心頭滅却すれば火もまたスズシ

わるあがきはじめました。

352

シーン1 新橋のうどん屋。サラリーマン2人の会話。

「人って変わると思いますか?人って変わらないと思いますか?」

「うーんどうだろうね。なんで?」

「なんで?いや、うちの部長がよく言うじゃないですか。お前本当変わらないな、お前本当変わらないなって」

「それはお前がいつまでも同じミスしてるからだろ。毎回資料読まずにお客さんに話しちゃうからだろ?いい加減同じミスするなよってことだよ」

「それもありますけど」

「けどじゃない」

「ぐぅ。ただ、人って本当に変わらないんですかね?」

「まだ言うのかよ」

「思うんですよ、これだけ世の中の価値観が変わったじゃないですか?」

「変わったね」

「ほら!変わりましたよね?世の中の価値観を作ってるのは誰ですか?僕ら一人一人ですよね?」

「なんか、お前、きついな。うどん食えいいからうどん」

「(フーフー)いや、僕はね(フーフー)ずっと思ってたんですよ(フーフー)常識とは十八歳までに(フーフー)身につけた偏見のコレクションのことをいう(フーフー)ってアインシュタインが言ったらしいじゃないです(フーフー)」

「もう冷めてるよ!どんだけ猫舌なんだよ、冷たいのにしておけよ」

「か?」

「どこでフーフー挟んでるんだよ!なんて?」

「(ズルズル)いやね、変わっていかなくちゃなと思うんです。うどん美味いすね」

「そらそうだよ、うちが出してるお菓子だって5年前に社長変わってCM止めてからきれいに右肩下がりだろ?あれ、これ人の話?会社の話?」

「どっちもです。だって会社って誰が作ってます?人でしょ?(七味を入れる)」

「うるせぇな、分かったよ、それ貸して」

「あ、それあんま入ってないですよ。すません七味お先」

「そういうとこあるよなホント」

「で、例えば森永さんが出されてるラムネとかチョコボールキョロちゃんとか大きくなってヒットしたじゃないですか。昔からある商品でもああやって生まれ変わるんだなって。これって消費者が変わったからですよね?」

「そりゃそうだよ、あれでしょ?なんかお前みたいな若者が飲み会前にラムネ食べるらしいね。糖が二日酔いになりにくくなる!って」

「そうなんですよねー。やっぱり変わっていってる」

「外に出られない。人に会えない。マスクつけなきゃいけない。とかね」

「ですよね(箸でうどんを持ち上げる)、外に出られないから通販や出前サービスが増える。リモートワークが進んでオフィス不要論が出てくる。コミュニケーションの総量が減るからますます人を動かす言葉が重要になる。」

「分かったけど伸びるぞ」

「もう伸びてます」

「なんだお前はホント」

「人は変わらない。時代は変わる。時代が変わるのに人が変わらないなんてことあります!?」

「うーん(ズルズル)」

「これだけ世の中の価値観が変わると、新しい欲求が次々に生まれてくる。新しい生活様式なんて言葉にはうんざりしますが、ニーズを先回りして新しい商品を作ったりしないと生き残れないですよね。以上です」

「ごめん、後半あんま聞いてなかった」

「ちょ、もう~」

「昔あったのよ、ウイスキーの広告でさ『時代なんかパッと変わる』ってコピーがあってさ。令和おじさんの時もそう思ったけど、今回もなかなかそう思うよな。あとさこれはたしかパルコかどこかの広告なんだけど『ナイフで切ったように夏が終わる。』ってあって、今の季節毎年思い出しちゃうんだよね~わかる?」

「すません、前半からあまり聞いてませんでした」

「ちょ、もう~」

「へへへ」

「へへへ、よし、大将お勘定!」

「やめてくださいよ、券売機で払ったじゃないですか!」

「へへへ」

 

シーン2 その日の夕方、休憩室にて

「おいおい、聞いたぞ。お前あの後人事に話にいったんだって?」

「そうなんですよ、ちょっと居ても立っても居られなくなっちゃって」

「すごいな、はいこれ缶コーヒー、熱いかもだけど」

「あ、ジョージア。僕今クラフトボス飲んでます(見せる)」

「出た、それ流行ってるよね」

「面白いですよね、同じコーヒーでもジョージア山田孝之が働く男を応援してるのに、クラフトボスは堺雅人が緩く微笑んで働き方を変えていこうって言ってるんですからね。同じコーヒーなのに」

「これも変わってく価値観ってやつだな」

「お好きですか?」

「好き好き。好きなんだけど、俺そのグレーのやつ飲むと毎回お腹痛くなっちゃうの。毎回お腹痛くなっちゃうのに、なぜか買っちゃうんだよな。人って変わらないよな」

「それは学習能力が0なだけですよ」

「うるせぇな。で、お前人事に何しにいったの?」

「僕が話したのは2つです。1つ、会社は人の集合体である。中の人が創意工夫を働かせて面白く働くことで、面白いお菓子が生まれて世の中に出ていく。中の人、つまり社員一人一人が本当に自らの意志で働いているか?気力が充実しているか?朝起きて会社行くのだるいな~と思っていないか?そういうチェックシートを導入しましょうってのが1つ」

「お前、、、やっぱ、きついな。や、きついっていうか独特だな」

「もう1つ、うちの採用基準って毎年どう変わってきてるかを教えてもらいたくて。中の人の人柄が何かに影響してるんじゃないかって」

「へーどうだった?」

「なんか代ごとにあるらしいんですよ方針が。先輩は確か2007年入社でしたっけ?」

「そうだね、今14年目かな」

「たしかその代は『Don't think! Feel.』世代」

「あーなんか聞いたことあるな。まず動くやつを多めに採ったっていう。要は座って話聞いてられない人間の集まり」

「北陸に支社出して新潟のせんべいメーカーと統合した経営企画室の方も先輩の代ですよね」

「そうそう、昔よく合コン行ったね。行動力は新人の頃からすごかった」

「で、僕は2015年入社なんですけどこれ何の代だと思います?」

「え?なんだったっけ、社内報で毎年見るようにはしてるんだけど」

「『I have a dream』世代。」

「あー、キング牧師だ」

「てかなんなんですかね、この英語の名言で方針決める文化。せめて『Change』とかが良かったですよ同じ黒人でもオバマさんみたいな。いまさらキングて」

「おれら、燃えよドラゴンだぞ」

「それもきついっすね笑。思い出しましたよ、入社試験、やたら夢はありますか?って聞かれて」

「お前はなんて言ったの?」

アンパンマンです」

「は?」

「自分の身を削っても腹が減ってる人を助けたいなって。お菓子ってもらって嬉しくない人、基本いないじゃないですか。自分の労働力を提供して対価を得るんだとしたら、与えられる仕事がしたいですし、与えて喜んでもらえたらそれが一番だなって」

「へーいいじゃん」

「あれ知ってます?藤井風」

「かぜ?知らない」

「シンガーソングライターって言うのかな、アーティストなんですけどね最近ずっとyoutubeで聞いてて。この『帰ろう』って曲がめちゃくちゃいいんですよ。これこれ、流していいですか」

www.youtube.com

 

「(聞き終わって)いいね」

「でしょ?この藤井君が言ってるんです、幸せに死ぬためにどう生きたらいいの?って。こいつなんてのは中学くらいからずっと動画を上げ続けてるんですピアノの弾き語りの。つまり、与えるかもらうかで言ったら、与え続けてる側なんですよ」

「ふーん」

「すべて与えて帰ろう。何も持たずに帰ろう。与えられるものこそ、与えられたもの。ありがとうって胸を張ろう。ですよ」

「わかったわかった」

「昼話したじゃないですか、人って変わるか変わらないかって。変わっていく消費者のニーズに、与えられてない自分が情けなくて情けなくて」

「お前、、泣かなくてもいいだろ」

「もう、、顔が濡れて力が出ないですよ」

「うるせぇよ」

「へへへ」

「へへへ」

「お先、失礼します」

「おう、また明日」

「あ、最後に1つ教えてください」

「なに?」

「先輩の命は、今、燃えてますか?」

「、、、」

「お疲れ様です。お先です」

「、おつかれ」

(考えたことのない話。最後の「お先」は失礼しますというより、お先に進みますからね、行かせていただきますねとすら感じる。握ってる缶コーヒーがぬるくなっている。)

351

はい、じゃあ明日から夏休みに入るわけだがお待ちかね通知表を返すぞー。名前呼ばれたやつから取りに来ーい。アイザワー、アカホシー、イシハラー、ウラカミー、エビワラーサワムラーゴーリキー、ってホシカワーまでの少しの時間、夏服のあの子を目に焼き付けておく。計画性のなさから終業式に傘を3本持って帰るはめになるんだけど、隣のやつを見ると体育館のくつ袋、家庭科の裁縫袋、ぱんぱん玉袋、それこそ両手をカイリキーみたいにして持ち帰ってるやつを見て、1学年400人の中学校は社会の縮図だったことを思い出す。

いつだったか通知表ががくっと下がったことがあって、いま調べたら2002年に相対評価から絶対評価に変わった年があったらしい。クラスの上から何人がAみたいな相対評価は一応選ばれるんだけど、個々の頑張りを見る絶対評価は、やれ授業中の私語が多いだの、落ち着きがないだのでマイナス点ばかり。

そういえば中3の新学期、郡部の学校から赴任してきた年中短パンの体育教師が担任になったんだけど、最初からなめられてはいけないと思ったんだろう。見せしめとばかりに椅子に座ってる僕の襟を後ろから掴みイスから引き下ろし廊下まで引きずってかれたことがあった。教室に残された3年10組のクラスメイト達は騒然、やばいクラスとやばい担任だ!お調子者がやられた!ってアラートをかけたに違いない。その日の部活で、2組のオガタ君から「ほっしー、やられたらしいね」って話しかけられたのが噂の轟く速さを物語っている。光陰矢の如し、人のうわさも75日。「なんやらかしたとや?」ってよほどヤバいことやった感じで聞いてくれるんだけど、ただただ後ろの席のミヤガワ君に覚えたての輪ゴムの手品を披露してただけなんだよな。引きずり出されるほどのことなのだろうか謎は尽きないが、その一件からその短パン教師ナガオ先生と親しくなったのも事実。先生がカワキタさんのスカートの丈を注意したところ、うるせぇくそがと言い返された時に発した「、、だけん女子は好かんつたい」って言葉は、けっこうおもしろい気がする。先生、それを言ってはおしまいです。

 

大学職員に転職された先輩のむごいくらいのナツヤスミを見て、休みも休み休み欲しいけど、やることがあるのはありがたいと思った。2020年の1学期、僕の成績はどうでしたでしょうか?通知表をください。できれば絶対評価の。あ、いや、経済状況が良くなかったから今年だけはその、相対評価でおねしゃす。典型的に「答え」だけを求めて覚えて気にする子どもだったので、こうした「答え」がない社会にはえーい夏休みしたくなるけれど、10代とそれ以前の自分を変えていくのだ常識とは18歳までに身につけた偏見のコレクションのことだ。衝撃を受けたドラマ『女王の教室』の阿久津真矢(通称あくまや)が言ってた「教育は奇跡を起こせる」って言葉を思い出す。前置きが長くなったけど、なんせ父母姉が教員の一家で育ったのです。このあたりにアイデンティティがあるのです。ここほれアイデンティティ

 

長かった梅雨が明けて思うに、例年ほど梅雨が嫌でなかったのは明らかに外回りをしなくなったからだ。梅雨のじめじめも夏の暑さもテレワークとオンライン商談には関係ない。ここで悲しいお知らせを1つ。これだけオンライン会議を重ねて毎日耳に何か突っ込んで出したり入れたりしているのですから、もう絶対耳毛ファサファサおじいちゃんになっちゃうことが確定しています。高校野球部のニシウラ先生の耳毛を生で見たときのあのショック。耳毛をのぞく時、耳毛もまたこちらをのぞいているのだ。身長150cm台、耳毛ふぁさふぁさおじいちゃんのニシウラ先生をそれでも見た目であだ名をつけず、その指導と思考のクセから「結果論のニシウ」と呼んでいた同級生はやはり大人だったと思う。

当たり前のように学校に行って公園で遊んで家族で外食をしていた子ども達も価値観ががらりと変わる2020のニッポンの夏。「どっか行かない?」「今度飲もうよ」が使えない。GO TOは本当にめちゃくちゃだと思うんだけど、僕みたいにあちこち行くのが大好きな人種はGO TOなんぞ言われなくても配慮しながら勝手に行く。数年ぶりの龍安寺は心安らぎ永遠すら感じられる大好きな場所なんだけど、今回初めて行ってみた瑠璃光院も自然にまみれられる素敵な場所でした。

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ただ、この机反射の青々したもみじを撮りたいあまりこっち側にわんさか人の山。ベストショットを狙う自分の中のいいね欲しさが嫌になってすぐ移動しちゃった。それでいてお屋敷の中のこういうスペースはみんな素通りしちゃうのよ。誰も写真なんて撮ってなかった。

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いやいや、このスペースで何して過ごそうか考えるだけでもめちゃくちゃ楽しいじゃないですか。花札やりたくない?やり方分かんないから教えてもらうことになっちゃうけどさ。こっちだって緑が青が反射してるじゃないですか。ガイドブックの表紙の1枚絵を撮るだけならネットで良いじゃないですか。伝われ~。

ちなみにGO TOについてはHOTEL SHE,の龍崎さんのnoteがめちゃくちゃ分かりやすかった。龍崎さん、うちの仕事でご一緒することがあったんだけど発言が全部的を得ていてコメントがキレッキレ。一気にリスペクトいたしました。

「GoToキャンペーン」の虚無を言語化する|HOTEL SOMEWHERE|note

 

"あっちへ行ったりこっちへ行ったりすることを、人は「春」と呼びます。”と思っているんだけど、さてどこにも行けない「夏」はなんと呼びましょう。真夏のアイドルソングもフェスのない今年は寂しく聞こえる。虹のコンキスタドールというアイドルがいる。当然と言うかまだまだ日本では知らない人の方が多いと思うんだけど、実は海外勢にバカ受けしてyoutubeが爆再生されているのをご存知でしょうか。「Hentai anime.ヘンタイアニメ」「Youtube’s algorithm can see through my soul. Youtubeアルゴリズムは俺の魂を見ることができるようだ」「ikeh ikeh kimochi イケイケキモチ」などコメント欄が狂喜乱舞、略して狂乱。ニッポンの夏、おっぱいの夏かもしれない。いや、最低かよ。

www.youtube.com

ただまぁ水着は置いておいてもアイドルソングとして完成度が高くて、わーたしはわたしを生きてくんだ!のCメロまでほんとオタ心をくすぐるメロディを詰め込んできてくれてるのすごい。毎年夏ソングを出しているので風物詩になりつつある。

で、このままじゃおっぱい紹介おじさんなのでもう一つ虹コンの夏ソング、『夏の夜は短すぎるけど…』もおすすめしておきます。作詞はフォロソフィーのダンスなどでお馴染み、ヤマモトショウさん。「恋をするには夏の夜、短すぎるけど」ってフレーズ、使いたいなー。

www.youtube.com

 

 

梅雨も明けてようやく、冷やし中華はじめました。京都に一緒に行った友人が激レコメンドしてたので、婚活垢はじめました。#婚活垢で検索をかけてみてほしい。友人はそれで数名とやりとりしているらしい。なるほど知らなかった世界がそこにある。デートのことをアポと呼ぶ世界が。名前と写真こそ出さないものの身長体重年収出身地趣味お酒たばこ子どもが欲しいかまで赤裸々に綴っている世界が。何を呟いたらいいか分からなくて、

「買い物が楽しいのは百も承知ですが、大きめなスーパーで買い物デートがしたいんですよ。あ、そのおやつ買うのね!とかジュースは果汁100%派かー!とかカゴにアイスをこっそり忍ばせて2人食べながら帰る夏。生活が溶けて混ざる感じめちゃよくないですか!」

みたいな理想のデートとか呟いたりしているけどそれでいいのでしょうか。

負けじとマッチングアプリを久々に開いてみるけれど相変わらず変な人を引き付ける才能だけはあるらしい。

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おへそ!?2言目におへそ聞く!?

意表を突かれたが負けるな一茶これにあり。

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ユーモアにはユーモアで返すまでだ。これでどうだ。

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深さ!?!?立った時の深さ!?!?!?!?

完敗だ。何がおっぱいの夏だと、かんぱいの夏じゃないか。

 

帰省は諦めました。M-1 2020は1回戦で負けました。今日からしばしお盆休みです。夏の夕方みたいな静かな文章も好きなんだけど、しばらく会えてない人に向けて相変わらず元気でやってますよという暑中見舞いを書いてみる。クラスの外で同級生の女の子に会った時の、あの謎のときめき。普段はハイソックスなのに推し、くるぶし履いてる〜!みたいな夏も好きだ。googleトレンドなどの分析から見るに、「萌え」は衰え、「推し」が増えているらしい。思い出すのは夏季講習。かき氷。ばあちゃんが送ってくれるぶどうの炭酸ジュースとピアノが置いてある部屋の冷房。姉が弾くsummer、弟はこの有様。頭の中を全部見せて、好きなものを推しと呼ぶ。年を重ねて思う、結婚が恋愛+人生の仲間探しだとするならば、アカウントなんか作らなくてもずっと婚活をしてるじゃないですか。

というわけで採点よろしくお願いします。

どうでしょう?その通信簿は相対評価ですか?絶対評価ですか?

350

あまり共感してもらえないと思うけど、大事な人と初めて肌を重ねた日に見る夢に家族が出てくることがある。親父が出てきたり、今はもういない群馬のばあさんが出てきたり、175Rばりに何も言わずに遠くから見守ってくれる夢を、「この人を大事にしなさいよ」というメッセージなんだと勝手に受け取っている。朝、たいてい僕のほうが先に目が覚めて、このなんとも言えない幸せが愛しさってやつかよ!ってすやすや寝顔にしばし見惚れて、大事にしたいなぁって夢を思い出し、起こさないようそっと再び眠りに就く。おはよう。おやすみ。

 

群馬のばあさんはそれはそれは忍耐強い人だった。シベリア抑留も経験したじいさんに実は前妻がいたみたいな話をわりと後年に聞いて今かよって驚くことがあったんだけど、それもあってか気が強い。子を4人育て、じいさんがなくなってからは15年ぐらい、叔父の嫁にいびられたりしながらも言い返したりして、農業に編み物に力強く一人で過ごしていた。今の僕んちにもあるクッションとかセーターとかを気づいたら家族4人分作ってたりする、止めないとどこまでも働き続ける人だった。

そんな群馬のばあさんが90手前で亡くなる前、親父は毎週のように土日に駆けつけていた。熊本の家から羽田まで2時間半、羽田から群馬の山奥まで3時間半。片道6時間かけて親父はばあさんの見舞いに行っていた。時間もお金もかかる。こう言ってはなんだが治る見込みはなく、ぼけも始まり、いつその時がくるか分からないおばあさんに会いに片道6時間を毎週。話せもしないから会って何するでもなく一緒にいるために毎週。「お前も見舞いに行くか?」「おれだめだ土曜仕事だ。」「そっか。わかった。」何回かこんな会話をした。実家の群馬を二十歳そこそこで離れ単身九州に乗り込んで、九州人の母さんに出会って熊本で家庭を持って、亡くなる祖母を看取るまでの数週間、親父どんな思いだったんかなと想像する。群馬に向かう前に僕んちの近く池袋の西武百貨店に寄ってメイバランスを買ってくのがいつからか習慣になった。メイバランスってのは明治が作ってる栄養豊富な乳飲料。これなら飲んでくれるからって入院してるばあさんへの差し入れお見舞い感謝とお詫び。そんな感情があったと息子は察する。「買い物ぐらいは付き合え」って僕も百貨店のお供をよくしたんだけど、アンバランスな量のメイバランスだ!って思うほどできるだけ味をたくさん買い揃えて、少し満足して電車に乗っていく親父を見ていた。

あの時の、我慢強いばあさんの血を引く辛抱強い親父の姿を知ってるから、いつだったか外回りの東京メトロで「どんな人にも、食べられない時はある。」ってメイバランスの中吊り広告を見たとき、泣きそうになった。そうなんだよ、そうなんだよ。だからメイバランスがある。存在している。必要とされている。メイバランスを作った明治の方に御礼を言いたいし、このコピーを書いたコピーライターに御礼を言いたい。世の中の色んな人が日々をその自分の持ち場持ち場で働くことで、より良い世の中を作っている。「世界は誰かの仕事でできている。」とは缶コーヒーGEORGIAのコピーである。

 

さて現実。龍が如く例の如く仕事はそんなにうまく行ってない。経済が止まってしまうと仕事にならない部分もある。真っ先に止められてしまうのがコーコク予算だ。年齢と実力にもはやなんの関係もないアフターコロナの成果主義。エクスキューズミー、君いま何レベ?ポケモン初代のチャンピオンレベル高すぎません?

しかしながら入社して7年目、思えばこれまで好調な時の方が少なかったんじゃね?と聞いてくる自分は冷静で優しい。逆に質問ですけど大変でない時なんてありました?ひーひー言ってる自分に、なに大変ぶっとるのだね。まったくよく言うよってこれまでの自分が聞いて呆れる。「近道なんか、なかったぜ。」これはサントリーオールドっていうウイスキーのコピー。「思えば遠くへ来たもんだ。」これは武田鉄矢が作詞した海援隊の曲名。いつだって過去は簡単に見えて、今は大変に見えて、未来なんかろくに見えた試しがないからこうして振り返る。

 

仕事ってのはやはり人生の大半を占めていて考え方も自然と染まっていく。僕が見ているコーコク界もまた全体の一部だと思うから偏りはあるだろうけど、社会人1年目からコピーライターの方々と仕事をする中でその思考は根深く刺さって軸になっている。例えば、コピーライターはある種の傭兵。雇われであること。全く知らない事柄にも、対象に向き合って取材をして良いところ探しをして言葉で課題を解決すること。意見の主義主張ではなく発信者は別で存在すること。その人が言いたかったそうだよそれそれ!を形にすること。

先日、めでたく30を迎えた先輩から記念にお祝いの文章を書いてと言われ、元々言いたい大きな主張はない人間、お題があると頑張れる。思い出や周辺のエピソード、名前の由来みたいなことも調べ始め、気づけば3000字以上書いて送りつけた。喜んでくれてたらいいな。こういうのって対象を多少好きでないと書けないし、良いところ探しをする中で好きになっていく部分もあって、書いていくうちに大事な人だなぁと思ったりした。

コーコク的視点その2「何を言うか」と「どう言うか」。「この文章、何も言ってないのと同じですよ」ってよく社内で言われるダメ出しなんだけど、What to SayとHow to Sayを意識すると案外分かる。先月号の校了前、先方の社長さんが入れてきた赤字を「こうこうこういう理由でそれはおかしいです。こうしませんか?」って言えたことは誰にも気づかれないけど自分にとっての大きな一歩。はい!承知しました承りかしこまりいたします!ってのは営業の仕事でもなんでもない。そもそも仕事でカシコまるなよ。頻繁に使いがちだけどその「幸いです」はホントかよ。「お返事いただけますと幸いです」の幸せのハードルの低さ。好きな人の寝顔を眺めて何気ない日常を幸せと呼ぶことに比べて、メール1通のささやかな御礼に使っちゃう幸せのそれとこれとは。お金なんかに比べて、時間と言葉はずっと怖いですよ、どう使うかで人が変わるから。

先日読んだ新聞、令和時代の文学がまとめられている中にkemio氏のベストセラーが語られていた。氏のことはよく知らないし、本も読んだことないし、インフルエンサーとしてフワさんと氏がキャストされすぎててどのコーコク主も同じに見えちゃうよくらいに思っているのだけど、彼の鮮やかな文体の向こうに「生きる切なさや諦念」が垣間見えると言う。引用する。

「『ずっと』はない。だったら今を楽しむべきなのかな。将来も心配だけど、将来の心配ばかりしていたら、今の心配は誰がするの?って思う」

「悲しいって思っても、どうせ違う悲しいが来るから、この悲しいに使っている時間はないと思う。次の悩み事が流れてくるので、そっちに対処しなきゃいけない。人生ってその繰り返し。」

なるほど。日本人の心の奥にある無常観とも遠く響き合っている、と評されている。時代の空気感というものがたしかにあると思ってて91年生まれの僕で言うと、バブル崩壊後に生まれて10歳になる年に飛行機がビルに突っ込み20歳になる年に東日本大震災を経験して今は新型コロナウイルスである。野心と諦念。なに言ってるか分かんないだろうけど、ポジティブにネガティブをやっている。この辺を分かってくれるととても居心地が良くてえらく懐きます。

けどだからってずっとマリオの1面を解いてたいわけじゃない。「絶望するってダサい」って気持ちいいくらい言い放ってくれた『WE ARE LITTLE ZOMBIES』は超いい映画だから見てください。一度死んだ側から生きることを見て作った平井堅の曲『ノンフィクション』は超いい曲だから聞いてください。自分も含めて何かになりたい人ばかりのSNSを見るに、諦めるって悪いことじゃないよって思う。仏教用語に由来する「諦める」とは「明らかに見極める」ことらしい。現実を受け入れてから夢を見る。

宇野なずきさんという方の短歌を2つ紹介したい。

「誰ひとりきみの代わりはいないけど上位互換が出回っている」に心を抉られた後、

「いつまでもそこで苦しまなくていいきみの代わりはいくらでもいる」に救われる。

昨年採用担当をやっていて「『まるまるさんにお願いしたい』『まるまるさんでよかった』と言われるまるまるさんになりたいです!」という学生さんの将来像が結構多いことに驚いた。あくまで僕の話だけど丸6年、僕がまるまるさんだからできた仕事ってあろうか、いやない。自分への期待値を間違うと、苦しむのは自分だよ。枠をぶち壊してく爆笑問題太田さんに憧れたものの、中小企業の小さな仕組み一つ壊せずもがいている自分に気づいた時、「人ってないものに憧れる」というボスの指導が初めてストンと腑に落ちた。明らかに見極める。決して悪いことではない。

上位互換が出回っている。だからなんだ。一度諦める。諦めてから目指す。何かに憧れる暇はない。なりたい自分を定義して目指すだけ。寝て起きて寝て起きた時間を味方にできたらいい。アイデアは距離に比例する。あちこち行く人の方が幸福度が高いというデータがある。自分より何かが得意な人がいるなんて保育園から知ってたぜ。だから役割とか存在意義をたまにでも考える。数年前、公私にお世話になっていた高校大学の先輩から急にLINEで「会社帰りにふらふらお散歩してた時、心頭滅却ブログに影響されすぎて、景色見ながら頭の中でほっしー調でずっと喋ってた。」って言われたときの嬉しさをいまだに覚えている。この先輩やっぱ変人だなって覚えている。七五調、体言止めと、あと駄洒落。小学校高学年の知識とこれまた小学校6年間習ってたピアノのおかげ、音感とリズム感が少しある。総力戦で差別化だ。

 

時代と環境、節々で自分が出来上がった要因がある。そこにはやっぱり家族があって、達観して我慢強い父方ホシカワと、口八丁で面白い母方カイのそれぞれの血でできているんだなと自粛でしばらく会えない実家を思う。オンライン帰省という名のテレビ電話もしたけど93になる熊本のじいさんも2歳になる姪っ子どちらも目が全く合わないのわらう。そんでもってようこそ新メンバー、4月に生まれた姉貴の2人目、僕の2人目の姪っ子の額の狭さと鼻筋が親父に似ていてあら不思議。姉から生まれてきたのに親父に似てるってどういう物理か生物かおもしろ。いや、それあんたサークルオブライフですがな人生は続く。あえて日本語をへたくそに使うけど、自分の娘から生まれてきた自分に似ている小さな孫を誇らしそうに抱いている親父の写真を母が送り付けてきて息子である僕は目頭が熱くなる。僕が子どもの頃、親父はよく「お父さんはもうお前たちを生んだからいつ死んでもいいんだ」なんて話してて、達観しすぎて希死念慮でもあるのかなと不安に思っていたけれど、次の世代に自分の種を残すことができるってのは生き物としてけっこうな喜びなんだと思う。やれ愛だの恋だの言うとりますけども、なんとなくの節目350記事目にそんなことを考えました。

おはよう。おやすみ。

 

 

349

スマホのメモを久しぶりに開くとあっという間に3週間くらい経っていることがあって自分が自分に久しぶりなことがある。ボーっと生きてんじゃねーよとチコちゃんに叱られ、タラタラしてんじゃねーよとよっちゃんは言う。原料に鱈が使われているからと言って「タラタラしてんじゃねーよ」なんてネーミングは普通思いつかないさすがよっちゃんのスルメイカ。法人営業の血が騒ぎ、会社サイトを訪れてみると企業信条のところに「当社はマネはされてもマネはしない技術開発の王者たる事を期す。」「現状を救わないものはすべて空論である。」「怠け者の吸う空気はよっちゃんグループにはない。」「良品に国境なし。世界は我が市場なり。人を生かす金井流の経営に徹する。」とあって、いやめちゃくちゃかっこいいなよっちゃん食品工業不定期に更新しているスマホのメモ欄に思いつくままを吐き出す。前回のブログ348に書きそびれた話がある。

「作家が1番言いたいこと?そんなもん処女作に全部書いてあるだろう」というジョークがある。出版社に勤めているので本に触れる機会は多いが、1作目で出した事例を2作目以降も薄めて使われる著者も多い。爆笑問題太田さんの本を何冊も何冊も子どもの頃から読んできたけど主張の幹は変わっていないように思える。きっと僕が言いたいことも、今もこれからもそんなに変わらない。そんなに変わらないんだけど言葉の粒度なり捉え方が変わることがある。あと書いてる途中に頭の中で自由に喋りだすからあまりコントロールが効いてないことも多い。脳科学者の茂木さん曰く「おじさんが親父ギャグを言うのは、脳のコントロールが効いてないから」らしい。怖っ。連想記憶の能力は高まる一方、感情をコントロールする前頭葉は20代をピークに萎縮していく。怖っ。新入社員と友達感覚で話してしまうんだけど、彼らが今まで所属していたどのコミュニティにもいない1年生と7年生という年齢差に気づいた瞬間、こうして老害は生まれるんだなと戒める。

とは言え駄洒落の効能として覚えられやすいということがあって、喉に塗るから「のどぬーる」、熱を冷ますシートだから「熱さまシート」など小林製薬の商品名一覧はアハ体験の宝庫。こうして前に出した話やくだりに戻ってくる文体を好む僕は、連想記憶大好きっ子ちゃんなのかもしれない。「ダジャレではなくオシャレです」とは「でっかいどお。北海道」などの名作コピーを残した眞木準さんの言葉である。

 

「センスを磨く」「感覚を研ぎ澄ませる」という方法がなんとなくわかってきた気がしている。それは少年漫画みたいにうおおー!って心身をヘロヘロにすることでもなく、逆に精神統一!呼吸が乱れておるぞ未熟者みたいな呼吸法とかでもなく、アンテナを張って細かい情報も蓄積して考える回数を増やすことなんだと思う。1日5分でも10分でもそのことについて考える。よく言われるけど人間の脳はその10%くらいしか使われていないらしい。前回のブログ348で言うポイント制を貯めていく。その繰り返し。ボーッと過ごすか小さな粒を集めていくかの違い。例えば小学生にヒットするお菓子を作れ!という命題を与えられたらとりあえず今小学生の間で何が流行っていて、小学生は何が好きで何が嫌いで、日常にどんな不満があって、どういう存在のお菓子になるといいかなって考えを張り巡らせると思うのよ。さて、張り巡らせた後で街を歩くとそこにはヒントだらけ。通学路には何があるかな?公園や団地のどこが好きだったかな?想像と知識を寝かしたり起こしたりしながら考える。考え続ける。ずーっとではなく頻度を上げる。

例えば想像してみてほしい。公園の遊具は3つ。シーソーと滑り台と砂場があるとして、大人になった僕らはすぐ遊び場は3つだけと捉えてしまうけど、小学生からしたら滑り台の足はのぼり棒になるし、滑り台の下は雨に濡れない秘密の隠れ家になるし、シーソーはバランス崩さず渡り切れるか一本道になるし、砂場なんて落とし穴や砂風呂やダムにすらなる。遊びアンテナが子どもに比べて縮んでやいないかい?Hey!みんな元気かい?

けんという方が書く漫画がすごく好きなんだけど、そうした日常の小さな心の動きを表すのがめちゃくちゃうまい。拙者、amazonが使いこなせないアナログ人間であるゆえに、誤ってけんさんの漫画同じの2冊買っちゃったから欲しい人送ります。見てみてみ。

https://omocoro.jp/writer/ken

 

世界に、日常に、そば耳を立てるイメージ。思ったけど「耳をそばだてる」「聞き耳を立てる」という表現はあるが「そば耳を立てる」ってあるのかしらと不安になって、大辞林を引くと一応あるらしい。恐らく耳をそばだてるから自然発生的に生まれた言葉だろう。ついでにそばだてるって漢字で書くと「欹てる」って読めねぇ。受験生がこの文章を読む機会は限りなく0だと思うけど、センター試験で出てもこれで慌てないで済むねよかった。要するに、自分の名前って聞き漏らさないじゃないですかカクテルパーティー効果。それをいくつストックできるか。いくつ面白がれるか。面白いと自分がどれだけ思えるか。会社の経営陣と話す時、その差にいつもひるんでしまう。この記事読んだ?面白くない?のレベルを同じにしていく必要がある。

金曜ロードショートイストーリー3が最高に面白くて、SNSにはアンディの成長が世代的に自分と重なってエモいというコメントが見られたけどその「エモい」の裏にディズニーのめちゃくちゃ緻密なマーケティングがある。マーケティング=価値を創造する仕組み。実際ディズニー映画とディズニーリゾートのアトラクションができたタイミングを追っていくと、映画『ファインディング・ニモ』を見に来た2003年のカップル2人が、2005年にディズニーシーのタートルトークで遊び、結婚して子どもが生まれて今度は子どもと一緒に2016年に家族で映画『ファインディング・ドリー』を見て、翌年2017年に家族でシーに行ってニモ&フレンズ・シーライダーで遊ぶ。そうして遊んだ子どもたちが大人になったタイミングでまた次の一手があるのではなかろうか。ターゲティング広告ばりにディズニーにターゲティングされてまっせというお話。

「どんな新規事業もワークショップからは生まれない」「マーケティングフレームワークから出たヒット商品はない」と言われる。大数の法則。プロは打率の世界。作り手が本気で面白いと思わないものが売れることはないと思う。下手な英訳みたいになったけど、要は作り手が熱狂しないと始まらない。マネはされてもマネをするな。怠け者の吸う空気はない。

 

緊急事態宣言は長引き、財布からお金がまぁ出ていかない世の中。

なんてことをほざいてたら、例のごとく高校の友人が「絵本を作ろう」と言い出した。2チームに分かれて助っ人あり。期限は5末。5末!?どうやって作るかも分からないままそれでもせっかくやるのならいい本にしよう!「作家が1番言いたいこと?そんなもん処女作に全部書いてあるだろう」その通りである。さぁ子ども達にどんなメッセージを伝えようか?どういうコンセプトの絵本にしたいか?僕らの子どもに向けて、か。そりゃいいね!みたいな議論をしてたら1人ばりばりの絵本屋さんで働くやつがいて、「作り手のエゴは読者からしたら知ったこっちゃないからな」って本気のダメ出し。いやこれ仕事かよ。読者なんてほぼいないよ。よく絵を描いてる知り合いの可愛い女の子に聞いて、ひとまずお絵描きアプリをインストールしてみた。さぁ描くよ!

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いや、なんだこれ!!!

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日経新聞の日曜日版に「食の履歴書」という連載がある。最近読んだ山田ルイ53世の話から始めたい。

成績優秀、サッカー部レギュラー、児童会長も務める山田ルイ53世小学生は地元の名門中学へ進学。誰もが羨む未来明るい少年が一転、中2の夏に一変。恐らく前日に食べた牡蠣フライがあたったのか通学途中にウンチを漏らしてしまったことをきっかけに、学校へ行けなくなった。そこから6年に及ぶ引きこもり生活が始まる。食の履歴書という連載であるから思い出の飯を語るんだけど、それが父親が作ってくれたそばめしだったらしい。昼夜逆転生活の引きこもり。たまに勉強こそするが「人生が余ってしまった」という言葉の通り、ほとんど何もしない日々。だからこそめったに料理をしない厳しい

公務員の父が作ってくれた手料理に心を動かされたと言う。

それだけ聞くとほっこり日曜のステキ話で終わるんだけど、僕はむしろこの後に続く文章が好きだ。鮮烈な記憶に残るオヤジの味。これをきっかけに目標を見つけ、引きこもり脱却ーとなるほど現実は甘くない。しかもこのそばめしのレシピは父親が浮気相手から教わったと後から発覚する。愛人に習ったレシピを息子に披露するオヤジ。父の愛人発覚を利用して父母の間を取り持ちながら家の中のポジションを確保していく山田ルイ53世。そして飯とは関係なく引きこもりの終わりは突然やってくる。同年代の人たちの成人式のニュースを見て急に焦るようになり、検定試験を受けてなんとか大学に入学。その後上京しお笑いの養成所へ通ってヒット。周囲の人は「その経験があってこそ今があるのでは」と意味付けをするが、「引きこもりは完全に無駄な時間だった。後悔している」と本人は言い切る。おもしろい。

そうなんだよな。何か1つ感動的な出来事がきっかけで変わるなんてことは実はそんなになく、いつの間にかできるようになっていたり本人の気持ちとか全く関係なくパッと動き出したりその間に無駄な時間が確実にあったりするよな、と受け取る。入社4年目で初めて部下と呼ばれる存在ができたんだけど、当時は上手に指導ができずずっとモヤモヤしていた。わりとすぐチームは解散になった。7年目の今、改めて1年目と話すとここを丁寧に教えよう。ここは少し引き締めようみたいなコントロールができる(ようになっている。そんな気がする。そうだったらいいな)不思議。あの頃どうやったってできなかったし、当時かなり頭を抱えていたことが、頭を抱え続けた結果できるようになるとか言うことは呆れちゃうほどない。何か感動するきっかけがあったわけでもない。多分、時間が解決するってのは忘れさせるだけじゃなく、積み重ねてくれるという側面もけっこうでかい。漆塗りのように何度も春夏秋冬を塗り重ねて繰り返して、この季節の木々みたいに人もまた伸びていく。「人は、一生育つ。」というベネッセのコピーが好きだ。

昨年、新卒採用担当だった時、目をキラキラさせた学生さんから「どうして御社を選んだんですか?」って頻繁に聞かれたけど、ご質問ありがとうございますと共に、果たしてそれを聞いてどうするのかな?と疑問であった。今思うにおそらく、志望動機のきっかけ泥棒だったと思う。きっかけ探しのきっかけ横取り。はい、御社の採用担当の方の志望動機に共感したことが志望動機ですという構造。どうにもヒネクレ者なので「感動したい!」が透けて見える質問にはあえて「ここしか受からなかったんです。なんかごめんなさい笑」とまずガッカリさせた後、めちゃくちゃ分かりやすく自分の肌感覚のエピソードトークを1つして盛り返す、みたいなスタイルで答えていた。共感をしてくれるのは嬉しいけど、僕のきっかけは僕のものだ。多くのきっかけが後付けであるように、突然の「0→1」ってそんなにないんじゃないかなと最近思っている。日曜の新聞をそっと閉じる。

 

Official髭男dismを初めて聞いたのは幸運なことに、音楽関係のお客様からいただいた関係者限定チケット5曲やってくれるミニライブ。第一耳印象がとても良くて帰ってyoutubeで聞くとなになにどれも良いじゃんって第二耳印象まで良かったからハマった。その数か月後「pretender」でポーンと一気に跳ねたんだけど、彼らのyoutubeにいい曲が1曲だけだったらそれこそすぐグッバイになってしまったと思うのです。pretenderが当たったバンドって思われがちなんだけどそれが0→1ではなく、実は積み上げてきたこれまでの曲の0.1とか0.01とかが確実にファンの下地を築いてきたはず。偉そうで恐縮だけど、あ、これもいいじゃんこれもいいじゃんとyoutubeの次も再生してみようと思えるかどうかはこのコンテンツ戦国時代に結構重要で、確かに今までハマったアーティストもお笑いもそれがある。まじかSHISHAMOけっこういいじゃんもう1曲聞いてみようとか、マセキの赤もみじの漫才面白いなーもう1本見てみようとか。世間が気づいた時には既に追いつけないぐらい水面下で仕込み続けてきた良いネタが蓄積されている。仕事で自分ができるようになる瞬間もそれに近い。1日のすごく小さな成功体験、それは「成功」と呼べるほど何も成し遂げていないんだけど、自分を支えてくれる下地になる。何になるでもないどこへ向かうでもないブログだってそりゃ続けていこうと思う。あとこれは完全に余談なんだけど雑談でふざけて「髭男」ではなく「オフィシャル」と呼んだとき、すぐ「なんのだよ」って返してくれる地元の友人が嬉しい。Zoom飲みが新宿区と川崎市人吉市を繋ぐ。

昔、何かで読んだけど、「その人からもらった“嬉しい”の総和が一定ラインを超えると、人は人を好きになる」っての、当時は好きな女の子ができたらその子の嬉しいポイントを押さえて貯めていきたいな~くらいにしか思ってなかったけど、この「閾値」理論は自分が何かを閃く時にも何かを生み出す時にも有用な気がしている。そして0→1の最小単位が1とは限らない、いやむしろ小数点かもしれない。そんなことを考えている。

 

仕事で知り合った後輩とオンラインでさしで飲む。久しぶりに話したいですと連絡をくれて僕の嬉しいポイントが貯まる。将来は起業したいと志す彼の話に、若いね~て返しちゃう自分の中のおじさんに気づきつつも、事業を考えるのって面白い。どうやら今、オンラインスナックが熱いらしい。飲食業界はたしかに厳しいけど、話を聞いてあげられるママさんのスキルを活かしたオンラインスナックという需要が生まれているそうだ。一人1000円、ただのオンライン飲みなんだけどトークを回すママさんの安定感があるという。で、次のオンライン○○を探す。思えばマッチングアプリはちょっとしたオンライン婚活であるわけで、新しい何かが生まれる気配と予感と未来。オンライン○○を考えるのは楽しい。そんなとき「ロケットも、文房具から生まれた。」というトンボ鉛筆のコピーや、「想像力と数百円。」という新潮社のコピーから学んだ良いコピーの条件、「並ぶ言葉は意味が遠ければ遠い方が“効く”」という原則が自分のベースになっている。仕事の知識が思考回路に入り込んでてすべては繋がっているなと気づかされる。

続いてのお題「えっ!今そんなオンライン○○流行ってるの!?さて、何?」って大喜利を「オンライン肩たたき」「オンライン万引き」「オンラインだるまさんが転んだ」みたいにあーだこーだカシスソーダ。ふと思う「テレフォンセックス」って言葉は距離があってなかなかの破壊力。理論に照らすと「子ども店長」もヒットするわけだ。Zoom飲みは話しながら検索ができたり動画の共有ができたりするメリットはあるけれど、どうにも体験価値の共有はできないからここに市場のチャンスあり。こんなオンライン○○は嫌だ大喜利、皆さん考えてみてください。

その後輩がオンラインスナックに興味を持ったきっかけが、彼の兄が渋谷三丁目で焼き鳥屋をやっていて(めちゃくちゃ美味しい)、本人もそこで働いていたかららしくて人生は繋がっている。事業アイデアを考えようにも頭にないものは出てこない。僕には広告やコピーの下地が少しあって、彼には飲食やプログラミングの素養があって、0→1の間に0.1とか0.01とかもっと言うと肉眼じゃ見えない0.001があったりする。突然何の酒が回ったのか後輩が「ウェブ三丁目を作りたいんすよね~」と言い出す。何言ってるか全然分かんないけど響きだけで判断するに、聞きなれないワードの組み合わせで可能性を感じる。よさげ。「それってさ、ウェブの表記はカタカナ?もしくはアルファベット?」「どっちがいいっすかね~」「絶対アルファベットがいいよ!ちなみに3は漢数字だよね?」「3は漢数字っすね!僕の中で三丁目ってのは漢字なんですよ」「分かる~」そうなのだ。三丁目は漢数字なのだ。3丁目と書く人の気が知れない。言葉リテラシーが合わない。ウェブ三丁目とWEB三丁目とweb三丁目だとどれが良いか。WEB三丁目は字面がいかつすぎて看板みたい。Web三丁目とweb三丁目まで行くとけっこう好き嫌いだけど、個人的にはwebと三丁目の距離が大きくなるから全部小文字の方が心のひっかかりを作れそうだなって、気づけばあっという間に3時間ぐらい話す。オンラインでもお互いが感覚を共有して、対面ではなくても見えないものを言語化できると気持ちいい。自分の中にいくつか、まだ1に満たない0.001の集まりがあることに気づく。金曜のZoomをそっと退出する。

 

100年に一度、価値観がぐちゃぐちゃになる今を生きている。

人生は振り子と言うが、今回ばかりは揺り戻しは起きず、どこかまた違うところに飛んでいきそうだ。「女の子のわがままに振り回されて、遠心力でどこかへ飛んでいきたい」って高校野球部の先輩ジャックさんの名ツイートをなぜか思い出す。売り手市場から一転、一気に冷え込む就活市場とか、新しく生まれるオンライン○○とかこの数日この数か月はどこかへ行く途中、人生は地続き。生きてるだけで丸もうけみたいな豪快なメッセージングは二番煎じだし、自分がそこまで儲けてる実感もないからまだ発信に値しないんだけど、「生きてることはポイント制」くらいに思っている。外出自粛の今日この頃、あぁ君は映画ポイントが結構たまっているねとか、筋トレポイントとか自炊ポイントとか何気なく過ごす中で0.001が貯まっていく。つい「人生、無駄なことはないよ」と言いたくなっちゃうんだけど、ポイントだと考えると無駄もあるって受け入れられる。1回しか行かなかったカラオケ屋さんのポイントは還元できず何にもならなかったりもする。けどいつか、それらが閾値を超えて、生き血を得たとき、何かに変わる気がしている。

連休2日目お疲れ様です。今日は何をして何のポイントを貯めましたか。

347

【ご説明】今回は高校野球部の友人4名と僕による約1000字×5人の文章でございます。知らんがなだと思うので想像にお任せするけれど、

・リアリストパパ活タニムラ

・大津の神童シノ

ジャイアニズムキャプテン奥ちゃん

・国語教員にして神、ナカシマさん

・ブログきっかけで彼女ができたが、ブログきっかけで振られた僕

順不同、以上の5名、コロナの暇つぶし。A、B、C、D、Eさぁ当ててみよ。(配点マスク2つ)

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―アンダーマイニング効果。
内発的に動機づけられた行為に対して、報酬を与えるなどの外発的動機付けを行うことによって、モチベーション(やる気)が低減する現象。例えば、好きでプレイしていたゲームに金銭的な報酬を与えられると、やる気がなくなってしまうなど。(Wikiママ)

つまり、こういうことらしい。

 

 

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引用:ヘンテコノミクス 行動経済学まんが

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引用:ヘンテコノミクス 行動経済学まんが

(参照:こちらのサイトから立ち読みできます。

https://www1.e-hon.ne.jp/content/browse/b_9784838729722.html

何が言いたいかといいますと。
昨今、土日を丸一日家で過ごすことにより得られる満足感が、急速に減少しているということです。
今まで休日は好きで家にいたのに、何もせず何も考えず、一日中テレビとネットで貴重な土日が消費されていくことこそが、最高で至高で究極だったのに。
なんかよくわからんが、全くもって物足りない。
芸能人がSNSで家にいようと呼びかけ、政治家が命を守ろうと自粛要請を出し、ニュースで渋谷の若者が非国民のような報道をされるたびに、どんどんどんどん家にいたくなくなる。

そとでてぇ、たまらなくでてぇよぉ。。。

でも同じように感じている皆さん、安心してください。
これはもう、アンダーマイニング効果のせいであってあなたが天邪鬼な人間なわけじゃありません。(と、勝手に結論付けました)
恐ろしいことに、家にいることが偉いという風潮のせいで、今まで楽しかったおうちゴロゴロが楽しくないものにさせられているのです。

 

そして思ったことが二つ。
一つは、これもっとみんな理解して積極的に使っていくべきだということ。
人にタバコ辞めさせたいときも、「クサいし健康に悪いからやめて」ではなく、「こんなに税金納めてほんと偉い! いよっ、高額納税者! もっともっと吸って社会に還元してください!」って言えばやめる人増えると思う。
逆に子供に勉強させたいときなんか、本を縛って、秘密の部屋において、見てはいけないものを盗み見ているシチュエーションとかにすればたぶんやる気がでる気がする。(そんなシチュエーションどうやれば作れるか謎だけど)

そしてもう一つは、今年の桜は何だかいつもよりきれいだということ。
こんなご時世だからこそ、ちょっとそこまでお散歩して見かけた桜は、何だかいつもよりも美しく、儚く、荘厳に感じる。
桜を見て、なんだかいけないものを見ている感覚に陥るなんて、長い人生見渡してみても今後ないかもしれない。
人間の感情はなんとも不便。チベットに伝わる言葉曰く、「痛みの度合いは喜びの深さを知るためにある」らしい。

よし、決めた。

 

明日からオナ禁しよ。

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三伏閉門披一衲
兼無松竹蔭房廊
安禪不必須山水
滅得心中火自涼
 晩唐の詩人杜荀鶴の『夏日題悟空上人院』という漢詩。この詩の結句を引用した戦国時代の恵林寺の和尚の言葉「心頭滅却すれば火もまた涼し」がこのブログのタイトルである。
 名は体を表す。ここでもう一度なぜこのブログのタイトルを選択したのかについてブログの主に代わって徒然と説明できたらと思い、筆を執った。
 さて本題へ
本来この漢詩は酷暑の中座禅に余念のない悟空上人を詠じたものである。後ろの二句は「座禅に打ち込むには必ずしも山水の地に赴かずともよい。心を消し去ってしまえば、火もおのずと涼しいものだ。」という感じである。確かにそうかもしれん。
転句の「安禪不必須山水(座禅に打ち込むには必ずしも山水の地に赴かずともよい。)」もまた趣があって良い。ここだけ取り出しても様々なことに思いを巡らせることが可能である。

 

「ふるさとは遠きにありて思うもの」と室生犀星が言っている。
「間違いはふるさとだ。誰にでもある」と松陰寺も言っている。
「『否定しない全肯定ツッコミが時代の空気感にハマって~』だの『これからは人を傷つけない笑いだよね~』みたいなうんぬんかんぬんはさすがに寒くてふるえちゃう。」と千川に住んでいたお笑いとナンが大好きな人も言っている。

時を戻そう。
ブログの主が帰省するたびに、ことある毎にふるさと熊本のことを書くのもきっと同じような思いなのだろうと思う今日この頃。
「♪クーマモロッ、テッテッテテー、テレーテレレー♪
ナンのことかわからないと思うけど、高校の親友とだけ通ずるくだりがある。」
(2017-08-11・279)
(ちなみにこの日の記事は「ボン・お盆!」という全く「はーいはーいハイセンス」ではないボケで締めくくられた。)

ブログの主のように高校時代の友人の多くは東京で東奔西走ニシエヒガシヘ頑張っている。
まだコロナが流行し始める前、東京出張の折、高校時代の友人と会って飲むことができた。きっとそれぞれがそれぞれの職場で仕事を抱えて悩みを抱えているはずなのだが、会って話せばくだらない話、ナンの意味もない話、そして高校時代の仲間内だけ通ずるくだりのオンパレード。オクシブという東京在住にしかわからない土地にある入り口がわからないおしゃれなワインバーやめちゃくちゃせまい上になぜか食べる焼き鳥の順番が選べない謎のシステムを導入している新橋の焼き鳥屋で九州の田舎の公立高校時代の話をしているというギャップも悪くないだろう。

人間には様々な側面があり、相対する人間や帰属する社会、集団によって見え方や見せ方は違う。人は多面的でしかるべき存在なのである。
しかし、大抵の事象は「逆もまた真なり」が成り立つ。高校時代の野球部の監督が力を込めて言っていたのでまずもって間違いない。

「様々な角度から物事を見ていったら自分を見失ってた」って桜井さんも言っている。
(イノセントワールド)
ちひろさん、東京出張の折はチョコレートありがとうございました。今度お会いする際に改めてお返しをいたします。」(シノセントワールド)

そんなとき戻ってこれる場所が「ふるさと」なんだろう。熊本に帰ってこなくてもそれぞれ思いを持って東京で頑張っているんだろう。
出張の折、東京を歩きながら(誰かみたいに東京都庁から東京を一望しながらではないが)、ここで頑張っている多くの友達のことに思いを馳せながらそんなことを思った。

「座禅に打ち込むには必ずしも山水の地に赴かずともよい。」
「自分の根底を見つめ直すには必ずしもふるさとの地に赴かずともよい。」

 

閑話休題
心頭滅却すれば火もまた涼し」に話を戻し、話をまとめることとする。
このことわざが日本で人口に膾炙したのは漢詩を引用した和尚の功績によるものである。この和尚、織田信長から焼き討ちを受け、寺が火に包まれた絶体絶命の場面で「心頭滅却すれば火もまた涼し」という言葉を引用し、発したのである。その後和尚は助からなかったのであるが、ここで「いや、涼しくなってないじゃん。助かってないじゃん。」みたいなうんぬんかんぬんはさすがに寒くてふるえちゃう。
 もう助からないという場面でこの言葉を発するこの余裕。それがブログの主が言う「わるあがき」なのである。「わるあがきはじめました」のサブタイトルにはこのような意味があるのだ。
ちなみにこの和尚「快川」という名前である。おわかりいただけただろうか。「干川」と名前が似ている(ように思えなくもない)。

 多面的で熊本とお笑いとナンが好きで東京でわるあがきしている彼をみなさん今後ともよろしくお願いします。

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4月。例年より早く開花を迎えた桜は、知らず知らずのうちに満開を迎え、知らず知らずのうちに葉桜となっている。今年の桜はどのくらいの人に見てもらえたのだろうか。家の前で一人散りゆく桜を見ながら感傷的になる28歳の平成おじさん。在宅勤務3週目を迎え、不要不急の用しかない僕は外に出ることもなく一人おうち時間である。率直に言って元気がない。意外とやることはあって楽しくないわけではないのだけれど、僕は誰かと会うことで元気をもらっていたらしい。当たり前の日々を懐かしむ。

ふとある本のことを思い出した。吉田修一の『横道世之介』。学生時代バイトした西友4階のリブロでたまたま出会った思い出深い作品で、長崎から上京した横道世之介18歳の大学一年間を描いた、笑いあり涙ありの青春小説である。我が故郷熊本の大スター、高良健吾主演で映画化もされたのでご存じの方も多いだろうから詳しくは割愛させていただくが、同じく田舎から上京した僕も、この世之介という愛すべきキャラクターに励まされながら学生生活を送った一人である。こんな状態だからか、また彼に会いたくなった。調べてみると、昨年『続 横道世之介』という続編が出版されているではないか。普段滅多に使わないAmazonで早速ポチってみた。

続編の舞台となるのは前編から6年後。留年し、就活にも惨敗し、バイトとパチンコで何とか食い繋ぐとことん落ちぶれた24歳の世之介と、そんな彼と1年間を過ごした人々の人生のお話である。前編とは対照的なリアリティのある重い話ばかりで、読み始めたことを後悔したが、「人生のダメな時期、万歳!」と鷹揚に生きる世之介の姿に、あの時と同じように元気をもらえた気がする。「上手くいかない時期は、人生の変わり目というか、必ず何か動きがあって、何らかのスタートにもなる」と作者がインタビューで語っていたように、思い描いたものとは違う社会人7年目のこの4月も何らかのスタートになると信じたい。(ちなみに、前編と同じく二つの時を交互に行きかう本編だが、希望の象徴として描かれる東京オリンピック2020の延期は何とも皮肉的である)

最後に、作中である人が世之介のことを思い出しながら書いた手紙の一部を引用して終わりにしたい。

「世の中がどんなに理不尽でも、どんなに悔しい思いをしても、やっぱり善良であるであることを諦めちゃいけない。そう思うんです。」

国のトップが給食おじさんになっちゃうくらい上手くいっていない今の日本。何かを言えば必ず批判される空気に嫌気がさすけど、こんな状況で余裕を持てる人の方が珍しい。それでもだ。悪意に満ち溢れた世の中になったとしても、このブログだけは、くだらなくて思わず笑っちゃうような場所にし続けたい。それだけは絶対に諦めないと決意した4月のお話でした。

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「あのあたたかさがやみつきになるよね」とは高校の友人まえぶの言葉。「ただの性器と性器の摩擦じゃん」とは高校の友人ウンコさんの言葉。高校の友人2人が語っていたセックス観から話を始めよう。

お伝えしたいのは、まえぶもウンコさんも現役ばりばりのお医者さんであり、お詫びしたいのはウンコさんの本名はジュンコさんであることだ。麗しい女の子にウンコ呼ばわりをしたことを心苦しく思ったことは不思議な話、ただの一度もない。理系クラスが優秀でやたらと医学部の多い高校でこんなに女医さんの知り合いが多い環境もない。どうでもいいのだけど、女医さんを「にょいさん」と読むと一気に締まりがなくなる。ねぇにょいさん、こっち向いて。締まりは大事である。おっと失礼、ジェンダーに配慮するならば男医さんも多い。

ひまだ。まひしそう。『することないからセックスしよう』という曲を森山直太郎が歌ってるから聞いてみてほしい。

仲のいい女性の先輩がこないだオンライン飲み会してるとき「性欲がバグってる」って言ってて、最近聞いた中で一番の名言です、バグるっておよそゲームでしか聞いたことないもの。どうなんだろう、カセットみたいに差込口をフーフーしてあげれば正常に戻るのだろうか。そうさ僕たちゲームボーイ。おっと失礼、ジェンダーに配慮するならばゲームボーイ&ガール。

少し前、後輩とカラオケに行って「いいから気持ちよくするから」って歌うWANIMAの曲を初めて聴いて目が点、足が棒、竿と玉、なんとはしたない。いいから。そんなスタンスの男は多分、気持ちよくないから。それに比べて星野源の暗喩は意味が分かるとえろい話。「君の中に手を入れたなら 海を掬うよ」って『海を掬う』という曲の歌詞は手マンを表していたり、『Snow Men』の「胸に降り積もる光」はおっぱいに出した時のイメージなんつって本人が語っている。

星野源と宇多丸『YELLOW DANCER』のスケべな魅力を語る

 

このままじゃただの下ネタとびっこブログなので情報を1つ。避妊具ブランドDurexが2006年に調査した古いデータ、日本人は年に平均何回セックスをしているでしょうか。

答えは48回。調査対象26の国と地域のうち、26位。およそ週に一度ってのは納得度が高いな。対して世界で最もセックスの平均回数が多い国がギリシャで1年に164回。ああ、アテネ。朝早くから働き、夕方には仕事を切り上げ仮眠を取った後、涼しくなった夜にお出かけをするああアテネ。ところがその後2009年に巨額の財政赤字が発覚し、2011年の同企業の調査によるとコロンビアなどに抜かれてしまったそうだ、経済を止めるな人のセックスを笑うな

どんな政治家よりもコロナは今まさに僕らの生活を変えている。往復1時間ちょいかけて出勤してた時間があれば、もうちょっと丁寧な前戯ができるかもしれない。会話も前戯、食事も前戯。会いたいと願う瞬間からセックスは始まっているのかもしれない。LINEのやりとりで恋に落ちることもあるのだから、体の相性だけじゃなくきっと文体の相性もあると思うのです。この大変な時にお互いを気遣って会わずに「大変だね」って言い合える関係を、心のセフレと呼ぶことにしよう。
緊急事態宣言。マッチングアプリ1ヶ月分無駄になるわーと同僚が言う。この1ヶ月なりは、ご飯に行けてたカップルもいるだろうし、付き合えてた2人もいるだろう。カラオケで朝まで歌ってわいわいできたあの当たり前の日々が「濃厚接触」であったと知る。

汝、三密を避けよ。たしか精密、緻密、壇蜜だったかな。密度の濃い人生を送りたい。楽しい思い出はしばし心に密閉して、匿名で文章書いて秘密を楽しんだりしながら。

聞くところによると、この春まえぶはパパになるらしい。かつてない国難に立ち向かう、医療現場で働く友達へ。最大限の敬意とおめでとうを綴る。

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どうもこんばんは。どんな時もまずは挨拶、ヨネティーの教えが染みついてるからかLineでもおはようこんばんはをはっきり言う人が好きだ。あとおつぽんのぽんって可愛い。今の高校生は今晩zoom集合なっとかやってんのかな。メールアドレス聞くのにどきどき、明日は試合だから頑張れって送っていいかなどきどき。保護するとメールに鍵マークつくのとか知らないよな、絵文字は苦手だった~とか言うやつにはスタンプぽんっ。

4月。麗春、桜花爛漫とはいかない日々が続く。この時期にインプットしておくべきことは多いねは、はっとさせられることが多い友人の言葉。時間があれば泥のように眠れたのは部活があったからだな。ライフ・ワーク・バランス、何でも全力投球、めりはりつけよう。大人の本気って難しいと感じるのはきっと自分が鈍ってるから。あーリアル死んだってドラゴンキングヒロタ君の言も本気故かな。いやそれは多分違うな。

上を向いて歩こう
だご高い建物ばっかりたい。って見上げてばかりいたのももう2年前。去年はきょろきょろ歩く子や、満員電車であたふたする子を見て、微笑ましさと都会に慣れちった自分への寂しさを感じたことを思い出す。気づけばアラサー。中身はあらまー聞かないで。これこらこれから。ヒロインは、つづく。

この年になって改めて友人のすごさに気づく。いつの間にそんなに成長したんね、ずっと同じ時間過ごしてきたのに。こりゃーあれだな、遺伝だな。って言うと親父と母親に怒られる。自分に子どもができるイメージはまだできないけれど背が伸びたらそら遺伝ばい、成績が伸びなかったら努力が足らんとたいって言ってやろう。
タニムラ君はもう立派なお父さん。言葉にすると還暦過ぎたうちのお父さんとおんなじ。きっと僕には見えてないものが見えてるんだろうな。タニムラ君に幸せなことがあると不幸なことが訪れるタニムラ君の大親友のチンポコ君ってのは面白すぎて早くタニムラ君に次の幸せこないかなって次のミサンガにはそう願おう。

お肉券にお魚券。わが県に遊びに来てください~不要不急。意外とリモートでも出来んじゃんに、今はコミュニケーションの貯金を使ってる。
色んなことがリトマス試験紙。あーでもないこーでもない。
チャレンジはいつだって難しい。

3密を避けてお散歩する。子どもが遊んでる。友人まえだにはベイビーが誕生する。野球教えてやるからな。
4月。桜が咲いている。もうだいぶ散ったけど。季節は確実に進んでく。会えない日々が続くけど皆さんどうぞよろしく。次会うときは本気で笑おう。

346

2010年。

熊本からの上京は、埼玉は小手指から徒歩15分の1K家賃43000円築30年といった状況。今じゃ考えられないけど台風でベランダの壁が見事3枚抜き、3部屋隣まで繋がったことが懐かしい華の大学生なんてとんでもない。親のすねかじり虫~であったのでバイトを始めたのは遅かった。

今でこそ時は経ち、駅直結のどでかいマンションが立ち、景色も一変した小手指駅の北口は、僕らが学生の頃は「西友のほう」で伝わったものだ。大学1年生の12月までバイトをろくにせず、冬に帰省したら案の定こっぴどく怒られて、年明け埼玉へ戻ったその日に西友で目に留まったバイト募集。西友4階の本屋で1年半働いた。あーあそこよく行ってたよと言われることがたまにある。僕らはどこで出会ってるか分からない。人前で鼻をほじるのはやめよう手を洗ってうがいをしよう。良くも悪くも何のこだわりもない僕は、週に2日、学生の貴重な土日の17-22時をバイトにささげた。時給は760円だった。我慢に慣れすぎて変える努力をしないところが嫌だと昔好きだった人に言われたことを今ふと思い出す。時給が760円ならそれで暮らすまでだ。トンチャクもシュウチャクもあった試しがない。心頭滅却すれば火もまたスズシ。

名前忘れちゃったけど「雑誌は生もの!」とメガネのパートのおばさまに言われて雑誌抜きをよくやらされた経験がなかったら、僕は今の会社に出会ってないし、出版社で勤めるきっかけなんてそんなもんである。本は雑誌と書籍に分かれている。新聞が1日経てばゴミになるように、雑誌にも寿命がある。紙が古びれるより早く、情報が古びれる。何週か回って新しくなる。

ええい上京じゃって引っ越しを機にやめてそこから日雇いのイベントスタッフをやり、ポルノグラフィティの年越しライブの年越した後の椅子を夜通し片づけたり、夏休みはプール監視員をやったりした。さすが都内。どちらも時給は1000円だった。プール監視員と言っても未就学児限定、膝丈しかない浅瀬でちびっ子とよく戯れていた。ちびっ子ってのはエピソードが尽きないもので女の子3人くらいが遊んでると、1人が突然「リトルマーメイドごっこしよ~あたしアリエル~!」と言い出してなんというエゴ!リトルマーメイドからアリエル取ったら、ほか残ってるのお節介なザリガニとかしかいないよって不安に思い見守っていると、子どもたちの方がずっとずっとやわらかで「じゃああたしアリエルのおかあさんね~」「わたしはアリエルのともだち~!」って瀬戸内海みたいな平和で穏やかな海の中。

大学を卒業する前の半年はこう見えてメロンパン専門店をやっていた。冷凍のタネを5分経ったら砂糖にぐりぐりして、40度以上で発酵。12センチで焼き始める。ここも店長の名前忘れちゃったけど作り方を体が覚えている。昔取った杵柄、前に焼いたメロンパン。例のごとく交通費をケチって初台から下落合まで歩いて帰る秋冬春先の夜は長い。増やせない時給は支出を減らすに限る。幾度となく帰り道に東京都庁を眺めて歩いた。僕が好きなのは東京スカイツリーより東京タワーなんだけど、東京タワーより東京都庁なんだ。その理由の一つは間違いなく上るのがタダだからである。

その頃の僕のインスタ、フォロワー3人とかに向けて写真をあげてて楽しかったのだろうか。その規模で果たしてちゃんとソーシャルでネットワーキングできていたのだろうかハナハダ疑問である。

 

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当時はオリンピックが決まった頃か。まさかこんなことになるとはコロナ。

学生最後の日、僕は何の衝動か、都庁に上っていた。

 

例のごとく前置きが長くなりました。社会人6年目が今そっとひっそり終わったところです。 

 

「石の上にも3年」の倍、明日からは7年目。なにか100あったものが70くらいになった気もするし、逆に101とか105とかになった気もしている。よく「変わらないために変わり続ける」みたいな上手いこと言った風な表現が聞かれるが、おそらく100の中身が、なくなっては作られて減っては増えて、しているのだと思う。そして外見は確実に老けていく。老けていくけどフケルに老いるは悲しいから漢字を変えたい感じ。夜が更けるの更けるなら更新されていく感じがあるし、耽るを使えば夢中で浸れるわけです頭の中のキャッチャーが言う「耽ってこー!」

成果を出すことは難しい。命を燃やすことは容易くない。例のごとく導入されるテレワークの在宅勤務初日、カメラに映りそうなNegiccoのポスターを2枚はがす。3マス戻る。意外と集中できるもんだけど少しでもトイレに立つとそこは家。あ、洗濯もん回しておくかとか気が散る桜の上に積もる雪。私、魔女のキキです。こっちはお花見してたカエル。

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震災も天才も社会的な出来事は個人の価値観をおおいに変える。料理動画メディア「クラシル」堀江社長のインタビューを読むと、起業のきっかけは東日本大震災だと言う。孫さんが100億寄付されていたことが影響しているらしい。2017年、ハーバード大学の卒業式でマークザッカーバーグが話して以来「パーパス」はビジネス界の流行りワードになっていて、ビジョンミッションパーパスがない会社はつぶれていくと言われる。なんせ僕ら日本人は幼少期アンパンマンから鍛えられたパーパスの申し子であるはず「何のために生まれて何をして喜ぶ」って歌ってたくらい。モチベーションとか生産性とか青臭く言うと個人の夢も、経済が一休み、年度が一跨ぎする今、考えておこう。何が君のエンジン?ココロも満タンに

不要不急の人間になるなよ。時間を割いてもいいと思われる人間になりなよ。男女の間に流れる空気も変わるかと思いきや、会えない時間が愛育てるのさってのはもう数億年前からひろみGOが歌ってる。会いたいから、会わないでおこうと今は心の濃厚接触。電話っていいですよ。Zoomで飲み会しよう。すみませんハングアウトで繋ぎなおしてもらってもいいですかってオンでもオフでもたいてい一人くらい遅刻するやつが出てくるのが可笑しい。

「アフターコロナは個人にもパーパスが必要になる」と、全社の前で編集長が話していた。自分が生きる意味みたいなものを大げさでもなく書いておこうと思う。1週間で亡くなるかもしれない病気と人類が闘っている。「名乗りを上げる」と今年のテーマを掲げて3か月が経つけど何も名乗れていないノッていない。改めて今年の手帳にでかでかと書く。「いい話を仕入れて、いい言葉で伝える」すなわち、

いい話:新しい、面白い、役に立つ。

仕入れて:人に会う、経験する、知る学ぶ考える。

いい言葉:読後感、コピーライティング、駄洒落とユーモア

伝える:話す、表現する、心に残す、笑わせる

 

2020年。