からテレビで見ていた辛口映画評論家おすぎさんとすれ違う時には、どうぞお願いお手柔らかになんて、なんでだか僕から会釈しちゃったこともある。おすぎさんをキョトンとさせてしまったことのある一般人は、そんなに多くはいないはず。

その先に名うての美容院があるのか、表参道を歩いてる美人が次々に曲がってく角があって「あれ知ってる?あそこ、美人が曲がる角なんだよ」ってこないだ後輩に言ってみたら「まじでなに言ってんすか?」って心配されちゃったりして。

 

話が逸れた。
「もっと、お金の話をしよう」という呼びかけがどこまで機能したかは分からないけども、今の自分の気持ちを真夜中にシンプルにそおっと書いておくとすると、「もっと、仕事の話をしよう。」である。

 

ヒット作連発の名編集者、幻冬舎箕輪さんは「仮に給料が0円でも幻冬舎の仕事を辞めない」と仰っている。日経新聞で読んだけど、ロイヤルホストの黒須社長はよく社員に「Do you like your job?」と聞くらしい。身の周り、仕事のデキる先輩の『「なるべく働きたくない」っていう人がたまにいますがそれってほぼ「なるべく嫌なことしたくない」ってことだと思いますし僕も全く同意なのですが、だったら楽しい仕事をするか楽しく仕事をすればいいのかなと思っています。』というSNSへの投稿。それこそ大学4年、広告業界に内定をもらっていた僕の不安を少し溶かしてくれたのは、当時糸井さんが開催していた「はたらきたい展」だったりする。「仕事を聞かれて、会社名で答えるような奴には、負けない。」というリクルートのコピーに何度励まされただろう中小企業の誇りもある。

僕なんか「はたらきたい」と心から思えるようになったのは本当に最近の話いや、もしかするとまだ大いに強がっている部分も多い、かもしれない。そんな中、今週開催されているアドバタイジングウィークアジア(AWA)にて、博報堂岡田さん×電通梅田さんの対談を聞かせていただく機会があった。テーマはズバリ「広告作りとは、何を作っているのか?~僕たちの専門性と活動領域を再定義する~」。お2人が語る数々の金言をまとめながら個人的に今静かに燃え上がっている情熱を形にしたい。

そう、もっと、仕事の話をしよう。

 

①広告作りとは何か

梅田さん「物性→価値→実感」。

当時29歳、あるおむつメーカーさんとのお仕事。

「物性」この場合、おむつの吸水力や素材の特徴はオリエンなどでよく分かるけれども、自分に子どもがいないのでやはり最後は分からない部分も多い。そこで、赤ちゃんが生まれた知人の家に住み込み観察を行うと、ここにはテレビCMに描かれているような赤ちゃんとお母さんの笑顔は微塵もないことに気付く。そこにあるのは、この子の命を守らなければならない、と必死なお母さんの姿だった。

そこで「価値」の再定義。こんにちは赤ちゃん私がママよ♩の多幸感だけじゃなくて、実際に今の人たちが持ってておかしくない課題、悩みを入れ込んで、同時代性を持っておむつの価値を再定義することで、私もそう思ってた!といった多くの実感を得ることができた。

曰く、本質はすごく大事なこと。性質は目が囚われがちなこと。この2つを分けて考えなければいけない。本質の中にある性質を再定義すること。繰り返し仰っていたのは、そもそも広告は今の時代になぜ必要か?ということ。つまり「同時代性」というキーワード。

 

一方の岡田さん「意味を創る→表現を作る→媒体で広げる」。こちらは広告マン目線でやりがい魅力を語られる。新人の頃、当時引退間際のベテランクリエイターが登壇した社内コピーライティング教室で「今までで1番成果のあった仕事はなんですか?」と質問したところ、そのベテランから返ってきた「僕、”熟年”って言葉を作ったんだよ」という答えにとても感動する。それまで歳を重ねることは”老いる”というネガティブな表現しか存在していなかった中で、熟練されていくようなポジティブな印象を与える、そのことがとても印象的だったそうだ。岡田さんは、今、広告の仕事が面白くないと思っている人は、媒体や表現だけしかやってないからかもとアドバイスをされる。


②この仕事の専門性とは何か
梅田さんはズームにされたハートの絵を投影する。一見、何か分からない。画面が引いて引いて初めてそれがハートであることに気付く。つまり、「超局所的な密度の濃い情報をもらった時に、実はここなんだ!が言えるかどうか」。そしてそれを「価値への補助線を引く」と表現された。与件やブリーフから表現案に向かいがちだけど、価値、課題、同時代性に向かっていく考え方もできるのではないか。

ここで、長年担当されているジョージアの缶コーヒーのコピー「世界は誰かの仕事でできている」について話される。コンビニコーヒーの台頭の中で、いかに売り上げを下げずブランドの存在感を高められるか。普通は味、美味しさ、コク香り、確かに変わったね!といったメッセージになりがちのところ。しかし、美味しいよ!だけでは当然大きい流れは作れない。

そこで、そもそもなんで缶コーヒーってあるんだっけ?なんで今こんなに街に自販機ってあるんだっけ?という疑問点から本質にある価値を掘り下げる。このあたり、僕の知るコピーライターの先生は「禅問答のように」と話されていたことを思い出す。

そこで気付く。ジョージアは決して味だけを提供しているわけではない。そこには”前味”ってのが存在する。つまりそれまでの頑張り次第で味が変わる。缶コーヒーを飲む瞬間の気持ち。きっと、頑張った自分への労い。そして、そこにはその人の労働がある。そこから「世界は誰かの仕事でできている」にたどり着く。

そんなの、商品開発の担当者を信じていないとできない仕事だと思う。なぜこれが存在するかを信じている。世の中のこういうことのためにこの商品は存在していると信じているその姿。聞けば梅田さんは広告を考えるときに「なんでその仕事をしているんですか?」と担当者に入社動機まで聞くらしい。なぜこの会社を、あなたの人生をかけて手伝おうとしたんですか?と聞くらしい。商品広告より、商品にかける思いを広告している。だからきっと、伝わる。何より、コカ・コーラの社員さんにもこのコピーはとても嬉しかったと思うのです。コピーって受け取る人の感受性とか感性とかを信じて書くしかないから、伝わったときすごく嬉しいと思うのです。

 

岡田さんは、水が半分入ったコップの絵を映す。この絵を見て、半分しかない、ではなく半分も入っている!と思うこと。これがこの仕事の専門性であると。さらにここで終わらせない。半分”も”水が入っているからこそ、もっと長く走れるかもしれないし、そこからきれいな花が咲くかもしれない。とポジティブに変えていく。つまり、○○しかなくて、、、をポジティブに変えていくこと。もっと言うと、相手の頭の中の視点をポジティブに変えていくことが専門性だと話された。

以前、元電通の石川さんというコピーライターの方に「なんでコピーライターになったんですか?」っていう小学生みたいな質問をしてしまったんだけど、その答えがカッチョよくて素敵だなって思いまして。 「新聞学科で将来は記者を目指していた。でも、世の中の正義を暴くとか、勧善懲悪とか。どこか性悪説の考えな気がして自分には向いていないなと思った。そんな中コピーライターという職業を知った。いいところを見つけて前向きに言葉にする。ちょっといいよねって人に広める。性善説な感じが自分に合っていると、そのとき思った。」という話ととても近いと思った。

 

③今後どういう方に向かって行くのか
梅田さん「最先端&最前線(領域を広げる)」
最先端はデータマーケティング。会社や業界としては最先端に向かうべき。ただ個人ベースで見ると、広告で培った領域を広げて行くことができる。例えば自身が行っている猫の里親活動を例に挙げ、クライアントがいなくても自分の課題意識から、広告(的ソリューション)をしていい。そこに同時代性を考えると良い、と話されていた。

 

岡田さんは「合気道」のスライドを映して語る。なんだかんだ広告は相手がいた方がいいスポーツ。個の技を極める柔道剣道じゃない面白みがある。そのために危機感を持って変えなきゃいけないと思っている人たちに自ら会いにいくこと。現場を探しに行くこと。経営者に直接考えを伝えて、確かめるべきだと話されていた。

 

④最後のメッセージ

梅田さん「若者よもっとはみ出そう」。ここではない何処かへ行こう、ではない。どこかで得た力を使ってその領域を広げて行く。最近は「塗るべき塗り絵」を塗らずして、外の方に行こうとするもったいない印象。武器を持ってから、次の取り組みに行ける。何も持たないであの仕事やらせてください!は無理。職能を自覚し、展開する。本質的に価値を作る、見つける、同時代性を読む。正しく理解する。

 

以上。45分があっという間に過ぎていった。

世の中を少しでも良くすると信じて商品サービスを0から立ち上げる広告主の情熱と、それをどう広めようか価値の再定義や方向付けを行うアイデアマン揃いの広告会社と、コンテンツで惹きつけて届けてくれる群雄割拠戦国時代のメディアと、なにより忘れちゃいけない見る人の心を打つクリエイターと。業界の末端ではあるものの誇らしい業界にいると感じたし、もっともっともっと役に立ちたいと思う。

そりゃ今どきの若者だ、仕事楽しい!なんて手放しで言ってるやつは全く信用ならないし、僕も腐ってた社会人2年目なんかは今思えば同期のグループLINEを勝手に抜けたりもしたし、「やりたいことやろうぜ」「好きな人モノ͡コトには好きって言おうぜ」なんて昨今の空気感には実力もメンタルもついていけないし、なんなら告白する前から振られてるみたいなことばっかりだけど何の話だ、前を向いてやっていきたい。

聞いてください。さんはい

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