心頭滅却すれば火もまたスズシ

わるあがきはじめました。

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楽しい時間は過ぎるのが早いと言うのなら、

あっという間の築いた時間は、楽しい時間であったと気付く。

 

3年目をやっている。

あっちへ行ったりこっちへ行ったりすることを人は「春」と呼ぶのです。桜は散るのは一瞬で、あの花びらはどこへ行ったんだろうと気にかける間もなく、街に緑が押し寄せるから、僕らはよく楽しいに置いていかれる。

常々、スーツのコスプレをしてサラリーマンのごっこをしていると思っている僕は、同期入社の出世はなんだかとってもオツでした。とは言え今年もニューフェイスが入ってきて、シャカイのロケット鉛筆が回転する。ありがたいことに上が詰まっていないのに、僕のトンガリ具合じゃまだダメだということを、ようやく感じる突破力。

世間じゃ5月の風が吹き、新人に便利な言葉「5月病」。自分の生産性の低さを、寄らば大樹の陰。なんでもそう、名づけることが居場所を与える。「肩凝り」だって夏目漱石の発明品。

「モチベーションなんて言葉はプロじゃない」って経営者の方のお言葉も、理解できるようになる3年目。プロ野球選手は野球をやっているんじゃない、仕事をしているのだ。なんて考える。とは言え今年もニューフェイスが入ってきて、モティベートしてあげる。長くなりましたが、そんな話を。

 

飲み会。「なんで働いているんですか?」っていう愚直な新人からの質問に「なんで働いているんです」を話す。

思い返せばシュウカツの時、いろんな人に会いたいです!しか言ってなかった。最終面接で、いろんな人に会えるよ!って副社長に言われたのでこりゃいいやって思った。諸々の知識のなさが、のちにまぁ今でも首を絞めることにはなるんだけど、それはまた別のお話。

 

水道橋博士が芸能界のルポライターになりたいって、楽屋のエピソードとか芸能界のいい話をメモしてるのにすごく共感する。

メーカーさんのモノづくりへの想いって、本当にすごいモノ。さらに言えばモノよりコトの世の中、以前書いた「サケで世界中の人を笑顔にしたい。大げさかもしれないけど」の意味がようやく分かってきた3年目。

216 - 心頭滅却すれば火もまたスズシ

世界は手に負えないくらい広くて、僕らが生み出せる幸せはとってもちっぽけで。それでも僕が、よし行くぞって着こなすスーツにも、時間通り着いてくれよって乗り込む電車にも、今日も疲れたなって喉を通るビールにも、あほ面白いなって笑っちゃうテレビ番組にも、それぞれ「OK、このエリアの幸せは、笑顔は、俺に任せろ!」って、数えきれないほどのみなさんが働いている。企業の利益は、社会貢献の先にある。感謝するのって、どうやら親だけじゃないみたい。

そしてそんな世の中のちょっといい話を、もっと伝えたい広く知ってほしいって情熱を燃やすアイデアマンが豊富な業界があって。

そしてそんな彼らのちょっといい話を、もっと伝えたい広く知ってほしいって情熱を燃やす僕がいて、だから、誰にでも会える今の会社に勤めているんだと思う。

そしてそこにはこんな原体験があって、ナカムラさんにも感謝してます、元気してるかな。

122 - 心頭滅却すれば火もまたスズシ

 

この春は、入院したり、地元が揺れたり。僕自身も石の上にも3年目。少しはあったまってきたかな。地震のせいでしばらく自宅待機していた母からの「ちゃんと仕事していないと、休みも楽しめないわけで。」ってメール、きっとなにかの正解。

20代は、いい30代を過ごすための予行演習だとしたら、たくさん引っ張って、体壊さないほどに引っ張って、、、

チョロQビューン!

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ここ数日の心の動きは何かに残しておこう、からっきし役に立てないということも含め。

 

育った街が揺れに揺れ、「余震400回だって、もう一生分揺れたよ」って親父からの電話の3分後にテレビに字幕、緊急地震速報。親父、次の人生分も揺れてる。

水を買う文化がないくらい、水道ひねればミネラルウォーターが出る街なんだ。水が合わないを理由に田舎へ帰った人を何人も知っている。死活問題。生きる干からびる問題。給水の情報は流れてきても、水はまだ流れてこない。

幸いなことに、家族で家にいるらしい。建って10年くらいの準新築の部屋中の壁に、イカヅチみたいな亀裂。送られてきた僕の部屋の写真はマンガ棚がぶっ倒れてて、F先生と水木先生と手塚先生が夢のコラボごっちゃごちゃ。帰ったら交通整理してあげないと。

ショッキングだったのは食器棚がシンクの上にぶっ倒れてて、バッドデザイン賞使いづらいというか使い物にならない。お皿の生存確認はひと段落したらしい。靴って大事だ。家の中でもあっちゃこっちゃガラス片。

Facebookの情報を僕がチェックし実家にリポートする日々。テレビでは高校の同級生が僕ら視聴者にリポートする日々。ものすごい胸が打たれる。当たり前なんだけど人の役に立っている人は、寝てない自慢なんてしない。医師の友人の使命感もまた。

それに引き換え「情報格差がすごいと思います。」って友人が呟いていて、まがりにも情報を届ける仕事をしている端くれの端くれとして、ものすごく無力で悔しい。そうだ。その通りだ。おじいちゃん、おばあちゃんの誰が、市の公式アカウントをフォローして@をつけてリプライをしたり【拡散希望】をリツイートしたりするだろうか、いや〜ない。超くやしい。メディアのあり方は今回もまた、給油横入りやプロペラの騒音など疑問視され、むらじゅんさんがまっとうなことを呟いている。

必要なものリストにある「帽子」は、この中で仲間はずれはどれだゲームをしたら真っ先に選んでいたと思うんだけど、避難所の生活を想像できればすごく必要だと分かる。ついこないだ入院し、お風呂に9日入れず、若い女性のカンゴシさんに、べたべたで香ばしくなった自分の頭皮を近づけさせるのが、右乳首横に管ぶっ刺さってることより嫌だったのだから。同時に僕らはよくわかってなかったけど女性のことをもう少し知る必要があるなと思った。まだ僕には姉貴がいるんだけど、本当に男兄弟しかいない友人は、女性はおならしないってけっこう本気で思っていたりするし。そういう用品がなんなのか、キョリカンはとてもムズカシイんだけど知っておかないと。

あと避難所では、声を出せる場所を作ってあげるのも大事。ちびっこは泣いてもいい。叫んでもいい。感情をふさぎこませず、一緒に遊んであげようと思う。幼稚園で習う歌を、もう一度復習しよう。ずいぶん昔、親父に「ゲイニンになりたい」って言ってた一時期、いつも彼からの答えは「いいよ」でも「だめだ」でもなく「パッチ・アダムスになれ」だった。平和のためにクリエイティブになる。例えば、死の床でアメイジング・グレイスを歌う。また地震が来たら、ふとっちょのあいつのせいにしちゃっておいやめろふとっちょ、いや俺じゃないよあははと笑おう。

 

それで言うと我らが熊本のヒーローはまさにそうで。くまモンが何も呟いていないことを受けて熊本県ブランド推進課の方のお言葉、参照ネットニュースはもう何も言えないくらい感動した。

「飲まず食わずという人がいて、ほかに注力するところがあります。まだ、くまモンが動くのは時期尚早だと思っています。ただ、くまモンは県の幸せの象徴。避難所の訪問など、必ず役割はあると考えています」

 

Facebookはやや感情的だから、ちょっとお腹いっぱい。お写真と長文と、持っておくべきもの、やっておくべきこと、気づかい、不安、デマ全て。一方でTwitterの生の温度感はしっかり伝わってきて、「民間の物資が届いたのか業者が通常運転にまで回復したのか、飲み物が複数本入手できる状態」なんていう何気ない言葉に遠方はとっても勇気づけられる。ありがとうさねちゃん。

もちろん僕にもできることはある。トマトを買う。デコポンを買う。銀座熊本館のいきなりの行列はムネアツで、心のいきなり団子があったまる。渋谷の募金も政治家と見極めて、想いを託したい。そんで周りの人にめちゃくちゃ熊本を売り込もうと思う。

「Prey for Kumamoto」とかシャクだ勘弁虫唾ダッシュ。フォローしているグラビアアイドルがそう言っていて、言うだけ言っていて、わりとはっきりと腹が立った。ヤになってフォローは外した。恵比寿かなんかで馬刺し食ってろ。いや食べてくださいとびきり美味しいので。

歯学部の友人は歯を磨くことの大事さを分かりやすい言葉で教えてくれたし、整体の友人は無料で出張マッサージを施している。それぞれがそれぞれでできることはあって、でもそれぞれがそれぞれで動くと混乱するから、だから情報産業って絶対必要なはず。ACのあの裏で何十人もの大人が、何億というお金が動いている。ジシュクとかフキンシンとかは置いて、見たいもの聞きたいものを届けてあげてほしい。

ここ数日の心の動きは何かに残しておこう、分かりやすく何かのきっかけになる気がしている。

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クマモトに引っ越したのは小4で。

それまではなつやすみにばあちゃんちに行く程度。当時、空港で出迎えるのはくまモンなんて革新的なキャラクターじゃなくて、国体の時のちょっとキモキモしいキャラクター、調べたらその名をヒックル、ミックル、モックル。火の国って設定もよく呑み込めないまま、「かけちゃん、このお城さんは日本三名城って言ってね」ってばあちゃんに教えられる鶴屋百貨店の屋上。

小4のカナガワからの転校ということで、左遷島流し都落ち。泣くほど嫌だった。「そうだべ」って向こうじゃ当たり前だった中居くんのカナガワ弁を使っても「え、北海道から来たんだっけ」って言われてまた泣いた。ドロケーがこっちじゃケードロだし、向こうじゃドッジボールで敵なしだったのに自分以上に上手いやつがめっちゃいた。足の速さも負けた。子ども心にクマモトは強い、と思った。

方言にも表れている。語気が強い。語力が強い。九州弁って言うと「~と?」がかわいいよねずるいよねなんて呑気な人がまぁ東京には多いんだけど、いざ「なんしよっとや」って言われるとびびるでホンマどないやねん。

そんな小学生時代のカルチャーショック異文化交流駅前留学を経て1つ、好きな方言がある。悪口を言われても、ちょっとくらいヤなことがあっても、クマモトの子どもはみなこう言う。

「だけんなんや。」

 

熊本が、大変だ。

母からのメールには停電、断水の文字が、倒れた食器棚の写メと並ぶ。メールのタイトルには「人生最大」ってあって、やっぱりこの人のコミュニケーションは少し変わってる。

あのくまモンですら何もつぶやけない熊本サプライズ

あれは前震で、今度のが本震で、なんて言わないで。

阿蘇山は噴火し、水は止まり、地震はいっこうに止まらないまじで頼むよヒックル、ミックル、モックル。

僕より強いはずの姉貴のLINEが弱ってる。精神的にしんどいと思う。

帰りたくても陸路も空路も閉ざされている。水って送れるのだろうか。

情報も、状況も、しちゃかちゃでい。

何もできない。でも、

「だけんなんや。」

 

がんばれ!熊本!超がんばれ!

頑張っている人に頑張れって言ってはいけません、って臨床心理学の講義で聞いたことあるけど、だけんなんや。9年過ごした出身の僕だからわかる。これくらいじゃ負けない。安全第一で耐えてほしい。

普段、特段、出身地を述べたり方言を使ったりはしていないのに、「実家大丈夫?」って聞いてくれる皆さんのありがたさを感じながら「熊本出身の」私として認識されていることに気付く。

パンツ脱いでから着替えの新しいパンツを探しちゃうようなちょっと抜けている野球部の友人でも、県外に出たメンバーに「実家に何かあった人は手伝うけん言ってね」ってLINEをくれる。

ゴールデンウィークは必ず帰る。昨年は達成賞与で帰ったけど、今年はそんなもんなくても帰る。肺気胸やっちゃったから飛行機は怖いんだけど、だけんなんや。帰る。

 

「だけんなんや。」

クマモトはきっと、強い。

がんばれ!熊本!超がんばれ!

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つづきをつづる、肺気胸

交通事故なんかで肋骨がぶっささるわけでなく、自然に穴が開く自然気胸、原因不明。

なぜか細身で長身の20代前後の男性に多いらしく。成長期に飛行機に乗った数が多いからって仮説、なんてこったい。テンキン族のテンテキ族。

思春期の縦の成長に肺が追いつけなかったからっていう仮説、なんてこったい。思春期の激しい運動が心肺を鍛えるって、中学野球、入部説明会の上野先生が嘘をついていたとでも。

ググるとイケメン病って、芸能人の罹患歴。いやいや、ほんとのイケメンは入院して10日もシゴトに穴、あけないんだぜって、むだに夜景の綺麗な呼吸器系の病棟。

 

することないからセックスしようは森山直太朗の歌ですが、

することないからSNS開こうでしょうかポケットからどこでもスマホ

facebookでは、身内知り合いの肺気胸のシェアが続々。

くしゃみで再発ってそれまじで、から慣れてくると、あ、空いたって言うらしい。いやお腹の赤ちゃんの、動いたのそれじゃないよ。右がなって左がなって、もういっかい右がなるなんて丁寧な幼稚園児の横断歩道もいいところ。

そもそも聞けば、肺気胸の再発率は30~50。加えて2回目なった人が3回目なる確率が80らしく。50、80、喜べない。手術をすると3~5%だって。

再発率って日本語、やさしくない。

 

管を繋がれ、寝がえり打てず。お手洗いはコロコロコロがして移動。ドレーンって言うらしい変な箱にも、決して倒してはなりませんよって肺の恩返し。

シャワーもダメで、ボディシートの発明者に深く感謝。なんでかってまだ20代。海のように青々い「恥」という感情を看護師さんに浸して。ガクセイでなく、社会人になってからでよかったと思うのは、医療従事者の医療に従事する姿を見て感動したことでしょうか。

カーテンで仕切られたプライベートに、マナーモードはなく音声ノーボーダー。

初日はもう不安と違和感と、ニュウインっていう変な高揚感。傍耳そばだてオムカイサンはガイジンサン。カップルなんだろうか、面会時間を過ぎてもときどきちゅっちゅ聞えたから、欲望に素直な人たちだ、きっと。お隣さんは聞けばひ孫が高校生。直接聞いたわけじゃないけど。屁をこいたり鼾をかいたりにぎやかな病室で思うのは、世間体って邪魔で、大切だ。

 

おタバコは吸いますかに対して、2週間前にただ一度だけ「もらい煙草」童貞を捨てたのですがそれはその吸ったに入りますか?入りますか。小児喘息にはじまり、煙草とは縁のない人生を生きている。あなたが気づけば、マナーが変わる。

僕は別に怖い話も怖くなくて、僕がいるとどんな怖い話も怖くなくなるっていう、これはこれでニーズがありそうな人間なのですが、麻酔の説明はそれこそ怖い話で。万に一つはマヒどくこんらんねむり。ポケモンセンターでも一生治らないんだって。てぃんてぃんてぃりりん(効果音)

説明係のおばちゃんは、説明するのがお仕事だから。あとはペンを渡してこちらのサインを待つのみ。結果、手術はしなかったんだけど、健康第一の意味を知る。それに、若い医師が多い病院は、症例数のノルマを奨励してるらしく、悪く言えば練習台になるらしい。再発しやすいんでくしゃみに気をつけはっ、はっくしょい!

 

古畑任三郎の好きなお話で真田広之演じる忙しすぎる殺人者が最後「いい休暇になりそうだ」っていうめちゃカッコ良い台詞があるのですが、入院2日目そんな気分。年度末だし小企業は死ぬほど忙しいの分かってて恐縮なんだけど、それでもね。

 

・「カリフラワーの酢漬け」の病院食たるや入院3日目。川上未映子『乳と卵』とよつばと!を読む。大森靖子『愛してる.com』を聞く。頻繁に放屁するじいさんが越してきた。思うに、肺気胸って手術すべきなんでしょうか。再発率っていう言葉は優しくないね。aikoじゃないけど大丈夫になりたいね。

 

・そんなことどうでもいいのに、音楽番組に母校が映るらしくテレビカードの残額を減らし続ける入院6日目。毎日レントゲンで被爆している。入院してても風邪は引く。雪だと分かっていても東京の交通網は脆弱だ。卒業と分かっていても特に何もできず、晴れ着のあの子が見れたらそれでいいのだ。刺身食いたい。

 

そんな呟きを繰り返しながら季節がら、びっくりするくらいたくさんの人にオミマイに来てもらう。オミマイしてやるぜって、嬉しい言葉なのね。

「何か感じるものがあると思って」とデコポンをくれた後輩よ。では聞くが、兵庫出身の君はタコをもらって何か感じるかい?北海道出身の同期が持ってきてくれたバターサンドを、手ぶらでやってきてかっさらってく直属の上司のジャイアンism。千疋屋はとっても美味しかったし、電話で話したあの子の声はとってもかわいかった。親戚のフットワークの軽さも痛感し、持つべきものは遠くの親戚より、近くの他人より、フットワークの軽い親戚だ。ただ従兄弟のけん君は笑かしてくるからちょっと来ないでほしかった。あはは、アイテテテ。

あとサークルの後輩は、れんこんやらドーナツやらぼこぼこに穴のあいたものをくれた。一緒に『アメリカン・スナイパー』という洋画も入っていて、聞けば「これは人に穴があく映画です」とのことで、しばらく頭を使ったボケに対応しておらず、スムーズにつっこめなかったから、穴があったら入りたい。

 

・良くも悪くも、特に立ち止まって考えてこなかった人生なので、ちゃんと書いておきたいと思うんだけど長文はムズカシイ入院7日目。明け方39.3出て院内感染やらインフルやら疑われたけど原因は分からずビロビロに広がったきんたまをぢっと見つめる。

 

・右乳首横にぶっ刺さってた管も取れて退院が見えた入院9日目。この期間、何人もの看護師さんたちに全身を見られてきたわけだがついに意を決した1人の若い女性が声をかけてきて「あの、誰かに似てるって言われません?」「あー、言われますよ」「平井ケンさんですよね」「えぇ、はい」「えへへ」「えへへ」

 

そんなこんなで10日ぶりシャバ。一点、退院って言葉は一転、やさしい。9泊10日手術なしゴハン付き風呂なしクダ付き。シャバの空気は美味かった、ほんとだ。

これからは人にやさしく。自分にもちょっとやさしく。

10日ぶりの我が家は入りきれなかった新聞がドアポストからはみ出し、普通に地べたに落ちていて、あぁまた忙しくなるなと思った。

あっちへ行ったりこっちへ行ったりすることを、僕らは春と呼ぶのです。

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土曜日、いつものようにいつもよりゆっくり目を覚ます。

昨日の同級生との飲み会も収穫はなく、15回目くらいの、えーい好きでもない人に投資するのはもうやめじゃいって思ってすぐ、15回目くらいの、そんなん言ってるからアイドルに走っちゃって、同僚から冷めた目で見られるんだぞって戒める。アイテテテ。

ベッドから体を上げておはよう違和感。

近しい感覚で筋肉痛。そっかそういや昨日お姫様抱っこでもしたんだっけ。もしくは打撲。そっかそういや触らないでってぶん殴られたんだっけ。

いやいや、指一本触れてないし、心一つも通じ合ってないさと浴びるシャワーは強がりで。どうも右の心、それも奥の方が痛いことに気づく。なんなら右腰もやや痛く、なにかこう、痛みを筋肉がサンドイッチして。飲めないのに合わせて頼んだ強いお酒のせいか、アイテテテ。

 

ええい、土曜出社。ひねると痛い。シャツも着られない。

駅までの徒歩7分で3回も立ち止まったのは、大雪の日も、桜が満開の日もなく、この町に越してきて初めて。たまった仕事を片付けながら、おんなじチームの後輩に笑う。君への指導であたしゃ胸が痛いよ。年度末もっとしっかりしておくれよ。

その晩サタデーナイトは新しい自由帳を買ってきて好きな漫画家を模写して過ごす。ふと寂しい40代がちらつき、アイテテテ。

 

日曜日、3、4時間寝て、痛い朝。もう少しだけ寝ていたい朝。

休日診療所、おじいさん先生の一言「ここじゃ分からんなぁ」でもしっかり1600円取られ、ハナから大きな病院へいくことを学ぶし、薦める。病院の最寄を聞いても、事務のおばちゃまからは電話番号を教えられるから、スマホが栄えたんだと思う。

救急外来に、徒歩で、駆け込む。

 

受付に、今日は休日だから診察費+8000円ドン!って書いてあってたじろぐ。そもそもここの病院を選んだのも定期圏内だったからで、僕の中のドケチきりまるは8000円に普通にビビる。これで最後、アイテテテ。

とは言え他に選択肢はなく、お金がかかる医師にかかる。待合室の人数のわりに待たされて川上未映子を読み終える。女心ののち、レントゲンのち、肺気胸ドン!

「肺に穴が開き、空気が漏れ出る。結果、肺が縮んで息がしづらくなったり、最悪心臓にも影響を及ぼしたり。」(えっ、えっ、なんですか?)

「君みたいな若い男性、イケメンに多いんだよ、ははは。」(え、ちょ、まだ飲み込めてないんですが、これ無事なんですか?)

「入院だね、家族はこっち?誰か荷物取りに行ける?」(終わった。)

すぐに管を入れ、空気を抜かないと、とのこと。拒否権はない。家族への電話?あー、管刺した後でもできるから!ウケる。

担当してくれた人が25歳で、部分麻酔の中聞こえてくる「私やりたいです!」「結び方これで合ってますか?」「あ、そこはそうやってやるんですね!」素直さは時に人を傷つける。ウケる。

 

メスって気づかないうちに2センチほど開くし、いつの間にか体に15センチくらいチューブをねじ込まれる。まずは肺から漏れた空気を抜くらしい。麻酔が切れると痛い。麻酔が切れると痛い。大事なので2回言いました。胸ドレっていうらしい、僕の呼吸に合わせて水位が上下に推移する、わりとアナログな箱を取りつけられる。

例えば結婚するってなったとき、誰に知らせようかってとってもワクワクするし、第一次情報の楽しいとこなんだけど、入院は何もワクワクしない。かと言って黙秘権もない。おかげさまでローニンもリューネンもなく、ネボーはあったけどケッキンはなかった僕がニューインだ。人生の一回休みが、まさかの年度末。「2週間かな」という見通しでは年度をまたぐではないか。ウケる(ウケない)。

 

あれよあれよと入院よ。

奇しくも同じ日に姉は入籍し、弟は入院し。これ一生言われるんだろうなと、田舎の口うるさい母を思う。

かくして始まった人生初の入院生活。心頭滅却しても肺には穴が開く。

お見舞いされる側から見たベストな手土産とは。病院という巨大組織と、美しくも寂しい都心の夜景と。老夫婦の会話から聞こえてきた理想の最期の迎え方とは。愛と、友情の、短いようで長い8日間+現在も更新中の入院生活。暇つぶしのつもりで書き始めたものの、どっちへ話をふろうかと、患者さんとしてあるまじき午前2時。

続く。

続ける。生き続ける。

238

お待たせしました、いらっしゃいませ、あ。

「こんばーじょん」

こんばんは。

またこの人だ。こんばーじょんってわざと言ってるのかなぁ。気づいてるよさすがに。よくこの時間に来るまぁ、いらっしゃる人で、うちは22時閉店の21時半オーダーストップなんだけど、あたしがクローズが多いからかよく会う。そしていつも、

「ホットコーヒーと、これを」

ホットコーヒーと3割引きの安くなったサンドイッチを買って帰るまぁ、帰られる人。

 

「30%オフだから、私の価値まで3割引きになってしまうかもな。」

これ毎回言う。オモシロいと思っているのか本当に分からない。毎回レジで二言くらい話すから先月から遅番に入ったみきちゃんに仲がいいと思われてる。あ、またこっち見てる、こら、見ない見ない。

ちょっと前には献血をしてきたらしくて、

「今日は400ml血液がないからね、400ml分いつもと違うでしょうな。」

って言われた。あたしはあたしで、そうかもしれないから、そうかもしれないですね、って言ったら、少し嬉しそうだった。変なの。あれで顔が中の下以下だったら返事はしないし、店長にもすぐに文句言うんだけど、まぁ栃木から出てきてサークルにも入らず少し昔の言葉で言うとやや非リア充のあたしは、少し、この変な感じを楽しんでいる。中の中だと思うけどみきちゃんは中の上って言ってて、じゃみきちゃんに話しかけてくれれば需要と供給がって思うんだけど、あ、またみきちゃんがこっち見てる。こーら、見ない見ない皆意味ない。

 

ある時には少し怒られちゃったりもした。あたし怒られるの苦手だから多少おかしいと思っても受け止めちゃうそこそこ凹んじゃう。なんか、妹の受験とか、親戚のお見舞いいかなきゃとかでシフトのことぼーっと考えてたら

「笑顔は?」

って言われた。今思えば怖い。

「駅前のスーパー」

はい?

「パートのおばちゃんだってちゃんと「笑顔で接客します」って十字架を背負っているよ。」

って言われた。今思っても怖い。でもあたしもあたしでそれもそうかもって思ったから、それ以来、笑顔で接客します。してます。そこらへんからなんか変な言い方、仲悪くなくなった気がする。別にいいも悪いもないんだけど。

 

逆に、全くお客さんがいないとき、シフトもみきちゃんとかじゃなく、あまりしゃべらないヒロさんとかで、たいそう暇なときはこっちから話してみることもあるし、聞いてみることもある。今日だと、このサンドイッチが売れてますよ。うちはスタバに憧れているマイナー店舗だから見よう見まねでカップに絵描いたりもしてる。さっと書くの難しいんだあれ。うわ、あたし何書いてんだろ、いや、誰がほしがるのよこんな女子大生の落書き。自意識って邪魔ね。こんばーじょん。

あのですねあたくしですね、前髪を切ろうと思うんですけど、どう思いますかね?あ、どうでもいいですよね。はーい。なんて口パクのつもりが声出しちゃってて空中に放り投げた言葉をキャッチしてくれて3秒。これしっかり3秒経って答えてくれて

「いいんじゃないですか。春ですしな。」って。その続きは何も言わなかったけど十分でした。自意識には、無責任が優しいね。

 

いやそのですね あたくしですね、とは言え前髪を切るの結構久しぶりで自分でも変な気オーラと言いますかどうなんでしょうね。好きですか?あ、いや、あてくしのこととかそういうのではなく、前髪切って変になる可能性もあるわけでして、そうなった際の責任を取ってもらえますか?いや、だから責任とかくっつくもらうとかではなくって。変じゃないですかねって、これは割とちゃんと伝えようとしどろもどろに投げた言葉をキャッチして今度は2秒、ちゃんと2秒。1秒分、距離が早まりまして

「変じゃないと思いますよ。おでこに3つ目の目があるわけじゃあるまいし。」って。面白いことが優しいのだ、って少しわかった気がする。そんなこんなで今オン眉。あたしナウオンセール。

 

当たり触らず、干渉をせず。

恋とか愛とかじゃなく関心がありますよって伝えあってる。動きが会ったらまた書くね!

 

「ねぇあなたちょっとなにそのキスマーク?」「お気になさらず、これ心電図。」

237

はい、じゃお願いします。

えー明転飛び出しで、はいどーもで始まりまして、、、オチ前からやります。

「いやそれ、ヤマダ電機の電子ピアノコーナーでヤマダ電機のメロディ弾くとちょっとウケるし、なんなら店員さんはちょっと照れてるやつ!もういいよ。」

で暗転で、ハケます。

 

後輩の卒業ライブを観させていただき、この話だけで2兆字書けるなと思いまして。

何年ぶりか、学館と和室とB202と。

何回だろか、照明写真のとこと、書類記入する受付のブラインドカーテンのある窓の前での練習、すなわち、諍いも。

 

片方から入って、もう片方から出ていくそんなハコがあるとして、ならば入れ替わるはずなのに。学館の匂いも、集団の文化も変わっていなくてそりゃそうだろそうなのどうだろ勝手に組織論。

実は、中MCの発明もセンターマイクを置く発明も俺らの一個上からなんだぜなんて、OBの革命武勇伝なんか知らなくていいのさ気にしないで楽しんで。「やりたいようにやりなさい」が、その革命の代の幹事長からの教えだったしさ。

 

くだらなさの中に見えるありあまる才能。

あの時デニーズで辞めたいって言ってたツッコミは、もうなんかちょっとドヤ顔まで作ってツッコんでて嬉しくなった。あんな風に相方使えると楽しいだろうなって、参った。演技のヘタウマや、パフォーマーとか女性の活かし方とか、個々の強みがさらに発揮されてて、笑った。いや、こいつの顔でこの言い方だったらそりゃもうずるいよってのも何個もあった。プロへ進む彼らが完成度を見せつけてくれてよかったし、最後の合同のあの作り方、一生忘れない気がする。挨拶できなかったけど、入部時はあまりにブスブス言う集団だから完全にドン引いてたあのスタッフさんも、のちに自らの飲み会での失態を笑えるようになったくらいだし、楽しかったことでしょう。

 

奇しくも、通された席は最前列で、あの日あのときの和室と同じ。小道具の座布団の懐かしさ。

お疲れ様です。えー、そうだな、あーむずかしいな、俺コントよく分かんないんだよね。うん、面白かったです。面白くない箇所もあったと思うんだけどどこだったけな笑っちゃったしね。いいんじゃないかな。お疲れ様です。

コメントの下手さは変わらない。あの時と変わったのは、隣がプールのおじちゃんだったことくらい。

 

7回くらい演ツーかよって思ったし、100回くらい嫌だけどコンビは同じ彼とでもいいからまた戻りてぇなって思った。

ブルーライトの舞台裏の袖の緊張感を一度味わってしまったら。

もっと言えばその昔対決ライブなんかで、先に相手の漫才がすんごいウケててとてもとてもプレッシャーで逃げたくなって、でもそういう時の方が意外と上手くいってウケて結果勝てた時あの時の、有能感というよりは安堵感にとても似てる。どうだ!ではなく、ただ良かったっていうあの感覚を一度味わってしまったら、

スーツ着た日常はまだまだどうもどうしても物足りない。やっぱキンチョーしなきゃダメなんですよね。『憂鬱でなければ、仕事じゃない』。

 

エンドトークのあの感じ、勝手にコカ・コーラのCM「こんなに楽しいのに、なんで切ないんだろう。」ってコピーを思い出してた。どんな楽しくても、終わらないコントはないのです。

今でも覚えてる、僕が一番最初に見たこの研究会の「卒業ライブ」。

ギャガ―が複数いらっしゃった代で、ギャグ合戦みたいになって、進行しなきゃいけないメガネの方が笑いながら「おんもしれぇなぁ」ってものすごく普通のこと言ってたこと。

僕はㇵッ。ツッコミって、ツッコまなきゃ正さなきゃとかじゃなくって、まずお客さん目線で共感してあげるっていうことなんだ、それがこれか!と思って勝手に尊敬してた。そもそも入部したのはこの人がきっかけだったし。のちに落語家さんになるこの人のポンコツエピソードをそのあと山ほど聞いて、あれは深読みだったことを知るんだけど。

 

同じように何のエイキョウも与えてないんだけど彼らの代の卒業は、もうライブを観に行くことはないなーと、僕自身にとっても卒業だったことを思う。いや、とっくのとうに追い放たれてるんだけど。同期の小さい彼もようやくシュウショクらしい。相方の彼はもう少しお休み。シャブだけはやめてね。

 

あー、2兆字書けるネタなんだけど、ちょっと疲れちゃったから続きはまた今度どこかなにかで機会があれば。

お酒まったく飲まない飲み会で。