はじめに申し上げますと、今回は過去記事の再録そしてその続きです。
当時、大学4年生。今よりちょっとだけ頭がトチ狂っていた頃の話。
地上波初放送の君の名は。を観て、少し長くなるけど、改めてまとめておこうと。
小学校の入学式の夜、父に「どうだ、かわいい子はいたか?笑」と聞かれ、「○○ちゃんと○○ちゃんと○○ちゃんと…」と初対面なのに10人くらいの名を挙げたらしい、そんな僕の初恋は、小3の2学期で、どベタに、転校生。
僕が東京湾の海沿いに住んでた頃、その子、Mさんは九州から越してきた。
ぶっとんで美人ってわけじゃなかったと思うけど、自分の好みの顔だった。というかMさんによって自分の好みが作られた。くしゃっと笑うっていうあれ。
あと、方言。覚えてるエピソードなんて片手分もないけど「なわとび」のイントネーションはすごく耳に残っている。
やいやいからかうと下心がばれちゃう小学生男子。僕はとにかく優しくした気がする。初めての、好きな子を笑わせる喜び、だったのかもしれない。他の男子で笑っているとシャクだったし、おかげで僕でよく笑ってくれていたと思う。多分僕、学級委員長的なポジションだったしお世話しながら「おれもばあちゃん九州なんだー」って共通点もあったかな。
もっと具体的な、体育館裏とか、下駄箱にラブレターとか出てくると盛り上がるんだけどいかんせん小3。写真すら残っているのは、学期末お楽しみ会のクラス写真1枚のみ。僕は劇の出し物のサルの格好で、Mさんはトナカイのカチューシャしてリコーダー吹いてるっていう1枚のみ。その写真を何回も見返した。
初恋の、Mさんは、ずっと小3のまま。
なんでかって僕が小4に上がる春に、九州に引っ越しちゃったからだ。
Mさんと過ごしたのはたった半年。しかも小3の、っていう微妙な半年。
引っ越すとき、クラスのみんなからお別れの手紙をもらった。先生は太ったおばちゃんで、楽しくて仲の良いクラスだった。
みんなは自分で紙と封筒用意してくれたんだけど、Mさんは先生が配った学校のTheお手紙セットに書いていて、なんだかそれが振られた気がして勝手に悲しくてあんまり内容は読まなかった。読んでも入ってこなかった。
「優しくしてくれてありがとう。九州でも頑張って」くらいだったかな。
良くも悪くも小3だったんだ。
話は飛んで、僕もそれからそれなりに生きて21歳。5月、就活で実家に帰ったときのこと。
ブログも始めていたし、過去を振り返ろうと中学ぶりくらいに小3のアルバムを開く、たった1枚の写真と、みんなからのお手紙の入った。
写真を見ながら1枚でも、残っていてよかったな、と思う。他の人は残念ながら半分以上名前を忘れているものの、Mさんの名前はフルネームでしっかり覚えている。今どんな人になっているんだろうなー。もう二度とニドトにどと、会えないけどさ。
お手紙も、読み返す。
当時こっぱずかしさと切なさから読み飛ばした、初恋の人からのお手紙を、しっかり読む。するとびっくり、手紙の右下に今まで度々読み返しても気づかなかった言葉が書いてあるではないか、まるで濡らすと文字が浮かび上がるペンみたいに。
「行かないで、寂しいよ><」
実際にあった話だが、ホラーでもなんでもない。これ、すごいちっさい文字で、しかも紙の色と同色の蛍光ペンで書かれてて、ごめんけど、見づらいよ><
何年と見逃しちゃってたらしい(勝手な解釈)あの子からの好意を、都合よく両想いだととらえる。男の恋は名前をつけて保存だなんて言う。塗り替えられるはずもない。
蛍光ペンがずっと、光ってる。
地元での就活が終わり東京に戻った。
手紙に隠された(勝手な解釈)あの子からの好意を、両想いにまで勝手に昇華させた僕は、SNSのお力を頼った。Facebookはとりあえず名前を入れてみたが、同姓同名がこうも多いとは。しかもご本人はいそうになく。
ツイッターで見つけるのはこれまた至難の業だ。本名を入れてもまず、出てこない。
最初は諦めたけど、色々なパターンを試すのが楽しくなってきてしまった。もう一度言うけど当時、大学4年生。今よりちょっとだけ頭がトチ狂っていた頃の話。
苗字、名前などいろいろ試した最後、あだ名と住んでいた海沿いの地名を入れたら、まさかまさかの、ビンゴ。幸いにもカギがかかっていなかった。どこからがストーカーなのだろうか。という不安はあったが覗いてみた。
偶然にも東京で大学生、彼氏はいるっぽかったがそんなことはどうでもいいくらい、今どうしているかが分かって、気持ち悪いのは分かるけど嬉しかった。
写真もあった。
びっくりするくらい変わってないあのくしゃっとした笑顔に、泣きそうになった。
引越しでもう二度と会えないと覚悟した初恋の子と、ネットの荒波で、13年ぶりに再会できたのだ。
いや、再会では、ないけど、まだ。
もう本当に申し訳ないのだけど、バイト先のカフェのことも書いていて。
僕の家から1時間ちょっとで、会いに行ける。今会えるカフェ店員(と書いてアイドルと読む)だ。
さて、ここで質問。このあと僕はどうすればいいのか。
今はお互い好きな人がいる。しかし、一目見たい。それもいつアカウントが消えるかいつ鍵をかけられるか分からないから、できるだけ早いところ。会うまで足げに通う覚悟も、大学4年生、時間はある。
問題は、会ってどうするか、だ。小3の頃のクラスメートと名乗る人物に偶然話しかけられて飲み込めるだろうか、いや、無理だ。しかも半年だけだし。
話しかけない方がいいのかもしれない。
カフェを去る時に「好きでした。会えて嬉しかったです。」と置手紙をしていくか。いや、キモイ。
思い切ってラインのIDでも残すか。いや、キツイ。
それか偶然を装って、あれ、Mさんじゃない?と話しかけるか。いや、キショイ。
間違ってもツイッター見ましたとは言えない。不自然なのはハナからだ。
そもそも声をかけられるのか。本当は声をおかけして覚えててくれているか聞いてみたい。 覚えていない、と思う。思い出してくれれば、と思う。僕だってエピソードはほぼない。
「なわとび」の発音にきゅんときました、なんて伝えてどうする。でも話しかけてみたいのだ。こんなアホみたいなこと今しかできないと思う。会わなきゃ、だめなやつなんだ。
一緒にすごした半年間から13年の月日が流れる。
いかにも君の名は。的にまとめているものの、言ったらただのネットストーカー。そしてここから先はブログに書いていないところ。
きっかけは2016年10月。ナイトショーで『君の名は。』を観た帰り道。映画自体は例のごとく「きれいかったなー」ぐらいしか思わなかったんだけど、なんだかこう不思議と自分に似たような経験がある気がした。まさかそんなわけあるか?いや、ある。覚えている。会いに行かなきゃ。会いに行かなきゃっていうあの切迫した胸の高まり。あの自分でも説明できない行動力。あの、あの。
もやもやを1つずつ解きながら、新宿から池袋過ぎの家まで歩いて帰った。帰りながら当時大学4年生の、続きを綴ってみた。
あのあと、実は会いに行った。
京急線のとある駅のとあるカフェチェーン。これもまた運命で、当時姉が横須賀で教員をやっていて、姉の住む最寄り駅のカフェでMさんが働いていた。
姉にメシ食おうぜとかって無駄に用事を作って帰りに1人でカフェに立ち寄る作戦。1回目はたしか無駄足に終わった。いなかった。がっかりした。無駄にコーヒーを飲んで黄昏れて、がっかりはしたけどある意味ほっとした。
それでも、2週間後ぐらいにまた行った。
そして、会えた。
会えてしまった。
とびきり綺麗になってて名札にMの名字が書いてあって、初恋の人に気付かれないまま接客された。声がすごい通る声で綺麗だったことを耳が覚えてる。
カフェオレを注文して少し待って受け取って座って飲み始める。レジ前の窓を向いた席。背中越しに聞こえるMさんの接客。
どうする?どうする?どうする?
声をかけるかどうするか。たまたまを装っているとは言えやってることはドが付くほどストーカー。時間も21時半。閉店も近い。空いたカップを下げる。意を決する。
「あの、、Mさんって、、Mさんだよね?」無駄な小芝居をする。
「小学校同じクラスだった、ホシカワです。」って言ってみる。
Mさん、完全に戸惑ってる。
そりゃそうだ小6ならまだしも3年生で引っ越したやつを誰が覚えていようか。僕ですら覚えていない。
後悔した。急に後悔がこみ上げてきた。うわー。
「あ、、って言っても覚えてないよね。ごめんまた今度!」って逃げた。すぐさま電車に乗った。会えて嬉しかったのは間違いないんだけど困らせてしまった。申し訳なさでいっぱいになった。
1時間半の帰り道が永遠に感じられた。
もう最後にしようって決めて、その日帰ってからMさんのツイッター見てみたら「ホシカワくん?干川くん?」っていうつぶやきがあって、何人かが「引っ越しちゃった背の高い子だよ!」みたいな返信をしていた。Mさんはおぼえていなかったっぽいけど、周りの人は覚えててくれる人もいたみたいだった。
それから一切見ていない。今はアカウント名も何一つ、忘れた。
そんでもってそんなことがあった上であぁもう運命ってすげぇなって事実は小説よりもなんとやらだなって思うのが、その翌年から僕らは社会人だったんだけど、Mさん教員免許取って試験に受かってなんと横須賀で教員になられた。
なんで知っているかって?
配属されたのが姉のいる学校だった。
「あれ、もしかしてうちの弟もMさんと同い年なんだよー!」
って姉すごく仲良くなったらしい弟の初恋相手と。
その弟が、バイト先見つけちゃって会いに行ったことは姉には内緒の話だし、姉も今は地元九州に戻ったので、組紐が交わうことはきっともうない。
あの日、あの駅前のカフェで。13年ぶり、小3の僕とMさんが。
瀧「あの!オレ、君の事どこかで...」
三葉「私も...」
瀧&三葉「君の名前は」
とはならなかったけど、それでも。
忘れたくない人がいて、九州と横須賀を繋いで飛び越えて、時間のいたずらの中で、また巡り合えた。
これが僕の、君の名は。